TRUE(書き直す前)-53

---ネジsaid


 オレには気に入らないやつがいる。それは、伝説の三忍と呼ばれる自来也様の娘・アキラである。
 アカデミーは、オレにとって退屈な場所だった。座学の内容は、既に殆ど知っている内容だし、忍術やクナイ、手裏剣などの実技演習も簡単。これでは家で修行をつけて貰う方が、よっぽど有意義だ。しかし、アカデミーを卒業しなくては忍にはなれない。ただそれだけの理由でアカデミーに遅刻せず出席しているといっても過言ではなかった。
 何をやっても張り合いがない。特に忍組手では、オレの相手になる者など誰もいない。アキラを除いて。
 対立の印を組み、イルカ先生の合図で地面を蹴る。アキラは白い髪を揺らしてオレを拳を受けとめ、そのまま宙へと放り投げた。追撃に備え、受け身の準備をとりつつ、攻撃のタイミングを見計らう。オレに向かってくるアキラにカウンターの蹴りを食らわせ、地面へと叩きつけるが、うまく受け身をとられてしまった。
 端から見れば、接戦に見えるだろう。しかしそれは違う。オレには分かる。こいつに手加減されているということを。手加減というより、観察されているに近いだろうか。常にオレの攻撃の仕方や受け身の取り方をじろじろと見られている感覚。
 見て学び、拳を交えながら学ぶ。それは、今はもう亡き父との修行でオレがしていた事でもあった。だから、アキラがしていることは理解できる。しかし、全力を出しているオレに対し、あいつはまだ余裕があるように見える。それが酷く気に入らない。しかし、もっと気に入らない事がある。
 再びあいつの間合いに入り、連撃を食らわせる。流れるように攻撃を受けとめるあいつに苛立ちを感じながらもオレは攻撃を続けていたが、突然あいつの膝がガクンと落ち込んだ。間抜けた声を出して、そのまま尻餅をつくあいつに、オレの拳は彼女の顔へと突きつける。

「そこまで!」

イルカ先生の声が響いた。先生に促された通り、和解の印を交わし、組手は終わった。
 あぁ、気に入らない。勝ったにも関わらず、心は逆にモヤモヤとして晴れない。オレが勝ったのは実力じゃない。
 アキラとの組手の勝敗は五分五分といったところ。しかし、オレが勝つときは殆ど今のように、あいつが石を踏んで転んだり、あいつの履く高下駄が脱げてしまった時。オレが普通に勝ったとしても、あいつは本気を出していない。だから、オレがあいつに勝った事など一度もないのだ。
 それなのに、周りはオレが一番だと、天才だと呼ぶ。本来喜ぶべき言葉は逆にオレを不快にさせる。だって、本当の一番はオレではなくあいつなのだから。
 だからオレは努力を続けた。本当の天才に、一番になるために。いつかあいつに勝って見せる。まずは本気を出させてやる。そう思って。

 しかし、ある時からあいつは変わった。何をしていても脱け殻のようにぼうっとしている事が増えた。忍組手の時だってどこか上の空。オレを映していた瞳はもはやオレを見ていない。いつもなら必ず防ぐ筈の下顎の急所にオレの蹴りが決まり、あいつは派手に吹き飛んだ。地面に体を強く打ち付けたが、あいつはやはり受身すらとらなかった。苛立ちがついに頂点へと達した。
 軽い脳震盪を起こしているあいつの前に立ち、強く睨み付けた。体を震わせながら体を起こそうとするが、その目はまだ焦点が合っていない。
 どうしてこいつが、こんなになっているのか、オレには分かっている。先日のうちは一族虐殺事件のせいだろう。
 うちは一族は、日向にならび有名な血筋であり、オレもよく知っている。アキラがうちはの者と親しくしていたのも知っている。いつも隣にいた筈の人間が突然いなくなってしまう悲しみややるせない気持ち、何にも形容できない喪失感だって知っている。オレも父を亡くした時はそうだった。だからこそこいつを見ていると腹が立つ。
 未だに、父の死や日向一族の変えられぬ運命を受け入れられず、宗家に激しい憎しみを感じる事だってある。それでも、そうだとしても受け入れて立ち上がるしか方法はないのだ。

「貴様、いい加減にしろ」

少しずつ焦点の合ってきた黒い瞳でオレを映した。

「今度舐めたことをしてみろ。オレはお前を許さない」

和解の印も結ばず、もう一度きつく睨み付けオレはアキラに背を向けた。アキラと仲の良いテンテンが駆け寄り、オレを呼び止めるが無視をした。
 オレは本気のお前に勝ちたい。地面に這いつくばり、お前が燻っている間にオレは先に行く。
 中途半端な優しさはいらない。それはオレが一番よく知っているのだから。ーー


───────────
▼あとがき▼
主人公と同期組の絡みです!ネジ君このころはツンツンだと思うんですよね……。
あと2章くらいは主人公落ち込みパートですすみません。




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