TRUE(書き直す前)-35

「お主には上忍をつける」


それを聞いたのはパパが旅に出た次の日のことだ。おじいちゃんが言った。どうせ心配性のパパの事だ。私が一人で生活出来るか不安でおじいちゃんに頼んだのだろう。必要ないと伝えたが、断られてしまった。



「私は夕日紅よ。よろしくね」


一番最初に私に着いてくれたのは紅さんだった。あぁ…お美しい……。
軽く自己紹介を済ませた私達は、他の上忍にも挨拶に行くため、上忍待機場へ行った後町へと出た。


「あら、ガイじゃない」


すっかり打ち解けた紅さんと会話を弾ませながら歩いていると、数日前に見たばかりの彼がいた。


「丁度いいわ、カカシはいない?」
「あぁ、そこにいるぞ。おいカカシ!!」


その名前を聞いて、少しだけ脈が速くなるのを感じた。


「なんだガイ。それに紅と…君はこの前の」


胸の奥にピリッとした短い痛みが走った。やっぱり私は"この前の子"なんだ。やっぱり私のこと…


「紹介するわね。こっちの暑苦しいのがガイで、間抜け面なのがカカシよ」
「暑苦しいとはなんだ!!」
「間抜け面って…」
「だって事実じゃない。この子は自来也様の娘さんのアキラちゃんよ」


紅さんに向いていた二人の視線が私に向いた。あ、挨拶しなきゃ!!


『よろしくお願いします…!!ガイさんにカカシお兄ちゃん!』
「やめろ!!」


鋭い声を発したのはカカシお兄ちゃんだった。それに対して紅さんとガイさんが驚いた顔をしていた事に、怒鳴られた私は気付きもしなかった。
しかし次にはヘラりとした声が飛んだ。


「いやぁ、もうお兄ちゃんって呼ばれる年でもないからさ〜(笑)」


カカシ…さんは、その後に用事があると言って会話の輪から抜けていった。
遠ざかって行くその背中が、昔のカカシお兄ちゃんのものとダブって見えた。


「私たちも行きましょうか」
『は、はい…!!』
「呼び止めて悪かったわね」


じゃあねと紅さんはガイさんに言った。
しかし返事は返ってこず、私と同じようにカカシさんの背かなを見つめていた。


「……ガイ?」
「あ、…あぁ。」


ガイさんは「またな」と言いながらぽんぽんと、不自然な動きで私の頭を撫でた。その理由を私はこの先ずっと知ることはなかった。




あれから数日が経過して、生活も大部落ち着いて、少しずつ独り暮らしにも慣れてきた。もう上忍の方々に面倒を見て貰わなくても大丈夫だ、と思う。
でも、家に一人というのはとても寂しいもので、その面に関しては随分支えて頂いている。

今まで色々な人が来てくれたけど、まだガイさんとカカシさんは来ていない。正直な所、カカシさんと二人っきりというのに自分が耐えられる自信がない。
それはカカシさん達に挨拶に行った時の事が原因だ。本当はカカシさんと言う予定だったのに、癖でカカシお兄ちゃんと呼んでしまった。言い直そうと思ったが、そんな間もなくカカシさんはやめろと言った。嫌がる呼び方をしてしまった私が悪い。だから次会う時に必ず謝ろうと決めた。

でもなんだか気が重くて…。

自分はこんなにも臆病なのかと呆れてしまったが、私はカカシさんに自分の事を本当に覚えていないのかと問う勇気が出なかった。「覚えていない」と、本人の口から直接聞くのが怖いのだ。だから私は、“カカシお兄ちゃん”ではなく、“カカシさん”と接する事にした。

知ってる人には必ず挨拶をする。皆笑顔で挨拶を返してくれる。でもカカシさんはいつもぎこちなく笑う。カカシお兄ちゃんの笑顔より不自然だ。

今のカカシさんは暗部ではなく、上忍に戻っている。あなたは暗い場所から抜け出せた。

なのに……
どうしてそうな笑い方をするの…?



