TRUE(書き直す前)-04

私はずっと前からやりたいことがある。
でもタイミングが掴めなくていまだ出来ずにいる。




今日自来也様は、少し危険な場所へ行くらしく(ホントかどうかは微妙で、取り合えずお酒のにおいがしたら違う。)、私を宿へおいて行ってしまった。


室内で出来る修行ももちろんあるけど、モノを壊したら嫌だし、自来也様もいなくてナイスタイミングというわけだ。



この前買って貰った小さな鞄を漁り、小さな茶色い瓶を取り出した。


自来也様の顔にある、あの赤い線は生まれつきらしい。つまりこれから、いくら年を取っても私は絶対にあぁなることはないということだ。

だから、代わりにこのインク?で線を書いてみようと決めた。

これが私のやりたいこと。


ちゃんと顔に塗っても大丈夫なのを確認してから買ってもらった。


ちなみに何に使うかは教えていない。聞かれたけど秘密と言って教えなかった。

ちょっと驚かせてみたいというイタズラ心だ。



きゅぽんと蓋を開けると独特な香りが漂った。

くさ!なんかくさいっ!!

きっとこの液体は相当濃いもので、凝縮されてるからこんなにおいなんだな!きっと!



あれ、なんか蓋にかいてある。目を凝らすとやっと見えたその文字に顔がひきつった。

何でこんなに大事なこと目立つように書かないの!?




『色がついたら絶対に落ちないなんて・・・・』




そこには絶望的な文字が書いてあった。
あり得ない。これ作った会社どうにかしてるよ・・・。

でも、消えないのも別にいいのかもしれない。



というのにも、理由があるわけです。



前よりも距離が近づいた私たちは、町を歩けば親子扱いされた。まぁ家族なのだけど。

でもそのあとには“似てないのねぇ”と口を揃えてそう言われる。

血が繋がってないから似てないことは当たり前だけど、寂しいと、心に何かが刺さるんだ。


私と自来也様の容姿を照らし合わせてみると、ちがうところばかりだ。

髪の色は黒と白。私の肌は白いけど、自来也様の肌は少し焼けている。目の色も違う。


髪も瞳も変えることは不可能だから、せめて肌だけでもと思ったけど、どういうわけか日に焼けることは無い。

考えたあげく自来也様といえば!というあの赤い線を入れることを決意したのだ。


でも消えないとなると書くことに抵抗を覚える。
だって・・・



失敗したら終わりじゃん!!!



でも買ってしまったし。
蓋開けちゃったし。



やるしか、ないよねっ・・・!




ごくっと唾を飲んでしまった。
あぁー!緊張する!

付属で着いてきた筆は、極細と、それよりちょっと太い細筆と、中筆がある。

極細はシャーペンの芯くらい細い。

まずはこれで形整えて、そのあとに細筆で塗って、中筆は怖いから使わないっ!!


よし、これでいこう!





心をしっかりと落ち着けてから、筆をとった。



.





「アキラー!帰った、ぞ?」

『じ、じじじらいやさま!??』

「なにやっとるんじゃアキラ!!!」




うそ!私の予定ではこんなに早く帰ってくるはずじゃ無かったのに!


鏡の前に座る私を見るなり自来也様は血相を変えた。
手に持っていた荷物を放り投げ、私の肩をがっと掴んだ。




「き、綺麗な顔に・・・」




綺麗な顔になんて凄いお世辞を言ったけど、信じられないくらいオロオロしている自来也様が面白くて、してやったり!と、心の中でしめしめと笑っている。




「またなんでこんなことを・・・」




まだ左しか描いていない赤いラインを自来也様は親指でなぞった。
その赤は、速乾性だったから線が伸びることも、自来也様の指につくこともなかった。




『おそろいっ!じらいやさまとおそろいにしにしてみたの!』

「!?」



えへへと照れながら言ってみた。
そうすれば今まで悲しげに下げていた眉は、驚いたようにつり上がった。
でもそれは長くは続かず、ニタァと歯を見せて笑った自来也様がいた。




「にしてものぅ、アキラ。
へったくそじゃのォー!!!」

『な"!?』




酷い!何時間かかったとおもってるんだ!
たしかに線はがったがただけど!
聞き捨てならんっ!
声をあげ、バカにしたように笑う自来也様を思いきり睨み付けたやった。

でも全く効果はなく、ニタニタした表情は、変わらなかった。




「筆はどこじゃ!直してやる!」

『へっ?』

「なんじゃ?アキラはその顔で町を歩くのか?」




予想もしなかった言葉に間抜けな声が出た。
直して、くれるの・・・?
任せるのは少し不安があったけど、自信満々な表情を浮かべる自来也様を信じることにした。
溢さないようにしつつ、インクと筆を差し出した。




『これ、おちないから!その・・・』

「なーに、そんなこと買ったときから知るっとったわい!」

『!?(嘘でしょ!?)』

「何に使うか聞いても答えんしのォ!
それがこれのためだったとはなァ!」

『うっ・・・』




また大きく口を開けて豪快に笑う自来也様になにも言い返すことができなかった。
なんだか恥ずかしくなってきて下を向いたが、両頬を大きな手で包まれた。




「目ぇ瞑って少しの間じっとしとれ」




なんか言い方エロぃい!とか思ったのは私だけでしょうか。←
目をつぶると顎をくいっと軽く上に持ち上げられ、えぇ!?と動揺してパッと反射的に目を開いたら“何を勘違いとるんじゃ”と怒られた。

ですよね!なんもないですよね!

目を閉じてしばらくすると、ヒヤッと冷たいものが頬の上を滑った。
くすぐったいのが我慢できなくて自分の服を力一杯握った。

バレない薄目を開けて様子を伺うと、いつもあまり見せない真剣な顔をしたおとーちゃんがいた。

うん、イケメン。格好いい。




「どうだっ!」




自来也様は得意気にふふんと鼻をならした。
出来が気になって、真横にある鏡台に自分の顔を映した。


スゴい・・・。あんなにガタガタだったのに。


鏡にはあの酷く歪んだ線の面影を残さず、真っ直ぐな線が描かれていた。




「これでお揃いじゃなっ!」

『・・・・・・うんっ!』




片方しか描かれていないけれど、嬉しかった。


これてちょっとは似てるって思われるかな・・・?




(ふふっ、これでお揃い♪)





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