長かった第三次忍会大戦は終結し、里は徐々に平和を取り戻していった。
それから暫くして四代目火影の就任式が行われた。もちろん原作通り四代目火影はミナトさん。
就任式は本当に行きたかったけど、まさかの当日に四十度近い高熱を出して出席することができなかった。でも熱がおさまった後、ちゃんとミナトさんにおめでとうを言いに行った。
それから変わったことといえばクシナさんだ。
いつの間にかクシナさんのお腹は大きくなっていた。
もうすぐナルトが生まれてくるのかと思うとワクワクするけれど、それと同時に悲劇が起こると思うとボーッとしていられない。
それと戦争が終わったというのにパパは相変わらず任務でほとんど里にいない。
なんでも戦争中、長門お兄ちゃんたちの面倒を見ると言って3年も任務につかなかったのだ。その分を埋め合わせるかのように沢山の任務を引き受けていた。
パパが居ないときはこれも相変わらずクシナさんの所へ預けられている。けれど時々おじいちゃんのところに行ったり、忙しくてほとんど家に帰ってこれないミナトさんがいる火影室へクシナさんと一緒にいったり。
お昼時に行くとたまに3人でご飯を食べたりする。
私が居て良いのかと思うときもあるけど…。
修行はクシナさんに見てもらったり、おじいちゃんに見てもらったり、本当にごくたまにミナトさんに見てもらったり。
前はずっと私にクシナさんがついていたけれど、もうひとりでも大丈夫だろうということでひとりで出掛けることを許された。
でも特に友達がいる訳じゃないからやることと言ったら修行。
クシナさんとミナトさんをどうやって助けるのか考えたり、新術を開発したり。
でも基本的にはクシナさんといることが多い、かなー。
今日は朝起き、朝食を食べているとクシナさんは病院に行くと言ったのでご一緒することにした。
だってなんか心配だったんだもん!!
病院の帰り、クシナさんと手を繋ぎながらお昼ご飯は何にしようかと二人で話していると、聞きなれない声が後ろから聞こえた。
「クシナー!」
振り返れば、私たちと同じように手を繋いで歩く親子と姿が。私はそれをみてピシリと固まってしまった。
しかしクシナさんはそれに気付くことなく、己の名を呼んだ人物の方へと歩んだ。
「ミコトじゃない!久しぶりね」
うわぁぁあ!!ミコトさんっ!!クシナさんに負けず劣らず美人です。白い肌とか本当に羨ましい!私も黒髪だけど艶が全然違う…綺麗だ…。
でもそれよりも…
「ほらイタチ、あいさつなさい」
やっぱりイタチさんだぁぁあ!!
ふわぁぁあ!ヤバイ!!可愛い!!どうしよう可愛い!!
漫画ではあまり描かれていなかった彼の幼き姿。まだ子供らしいぷにぷにした頬や、丸みの輪郭。クールでシュっとした瞳は逆にくりくりとしていた。
「クシナさんこんにちは…」
「こんにちはイタチくん」
イタチさんは少し恥ずかしそうに頬を染め、唇に力を込めながら言った。
ヤバい…これは…本当に可愛すぎる!!
心の声が、本当の声となって出ないように耐えようと、気づけばクシナさんの手をぎゅっと力を込めて握っていた。
「(アキラちゃん少し緊張してるのかしら?)」
すると漆黒の瞳がさっきの表情のまま私の顔をその黒に映した。
「君は……?」
わーわーわー!!
その顔で私のこと見ないでー!!
私はさらに強くクシナさんの手を握りしめた。
「(アキラちゃん…)」
緊張していると勘違いしたクシナはアキラの代わりにイタチのその問いに答えた。
「アキラっていうのよ」
いつまでもじっとして、口すら動かす気配を見せない私の代わりにクシナさんが言ってくれた。
心の中はきゃーきゃーしてて、今口を開けばそれが言葉になって出てしまいそうだったから助かった…。
「クシナその子は…」
ん、ん…?これは勘違いされている…?
「この子は自来也先生の娘さんよ」
ミコトさんは少しだけ目を大きくして、それから安心した顔をした。
うん、やっぱ親子だと思われてたよね。でもイタチさんと年は同じだから仕方ないのかもしれないけど…。
すると不意に目の前の小さな影が一歩、私の方へと動いた。
「ボク、イタチって言うんだ」
イタチはミコトさんと繋いでいた手を離し、わたしのすぐ目の間に立った。
うわぁぁあ!!待ってまだ心の準備が…!
取り合えず距離を置こうと後ずさるが、逆にクシナさんに背中を押され逆にその距離は縮まってしまった。
「よろしくね!アキラちゃん!」
恥ずかしそうに後ろで手を組み、少し子首をかしげてイタチは柔らかく笑った。
言っていることは年相応のものなのに、その表情には少し大人びた雰囲気が混ざったその表情は、私に様々な思考をさせ始めた。
この大人びた表情は彼がもとから持つものなのか。
もうすでに戦争というものを知ってしまったからなか。
無邪気に笑う彼のこの笑顔には終わりがあることを知っているから、彼がすべてを隠し、自分を犠牲にして生きる選択することを知っているから、普通ならドキドキと高鳴るはずの心臓は逆にズキリと痛んだ。
「アキラちゃん…?」
いつまでも反応しない私の名前をクシナさんが呼んだ。
この人もまた、ナルトを守るために。
そしてクシナさんよりも大きくなったお腹をしてイタチの横に立つ彼女も。
それからもうすぐ生まれてくるであろうミコトさんのお腹にいる子も。
それぞれに笑顔の終わりがある。
私が知る未来は暗いものばかりだ。
ならば……
『よろしくねイタチくん!』
ならば私がその笑顔を守ろう。
自分にできるだけの笑顔をつくって言った。
ーーー全てを守ろう
そう思ったとき、カカシお兄ちゃんの銀色の髪が一瞬だけ脳裏に映った。
(折角だしお昼ご飯一緒に食べない?)
(そうね。イタチもいいわよね?)
(うん!)
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