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体育の授業の後は大抵そうだが、女子が着替える教室には、制汗スプレーの匂いが充満していた。

自分の使っているものの匂いには鈍感になっていても、それぞれが違う種類のスプレーを使うせいで様々な匂いが入り混じったソレには、流石に気分が悪くなることもある。
女である自分がそうなのだから、男子が露骨に嫌な顔をするのも当然だろうと思った。

いい匂いの女の子達。

そうなる過程の残骸とも言うべき残り香を気にすることもなく、次の授業の準備をしたり、昨日見たドラマの話をしたり。
彼女達が気にならないものが気になる自分は、異端なのかもしれない、と少しだけ不安になった。

「聖羅、何処行くの? もう授業始まるよ」

「ごめん、保健室。ちょっと気持ち悪くって…」

「あー、ほんとだ、顔色悪いね。先生には言っておくから、早く行ってきな」

心配そうな顔をする友人からも、ほのかな香りが漂ってくる。
色にすれば、たぶんマリンブルー。
嫌いな匂いじゃないけれど、麻痺しつつある嗅覚では、それを楽しむ余裕はない。
友人の言葉に小さく頷くと、聖羅は無数の匂いがひしめく教室から逃げ出した。



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