「ワニは同じ相手と交尾するんだそうですよ」

「まァ、理にかなった行動ではあるな」

なまえの腿に手を這わせ、そこから尻にかけての柔肌を撫でながら、クロコダイルが気怠げな声で答える。
少し掠れた声が色っぽい。
全身が浸かる程の水位ではないので、身体の自由が利かなくなるという事はないものの、やはり倦怠感を感じているようだ。

悪魔の実の能力者は“海”に嫌われる。
この場合の“海”とは、川やプールなどを含む、水が溜まった場所全てを指す。
全身が浸かる量の水に入ると、悪魔の実の能力者は身体が思うように動かせなくなるのだ。
水量が減り、水に浸かる部位が少なくなる程、その症状は軽くなる。

ただし、流水はこれに当てはまらず、全く影響がない。
その為、能力者はシャワーや半身浴で入浴を済ませるのが一般的であるらしい。

雨期の時のみ解放されるというアルバーナの王宮の大浴場には敵わないものの、個人の邸宅の浴室としては非常に豪華なものである事は間違いないこの浴室の中で、クロコダイルはぬるい湯に浸かりながら右手でなまえの右胸を下から掬いあげるように持ち、たぷたぷ揺らして弄んでいる。

「目的は繁殖だ。わざわざ他のヤツを選んで試してみるよりも、一度繁殖に成功した相手を選ぶほうがより確実に子孫を残せる。なんとも合理的な生き物じゃねェか」

「…本にもそう書いてありました」

予想通りの回答だ。
なまえはガッカリして肩を落とした。

「もっとこう、愛情があるからとか、そういう理由だったらいいのに」

「オイオイ…肉食水棲爬虫類に何を求めてんだ、お前は」

「別になんにも」

「何を怒ってる」

「怒ってません」

「怒ってるじゃねェか」

ガブリ、と噛まれる。
噛む、といっても甘咬みだ。
柔らかな皮膚を食い破る程の強さはない。
ケモノが愛情表現の一つとしてじゃれあいながら噛みつく、愛咬というやつである。

温かく乾いた手の平が身体中をまさぐりながら、なまえを舐め、咬んで愛撫する。

なまえの頭の中には、図鑑で学んだ鰐に関する知識が浮かんでいた。

鰐の求愛と交尾は夜間行われる。
夕方オスが甘い低音でメスを誘い、メスが誘いに応じたら、水中で甘咬みしあったりマウントしあったりしてじゃれ合うのだ。

「やっぱり鰐なんですね」

「あァ?」

なまえは両手でクロコダイルの頬を挟み込み、情熱的なキスを仕掛けた。
この極上のオスと交尾出来る特権を味わう為に。



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