見た目やイメージからネガティブな先入観を持ち、食べる前に苦手意識を持ってしまうことを、『食わず嫌い』という。 見たり、名前を聞いたりしただけでも鳥肌が立つ、という症例もあるらしい。 理解が及ばないものを忌避する気持ちは分からなくもない。恐らくは、防衛本能の一種なのだろう。 「貴女は、私を恐れて、ずっと避け続けていたようですが──」 聖羅を自分の上に座らせ、両腕の間に閉じこめながら赤屍が覗きこんでくる。 「どうですか、やはりまだ怖いですか?」 俯いて呼吸を整えていた聖羅は、おそるおそる男の顔を見上げて赤くなった。 自分を見つめる美貌。 肌は透き通るように白く、長い睫と涼しげな細い眉が、切れ長の瞳を飾っている。 この紅い唇が自分のそれに触れたのだ。 ──そして、それ以外の場所にも。 答えがないことに焦れたのか、赤屍が軽く腰を揺すった。 「はぁっ…ん…くぅん、んっ……!」 幾度となく精を吐き出したというのにまだ硬度を保ったままのモノが、敏感な内壁をこそぐように動き、聖羅はぷるるっと身震いした。 まだ激しい絶頂の余韻に浸りきっている下肢は、先ほどからずっと小さく震えている。 とろり、と液体が伝う感触が生々しい。 「や…動か、ない…で…」 「では教えて下さい。貴女の気持ちが知りたい」 容赦なく告げられた言葉に絶句する。 運び屋、赤屍蔵人。 彼は恐ろしい男だった。 直接危害を加えられた事はなくても、噂や、その振る舞い、身に纏う雰囲気だけで、十分恐怖を感じてしまうほどに。 「…怖い……です…」 勇気を振り絞って告げる。 しかし、赤屍は、くっくっと喉を鳴らして楽しげに笑った。 「食わず嫌い、とはこういう事を言うのでしょうねぇ」 そうして、底の知れない笑みを浮かべて聖羅を見つめる。 彼に力なく縋りつきながら、無意識の内に腰を揺らめかせている聖羅を。 「恐れることはありません。食べてみれば、案外病み付きになるかもしれませんよ」 甘い声で囁くと、赤屍は繋がったまま聖羅をベッドに組み敷いた。 確かにクセになるかもしれない。 だからこそ恐ろしいのだ。 吐き出した溜め息が、甘く空気を震わせた。 |