TRUE(書き直す前)-14



それから数日、私は再不斬お兄ちゃんと雨隠れの里を目指した。


一応自分の今の状況を話した。里を勝手に脱け出してきたから、連れ戻そうとして数人の忍に追われていると。

だって、もし再不斬お兄ちゃんと一緒にいるのが見つかったら、木ノ葉の忍は間違いなく再不斬お兄ちゃんを攻撃するし、再不斬お兄ちゃんも反撃して戦闘になる。それに私は連れ戻されちゃうし。


私がそれを伝えると、すごく嫌そうな顔をしたけど、頑張って説得してなんとか了承してくれた。

ちょっとでも癇に障る事を言ったら切り殺されるから、言葉を選ぶのに神経を使ってとても疲れた。



初めは怖いだけの再不斬お兄ちゃんだったけど、一緒にいるうちに少しずつ変わっていった。


食べるために魚を採ろうと川に入ったけど全然採れなくて困ってたら代わりにとってくれた。

私のペースに合わせて走ってくれた。

崖を跳び越えるとき怖くて跳べない私を抱き抱えて代わりに飛んでくれた。

忍から私を守ってくれた。



本当は優しい人なんだと思った。

でもたまに睨まれたりして怖いけど。





そしてついに雨隠れに着いた。








傘を持っていない私たちは絶え間なく降り続ける雨のせいでびしょびょになっている。


会話はないため、ノイズのような雨音とぴちゃぴちゃという足音だけが聞こえ、濡れた長い髪が顔や首にへばりついて気持ち悪い。



雨が降ったってことは雨隠れについたってこと。

つまりはもうお別れ・・・・ってことだよ、ね・・・・・・。


パパに早く会わなきゃいけないけれど、いざ離れるとなるともう少し一緒にいたいと思ってしまう。

もう少しちゃんとお喋りしたかったな、とか。



実は私たちはお互いの名前を知らない(私は知っているけど)。

ザブザお兄ちゃんが私を呼ぶときは、お前とかガキとか。
私がザブザお兄ちゃんを呼ぶときは、お兄ちゃんと呼んでいる。


自己紹介のタイミングを完全に見失い、今に至っている。

こんなのもきっと、私がザブザお兄ちゃんに会った瞬間、倒れたからに違いない。


正直名前を聞いておきたい。

もしもまた会ったとき、“ザブザお兄ちゃーん!”とか呼んでしまうかもしれない。

そんなことしたら、名前教えてねぇのになんで知ってんだって怪しまれて戦闘になるなんてこともあり得る。


どうしよう。いつ聞こうなぁーと考えていると突然前を歩くザブザお兄ちゃんの足が止まった。


どうしたんだろう?


じっと見つめていると、ザブザお兄ちゃんは半分だけ体をこっちに向けた。




「こっからは一人で行け」

『・・・・・・!』




そろそろかなって思ってたけど・・・。

寂しさと、これからひとりになるという不安で無意識のうちに俯いていた。


するとまた雨以外の音が私の耳に届いた。





「おいガキ。

 名前は」





驚きで物凄い勢いで顔をあげた。

私のことなんて興味ないと思ってたから、そんなこと聞かれるだなんて予想もしていなかった。




『アキラ・・・!##NAME1##アキラです・・・!』




これは名前を聞くチャンスだと思った私は慌てて聞き返した。





「・・・・・・・・再不斬」




瞬きをすると目の前にいたはずのザブザお兄ちゃんは私の斜め前にいて、頭にはザブザお兄ちゃんの手が乗っていた。




「・・・・・・じゃあなアキラ」




すると短い風が吹き、ザブザお兄ちゃんの姿は消えた。



頭にはまだ少しだけ手をのせられた感覚が残っている。




彼は今までたくさんの人を殺めてきた。

なんどその手を赤く染めたのだろう。




でも冷たいと思っていた手は、温かくてとても優しかった。





雨で完全に頭の熱が消えたとき私は歩き出した。



(パパに会えるまであと少し。)





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