海賊による沿岸地域の略奪行為。
グランドラインだけに限らず、他の四つの海でもこんな事が各地で相次いでいるという。

クロコダイルとなまえが到着した時には、その町は既に他所から来た海賊によって荒らされてしまっていた。
遅かった、と悔やむなまえの前に影がさす。
略奪を終えた海賊達だ。
雄叫びをあげて襲いかかってきた海賊達を、クロコダイルは文字通り一瞬の内に叩き伏せた。

「おお…クロコダイル様…!」

「サー・クロコダイルこそ我らの英雄だ!!」

わっと歓声を上げる人々の中から、小柄な人影が進み出てきた。

「お前…お前も海賊だろ!なんでこんな事するんだ!!」

震えながらもクロコダイルに食ってかかったのは一人の小さな男の子だった。

「海賊が略奪して何が悪い」

「か…海賊っていうのは、船に乗って世界中を冒険して回るんだって、じいちゃんが…」

「そりゃァ、ただの冒険野郎だろ」

クロコダイルは呆れたように少年を見下ろした。

「と、とにかく、お前なんかがいなくても、この町は俺達が…!」

「お前に何が出来る?親も守れねェ。町も守れねェ。出来る事と言えば、一人前にデカい口をたたいてピーピー泣きわめくくらいのもんだろう」

「……ッ!」

「お前は無力だ」

「!!!!」

少年は涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながらも、声をあげなかった。
グッと唇を噛んで泣き声を堪えている。

「悔しいか?」

クロコダイルは獲物を嬲るような笑みを浮かべて、容赦なく続けた。

「理想を掲げる“だけ”なら誰にでも出来る。問題はソレを実現出来る力があるかどうかだ。強い者だけが望みを叶える事が出来る──そういう海なのさ、ここはな。悔しければ、海賊にも海軍にも負けないくらいの力をつけてみせろ」

「強くなるさ!お前みたいなヤツになんか負けないくらい強くなってやる!!」

「クハハハハ!面白ェガキだぜ」

他の者達の目にどう映ったかは分からない。
だが、なまえにはクロコダイルが少年を激励したように見えた。

『レインディナーズ』に戻ってきたなまえは、まだあの子供の事を考えていた。

「どうした、ぼんやりして。考え事か」

新しい葉巻を手に寛ぐ姿勢に入ったクロコダイルが尋ねてくる。

「社長って、実は意外と子煩悩なお父さんになりそうですよね」

「…あァ?」

「なんとなくそう思ったんです」

腰に回された腕に抱き寄せられるままにクロコダイルの膝の上に乗りあげてなまえは笑った。

「そりゃァ、ガキが出来るようなコトをして欲しいという催促か」

「んん…ッ」

かぶりつくような獰猛な口付けを受け入れながら、それもいいかなと思うなまえだった。
きっと父親によく似て、強く逞しいワニみたいな子になるだろう。


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