師走に入り、今年も残すところ1ヶ月となった。 街中もすっかり年末ムードだ。 諸事情により聖羅が赤屍蔵人のマンションに身を寄せるようになって、約一年。 もうすぐ彼と過ごす二度目のクリスマスがやってくる。 そして冬休み。 しかし、その前に、学生である聖羅には期末試験という敵将が立ちはだかっていた。 「勉強会、ですか」 「はい、友達の家で一緒にやろうって誘われてて。7時ぐらいには戻ってきます」 鞄に教科書とノートを詰め込みながら赤屍に説明する。 試験勉強なので、やる事はテスト範囲の復習がメインだ。 本来ならば一人で勉強するほうが集中出来るのだろうが、友人は驚異的なヤマカンの的中力の持ち主なのである。 出る場所が絞れれば、勉強時間も短縮出来るというわけだ。 お互いに脱線しすぎず勉強に集中出来る性質だから、ちゃんと勉強会になると思う。 たぶん。 「その時間では外はもう暗いでしょう。迎えに行きますから帰りは連絡して下さい」 「大丈夫ですよ。そんなに遠くないし、ちゃんと明るい場所を通って帰りますから」 「ダメです。物騒な世の中ですからね、帰り道で何が起こるかわかりませんよ」 物騒な仕事を生業にしている男は、真剣な表情で聖羅を諭した。 「刃物で人を切り裂くのが趣味だという通り魔が出るかもしれない」 「そ…そうですね」 結局、帰りは連絡して迎えに来て貰うという事で赤屍も納得してくれたようだ。 大概過保護な保護者である。 鞄を肩にかけ、玄関まで見送りに来た赤屍と「行ってきます」「「行ってらっしゃい」と挨拶を交わす。 「これでお土産用のお菓子を買っていきなさい」とお小遣いを渡してくれる様子はまるでお母さんだ。 「今度はお友達をこちらに呼んでも構いませんよ」 「だ、だめっ! それはダメです!」 不思議そうに首を傾げる赤屍に、聖羅は慌ててうまい言い訳を探した。 「それは…ほら、ここは赤屍さんの家で、私は居候だしっ、」 「居候だなどと。貴女は私の大切な可愛い愛しい人ですよ」 「え、あ、う……いってきますっ!」 耳まで真っ赤になった聖羅は、思わず外に飛び出してしまった。 バタンとドアが閉まる音の合間に、赤屍がクスクス笑う声を聞いた気がする。 恥ずかしすぎて死ねそうだ。 赤屍はあんな事をさらりと言えてしまうような、余裕がある大人の男の人で、それに比べて自分はまだまだ子供なんだと思うと悲しくなってくる。 |