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夜ごと魔物に抱かれている。

「じっとしていなさい」

まだ色濃く情事の甘さを残した艶めいた声で言って、赤屍は手早く聖羅の身体をタオルで拭っていく。
湯気を立てる湯をなみなみと湛えた盥(たらい)を横に置いて。
湯で濡らしてから硬く絞ったホットタオルで、情事の痕跡を丁寧に拭き清めていく。
正確に人体の形を把握しているからこその、てきぱきとした無駄のない手の動きは、まさしく医者のそれだ。
だからと言って、そうされることへの恥ずかしさが消えるわけではなかったが。

「や…」

「や、じゃありません。お風呂は嫌だと言ったのは貴女でしょう」

聖羅を抱えて浴室に行き、身体を洗ってやろうと申し出た赤屍に抵抗した為の、これは代替え策だった。

抱かれるのはいい。
恥ずかしいけど、無我夢中でいられるから、そこに理性が入り込む余地は殆どない。
でも、改めて正気に戻ったところで、あんなことやこんなことになってしまっている身体を洗われるなんて、いくらなんでも恥ずかしい。
そう考えて拒否したのだが、実際にはされる内容は殆ど変わらなかった。

もしかしてこれは羞恥プレイの一種なのではないかとさえ思うほどだ。
しかし、赤屍の顔には愛しげな微笑が浮かんでいるばかりで、かえってそれがまた聖羅をいたたまれなくさせるのだった。

「赤屍さ…も、いいですから……」

「ダメです」

赤屍は裸身にガウンを簡単に羽織ったまま、丁寧に隅々まで清めていく。
実に楽しそうというか、嬉しそうに。

その腕が動くたびに、男性にしては艶やかな黒髪が肩の上で踊る様を、聖羅は身動き出来ずに見上げるしかない。
ガウンの胸元から覗く胸板とか、しっかりと筋肉の張りが見られる腕の筋とか、もう、色々とダメだった。
開かされた脚の間までも綺麗に拭かれて、ぷるぷると身体を震わせる。

「やぁ…ん…!」

「あまり可愛い声を出していると、犯しますよ」

「……………」

「クス…そうそう、そのまま大人しくしていなさい」

大人の男の色気を漂わせて(というか大解放もいいところだ)赤屍は微笑んだ。
容赦なく冷酷にメスを振るう手は、しかし、この寝室の中では、とても優しい。



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