TRUE(書き直す前)-55

 何も考えず地面に倒れ込んで夜空を眺めていた。
 うちは事件が起きて数日が経過したが、まともに眠れた日は一度もない。だからこうして夜遅くまで修行をし、激しく疲労した体を無理矢理眠気へと誘う。数時間経てば朝を迎え、重い体を起こしてアカデミーへと向かう。本当はアカデミーも休みたい。でも、家にひとりでいるよりはましだった。
 ひとりじゃない時間をただ潰すだけに通っているようなものだった。授業なんて当然身に入らず、アカデミーにいようがひとりで居ようが、結局頭を巡るのはあの時の出来事だけだった。忍組手の授業でもそれは同じで、ネジ君の強烈な一撃を食らい、おまけにあんな事まで言われてしまった。
 頭では切り替えよう、早く自分の中で折り合いをつけようとしても人間の心はそう簡単なものではない。この世界には随分と慣れたが、死が近くにない前の世界に居た時間の方が長い事もあり、人の死というものを直ぐに受け入れられない。
 この世界の人たちが直ぐに人の死を受け入れられると言いたいのではない。常に覚悟しているんだ。死と隣り合わせのこの世界で、死を覚悟しながらも、明日も皆で笑い合えることを望みながら生きている。私にはその覚悟が足りないのだろう。前の世界では、当たり前のように平和を与えられていたのだから。
 未来を変えると意気込んでいたのに、九尾事件もうちは事件も、何も変えられなかった。本当は私出来ることなんて何もないのかもしれない。私は、未来を受け入れる覚悟をするしかないのだろうか。
 急に目頭が熱くなるのを感じで目を閉じた。私に泣く資格なんて無い。うちは事件が起きると知っていながら、私は何も出来ず、イタチ君に辛い選択をさせてしまったのだから。このままいけば、サスケはイタチ君を憎み続け、ふたりは戦うことになる。サスケに本当の事を伝えればふたりは戦わずに済むのだろうか。でも、それではイタチ君の気持ちを無下にしてしまうことになる。

ーーやっぱり私には……。

ぎゅっと拳を握りしめた時、ふわりと柔らかい風が私の髪をさらった。
 風が止むと、私の隣に突然人の気配がした。でも目を開けることはしない。もしかしたら、私はずっとここで待っていたのかもしれない。
 ドサッと音がして、その人物も私と同じ様に大地に体を預けたのが分かった。少しだけ指を動かすと、その人物の小指に触れた。感じるチャクラは間違いなく彼のものだった。無意識に自分から小指を絡めており、我に返った私は慌てて離そうとするが、彼はきゅっとその指に力をいれた。
 離そうと思えばすぐに解けてしまいそうなのに、何故だかとても強く繋がれているように感じた。
 逃げても逃げても迫り来る闇。追い払っても隠れてもじわりじわりと私を見つけては襲いかかってくるその闇が、ぴたりと止まった気がした。
 閉じていた目を開き、再び星の降る空を瞳に映した。さっきまでと違うのは、目の端に美しい銀色が輝いていることだ。
 そしてやっと気付いた。私がこの場所で。昔よくカカシお兄ちゃんと一緒に修行したこの場所に居たのは、ずっと彼を待っていたのかもしれないと。彼がここに来てくれるかもしれないと。
 アカデミーに行くのはひとりが嫌だったから。誰かがそばにいて欲しかったから。でも、カカシお兄ちゃんが来て思ったのだ。「誰かに」は誰でも良かったんじゃない。私は、カカシお兄ちゃんにそばにいて欲しいと。カカシお兄ちゃんに隣にいて欲しいと思っていたのだと。
 冷たくなった心が、ゆっくりと解けていく。触れた小指から互いの脈が交わり、私の中で熱いものが込み上げてくる。
 下を向いていても仕方ない。私はこの世界で生きていくと決めたのだから。でも、やっぱりすぐに切り替えなんて出来ない。それが人の心なのだから。
 私が何もしなくても、この先に待っている未来はきっとやってくる。私はそれに立ち向かうために出来ることをやるしかないんだ。
 私はさっきよりも強く小指を絡めた。決して解けないように。

ーーあなたが隣に居てくれるのなら、もう少し頑張ろうと思えるんだ。




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▼あとがき▼
これで本当にうちは事件完!です!!だらだらとすみませんでした!
管理人的に、こういういちゃいちゃか一番好きです←
暫くカカシお兄ちゃんでてきません!ごめんなさい!!!いちゃいちゃもありません!!ごめんなさい!!!
原作スタートに向けて頑張ります!



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