天高く馬肥ゆる秋。 旬の食べ物が豊富で、ついつい食べ過ぎてしまうことも多い季節である。 ただでさえそんな状況なのに、その上、ハロウィンなどというイベントがあるのが悪い。 「あー…やっぱり食べ過ぎちゃったかな…」 微妙に苦しいお腹をさすって、自宅玄関の鍵を開ける。 昨日から泊まりがけで参加していたハロウィンパーティーで、散々ご馳走を食べまくったせいか、一夜明けた今もまだ満腹感が残っていた。 一人暮らしという事もあり、普段は節約も兼ねて少食気味な分、この機会に思いきり詰め込んでしまったのだった。 聖羅はガチャリと開いたドアから中に入り、電気のスイッチに手を伸ばした。 まずはお風呂。 それから── 「お帰りなさい」 「ひっ!?」 明かりに照らされて赤屍が直ぐ目の前に立っていた。 「赤屍さん!?なんでここに…!?」 「一日遅れですが、ハロウィンのお誘いに伺いました」 「ハロウィン…」 「ええ。"犯し"と"悪戯"、どちらがよろしいですか?」 「…なんか変なニュアンスの単語に聞こえた気がするんですけど」 「気のせいでしょう。それで、"犯し"と"悪戯"、どちらがよろしいですか?」 赤屍は笑顔で繰り返した。 大して明るくない蛍光灯の下、帽子の落とす陰の中で、二つの瞳が物騒な感じに輝いている。 「ええと…両方辞退という選択肢は…」 「ありません」 ついでに逃げ場もなかった。 |