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僕は君の味方だから。
まだ少年でありながら、その特殊な生い立ちと才能によって、世界の裏側のアレやコレやを知ってしまったせいで、随分と大人びた考え方をするようになってしまった友人は、電話口で笑った。

『意趣返しとでも言うのかな。たまにはやり返してやるのもいいんじゃないかと思って』

朔羅には内緒だよ、と釘を刺したのは、彼女の前では年齢相応の少年でいたいからだろうか。
もっとも、聖羅としても告げ口のような真似をするつもりは無かったので、もとより心配する必要はないのだが。
こうして二人は共犯者となったのである。

「…おやおや」

ベッドに腰掛けた男は、現状に対して特に危機感を覚えた様子もなく、ただいつものように楽しげに笑んで見せただけだった。

「また随分と楽しい遊びを覚えてきたものですね」

男の、赤屍の白蝋の如く色白の手首には、鈍い輝きを放つ手錠がしっかりとはめられていた。
MAXUBEX特製の手錠である。赤屍蔵人と言えども、そう簡単には外れない──らしい。
聖羅は少し不安になった。
本当の本当に大丈夫なのだろうか?
仕組みこそ説明されてもよく解らない難解で複雑怪奇なものだったが、この赤屍も負けず劣らず、相当化物じみた人物だった。
なにしろ次元を剣で切ってしまうようなデタラメぶりである。
そう簡単に彼の行動を封じこめられるとは思えない。

「それで──」

白い開襟シャツの襟元から覗く鎖骨もなまめかしく、赤屍はベッドサイドに佇んで躊躇している聖羅へと、妖艶な流し目を寄越して微笑んだ。

「私を拘束して、何をして下さるのですか?」

「な、何をって…」

「いつもは私がして差し上げていますが、今夜はこの通り、手の自由を奪われています。貴女が、私に、して下さるんですよねぇ?」

…攻めろ、ということか。
聖羅はごくんと喉を鳴らした。
自分でやっておいて今更アレだが、ちょっと雲行きが怪しくなってきた気がする。
後悔し始めたのを見透かしたように、赤屍は次の行動を促してきた。

「まずはキスをして下さい。……ね? それぐらいなら大丈夫でしょう?聖羅さん」

おいで。誘われてベッドに乗り上げる。
赤屍の膝を跨ぐ形で膝立ちになり、艶めいた微笑を浮かべている赤屍の顔へと唇を寄せた。
そっと触れた唇に、ふ、と赤屍が笑った吐息がかかる。

「良い子だ……次は、わかりますよね…?」

こくんと頷き、おずおずと舌を潜りこませて口付けを深くする。
息継ぎの為にちょっとだけ唇を離すと、手錠で戒められたままの赤屍の手が上がり、聖羅の首の後ろへとくぐらせるようにして頭を抱かれ、引き寄せられた。
もう一度舌を絡ませてから、眼差しで促されて、首筋へ。
唇を這わせた肌はひんやりとして冷たく、これが男の肌かと驚くほど滑らかだった。
ちゅうっ、と吸い付いて紅い花を咲かせた聖羅に双眸を細めて、赤屍が耳たぶを唇で食む。
抑えきれなかった笑いが、クスと耳朶に吹き込まれて擽ったい。

「そうそう…その調子ですよ」

結局、手錠をかけようが縄で縛ろうが、支配する側とされる側、捕まっている人間と捕まえている人間の立場は変わらないのだ。



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