TRUE(書き直す前)-41

「テンゾーししょー」
『テンゾウ師匠!』
「ねー」
『ねー』
「『ねー』」
「……あぁ!!もう何ですか!」
「『お腹減った!』」


僕に弟子ができた。木遁使いのアキラという女の子。
正直僕よりこの子の方が強い。血は繋がっていないが、流石自来也様の娘だ、と思ってしまう。彼女に教えることなどほぼないが、何度も頼まれたから一応アキラの師匠…をやっている。


先輩は、アキラと一緒にいる時は、いつもと少し違う。でもこっちが本当の先輩なのだと思う。なんというか、とても自然なのだ。

逆は知らないが、先輩がいる所には必ずといって良いほどアキラがいる。今日も火影様の伝言を伝えに先輩を探していたら修行でか、組手をする二人がいた。それに巻き込まれた結果がアレだ。

それにしてもこの二人は本当に仲が良い。兄妹とも言えず、年が離れている恋人とも言えない不思議な仲。考えたけどなににも例えられなかった。

僕や他の人の前では滅多にないが、アキラは先輩の前では良く眠る。きっと先輩を信頼しているからだろう。
己の膝の上で安らかな寝息を立てる彼女の頭を撫でる先輩の手つきはとても優しく、温かい眼差しで彼女を見つめている。

突然頭の中にひとつの疑問が浮かび上がった。ただの好奇心で、僕は何も考えず、先輩に尋ねた。


「先輩はアキラのことをどう思ってるんですか?」


深い意味はなく、そのままの意味だ。ただ気になった。いくらかの沈黙のあと、先輩は静かに言った。


「……"どう"…か。
今まで考えたことがなかったな。」


想像以上に真面目な答えが返ってきて反応に困った。適当に躱されるとも思っていたから。正直、先輩がこんなに素直だと逆に気味が悪い。そして意外な回答に僕はまたなにも言えなくなった。


「ずっと俺の隣に居て欲しいと思ってるよ」


先輩はアキラの黒髪を遊ぶように撫でた。


「でも…」


アキラに向けていた顔をこちらに向けた。
穏やかな表情は消え、苦しそうに、そして悲しそうな笑みで僕に言った。

ーーー俺はアキラの1番にはなれないんだ


こんな顔をした理由を僕が知ることになるのはもっともっと後の事。ーーー








ーーーそれは暗闇から始まった。


紫に近い光とほぼ同時に聞こえたのは、思わず耳を塞ぎたくなる程、空気を裂く大きな雷鳴。その光で、一瞬だけ見えたモノは私を石のように固まらせた。

白く長い髪の殆どは赤く染まり、うつ伏せになる背には無数の黒い棒。その根本からは赤いもので濡れている。
見覚えのある橙色と藤色の髪。黒い空に赤い雲を浮かべた着物。

また光る。


ーーー暗闇の中に輪廻の目が浮いていた。





『いやぁぁあああ!!!』


目を開ければ、窓からは柔らかな温かい光が差し込み、小鳥の囀りが聞こえてきた。さっき見たのもが夢だと理解するのにそう時間はかからなかった。額には髪が張り付き、酷く魘されていたのが分かった。

ぞくりと背筋に悪寒が走った。

ーーーパパは今どうしているのだろう。

途端に大きな不安に捕らわれて、私は着替えもせず、靴も履かず火影棟へと向かった。おじいちゃんに頼んでパパに連絡を送ってと頼んだ。焦る私を見て、おじいちゃんは何も言わず私の頼みを聞いてくれた。

その後は、着替えと靴を借りて自分の家に帰った。おじいちゃんは家まで私を送ってくれた。

パパからの返事は直ぐに返ってきて安心した。何事もなく旅をしているそうだ。
しかし、そう簡単に不安は消え去ってくれなかった。

私は眠るのが怖くなった。また同じ夢を見そうで。

でもカカシお兄ちゃんの前では眠れた。頭を撫でられただけで心が落ち着いて、私を眠りに誘いいれる。
カカシお兄ちゃんの手は、他の誰よりも温かくて心地好い。だからついつい眠ってしまうのだ。


それでも、カカシお兄ちゃんと一緒にいても不安に感じるときがある。
カカシお兄ちゃんの温かさにもっと触れたいと思うときがある。

でも言えない。
嫌な顔をされたら?笑われたら?困らせたら?気持ち悪がって私から離れていってしまったら?
怖いのだ。

ーーー私が抱きしめてと言ったらあなたはなんと言いますか?


『ねぇカカシお兄ちゃん』
「んー?」
『おやすみなさい』


臆病な私は何度目かの言葉を飲んだ。


「ん。おやすみ」


そして私はさりげなくカカシお兄ちゃん服の裾を掴んでから、目を閉じるのだ。


ーーー起きてもあなたが居てくれるように


時々『パパ…』と、涙を流しながら寝言を言っているなど、私は知らずに。





 │
 │

戻る】【TOP
拍手】【更新希望アンケート


×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -