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11月23日 勤労感謝の日

明日は今年一番の冷え込みになると予想されているだけあって、底冷えのする夜だった。

「ご苦労様でした。約束の報酬です」

白い手袋に包まれた男の手から、細い女の手へ。
手渡された分厚い札束に視線を落とし、目で金額を確認した若い女運び屋はため息をついた。

「もう済んだ事だからいいけど……てっきり話がついているものだと思ってたわ」

苦々しい口調で告げる卑弥呼に、赤屍はいつもの本心が伺い知れない薄笑いを返した。
二人の正面、卑弥呼のサイドカーの脇には、フランス人形が入っているような透明なケースが置かれている。
ただし、普通の物とは違い相当な大きさがあったが。
中からケースをバンバン叩いて無駄な抵抗をする依頼品を、赤屍は愉しげに見つめている。

「仕事は仕事です。そうでしょう?」

「…まあね」

とにかく、運び屋としての依頼は完了したのだ。
この先は彼女が口出しすることではない。
卑弥呼は同情の眼差しをケースの中身に向けると、さっとバイクに跨がり、夜の闇の中へと去って行った。
赤屍がケースに歩み寄り、プレゼント包装用に巻かれたリボンを解く。

「悪い子だ」

ケースが開いた途端飛び出して逃亡を図ろうとした聖羅を、彼は易々と捕獲した。

「この私から逃げられるとでも思ったのですか?」

胸の中に抱き込んだ聖羅は、とても温かく、冷えた彼の身体と心に愛おしいぬくもりを伝えてくる。

「誘拐は犯罪ですっ」

「人聞きの悪い事を仰る。ただ今日は私の誕生日でしたので、ほんの少し強引に私の家にお連れして一緒に暮らして頂こうと思っただけですよ」

「監禁も犯罪ですっ」

真っ赤になって怒ってはいるものの、これは案外うまくいきそうだと赤屍は含み笑った。
とろとろに蕩けるほどに甘やかして、逃げることなど考えられなくなるくらい愛してしまえばいい。

「愛しています、聖羅さん」

手始めに赤屍は甘く甘く囁いて、聖羅の赤い顔に微笑を浮かべた唇を寄せた。

「世界に二つとない、最高のプレゼントですよ、貴女は」



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