それが二年前の出逢い。

「ペットは飼い主に似ると言うけれど……」

バッシャン!バッシャン!と盛大な水しぶきをあげて餌に襲いかかるバナナワニの群れを眺めていたなまえの背後で、ロビンがぽつりと呟く。

肉を与えるためのトングを片手に振り返ると、椅子に座ってテーブルに頬杖をつき、長い脚を優美に組んだ美女の視線は、バナナワニではなくなまえに注がれていた。

「貴女はサーにちっとも似ていないわね」

「えっ」

ペットと言うから、てっきりバナナワニの事だと思っていたのに。
いきなりの発言に面食らうなまえに瞳を細めて、ロビンはフフと唇を笑ませた。

「とても可愛いわ」

「ええっ!?」

「サーの気持ちがよくわかる私も、彼と同類なのかしら」

「お前にそっちの趣味があったとはな、ニコ・ロビン」

広間の大階段を降りてきたクロコダイルがからかう声音で言う。
ロビンは冗談だと示すように肩を竦めてみせた。

「その名は呼ばない約束では?」

その言葉は無視して、クロコダイルは真っ直ぐなまえのもとへ歩いていく。

この男は、王下七武海という身分を逆に利用して、表向きには政府や海軍に協力的な海賊を装いながら、その裏で己の野望を叶えるための悪事を着々と進行させている最中だった。
普段はここ、アラバスタ王国のオアシスの街レインベースの湖のど真ん中に建築されたカジノ『レインディナーズ』の地下アジトに居座ったまま部下を操って計画を進めているが、時折自ら出掛けていくこともある。
今日もそうして外出してきたところだ。

「お帰りなさ──きゃっ」

近づいてきたクロコダイルにひょいと持ち上げられたかと思うと、なまえの身体は長いダイニングテーブルの上に乗せられてしまっていた。

「上に行って来い、ニコ・ロビン」

金属製のフックがなまえの喉元に当てがわれ、そのまま彼女の身体の中心をなぞるようにして下へ下へと降りていく。
少しでも動けば皮膚に刺さってしまうかもしれない、となまえは息を詰めた。

「銀鉱山の関係者が来ている。大事な客だ、マネージャーとして手厚くもてなしてやれ」

拘束することなくなまえの身動きを封じてしまったクロコダイルに指示され、ロビンは両手の手の平を上に向けて「わかりました」と素直に従った。

先ほどクロコダイルが降りてきた階段をのぼりながら、足を止めないままふと振り返る。
クロコダイルは、ダイニングテーブルの上に乗せたなまえにキスをしながら彼女の両足を開かせ、両膝で彼の身体を挟む態勢にさせたところだった。
大きく広がる分厚いコートの横から覗く白い脚が淫靡で美しい。

「なまえ」

離れた場所から聞いているロビンでさえ腰にキそうな、甘い低音。
呼ばれた少女はひとたまりもないだろう。

「ぁ……ん…」

押し潰すように圧し掛かってくる男を両腕を広げて迎え入れ、その広い背中に縋り付いて厚い胸板に頬を摺り寄せるなまえの姿を見たロビンは密やかに微笑んだ。

どうやら彼女はペットなどではなく、獰猛なワニの餌だったらしい。


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