生活が落ち着いたということで、私はアカデミーに通うことになった。おじいちゃんに言われたけど、私はアカデミーに通う必要はないレベルらしい。でもパパがアカデミーを飛び級無しで卒業してからじゃないと忍にさせないと言ったらしく、6年くらいはアカデミーに通うということになる。

ということで、私はアカデミー生になった。ナルトと同じ代だといいなと思っていたけれど、今年の一年生はネジ、リー、テンテンで、ナルトたちより一年早かった。でも知っているキャラが同じ学年にいて良かったと、ほっと胸を撫で下ろした。

イタチ君と同い年の私は、一応皆よりも年上。でも皆しっかりしていて、テンテンに関しては転入してきた私を気遣ってくれたり、面倒を見てくれる。
ちなみに年上ということは誰にも言っていない。言って年上扱いされるのも嫌だし…。(されないとかもしれないけど!)

今日はテンちゃんと遊んでから修行をしたから、陽は殆ど沈んでいて夜になりかけていた。夜ご飯は何にしようと考えながら帰路を辿っていたとき、綺麗な黒髪が風に揺れた。

私の足は自然とその髪の持ち主へと向いていた。





『だーれだ!』
「!?」


気配を消して近付き、私はその人の目を自身の手で覆った。それにしても凄く身長が伸びた。前は私と同じ位だったのにな。流石男の子、というべきだろうか。そういえば、小さい時もよくこうやって彼に悪戯をしていた。懐かしい思い出から、私のふふっという笑い声が漏れた。
その後彼はいつも同じ様に私の名前を呼ぶのだ。

しかし、返ってくる筈の声はいつまでも帰ってこず、彼はピクリとも動かず、私ははっとした。カカシさんは私を覚えていなかった。だから、あの時カカシさんよりも幼かった彼はもっと記憶に残っていないだろう。
これは完全にやらかしてしまった。こんなのただの変人だ。この事態をどう収拾しようかと頭をフル回転させた。『覚えてるわけないよね』と声が漏れていたことに私は気付かなかった。


「アキラ…、ちゃん…?」


今度は私の体が驚きで動かなくなってしまった。彼は私の手をどけて、こちらを向いた。


『イタチ君…私の事覚えてるの…?』


自分でも動揺しているのが分かった。震えた私の声のすぐ後、私の目の前には彼の胸があった。


「忘れるわけないだろ…」


鼻の奥がツンとして、私はぎゅっと目を瞑った。嬉しくて、イタチ君が私にするように、私もイタチ君の体に腕を巻き付けた。
良かった…。私を覚えていてくれた。

私は気付かれない様に頬から一筋の涙を落した。





「じゃあ行こうか」
『うん!!』


私はイタチ君に夕飯をうちで食べないかと誘われた。父さんも母さんもきっと喜ぶと言われ、ご一緒させて頂くことにした。

あ、でも家に誰か来てるかもしれない。ちゃんと言わないと…。私は訳を話し、一度家に戻ることにした。優しいイタチ君は、断ったけど、家まで一緒に来てくれた。

遅くなるという報告を済ませ、私達はうちは一族の集落へと向かったが、その場所は前あった場所ではなくなっていた。
でも変だ。九尾が壊したものは全て元通りになっている。だから、うちは一族の集落も壊れていない筈。なんでたろう…。
気になったけどイタチ君に聞くことはできないままイタチ君宅に着いた。

フガクさんもミコトさんも、私が来たことに凄く驚いていて、ミコトさんは涙を流しながら私を迎えてくれた。サスケともたぶん仲良く、なれた?と思う。

帰りはイタチ君が家まで送ってくれた。夜だからか、イタチ君は私の手を握ってくれた。それから、いつでも来いと言ってくれた。

そんなイタチ君に私は色んな思いを込めて「ありがとう」と、言葉を返した。







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