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なんとかなった。
それも、一ヶ月も経たないうちに。

赤屍の猛アプローチを受けた聖羅が陥落したらしい、という噂が、連休明けに喫茶店にやって来た蛮の耳に届いたのである。

連休初日、こちらもデート中だったヘヴンと来栖により、赤屍と聖羅が手を繋いでショッピングを楽しむ姿が目撃されている。
また、ネズミーリゾートに遊びに行っていた夏実の話によると、そこでもあの二人を見かけたらしい。
邪魔をしてはいけないと考えて声はかけなかったそうだが、カリブの海賊の列に並んでいたんだとか。
あの赤屍がどんな顔をしてファンシーなアトラクションの数々を楽しんだのか、蛮にはまったく想像出来なかった。
邪眼の悪夢もかくやといった感じだ。

げに恐ろしきは女心である。
ほんの僅かな期間にいったい何が起これば、あれほど怯えていた男と仲睦まじい恋人同士になってしまえるというのだろうか。

「なんでお前がふて腐れてるんだ、蛮」

「ふて腐れてなんかねーよ」

ぶすっとした顔でカウンターに頬杖をついていた蛮は、波児の問いかけを素っ気なく退けると、片手でズボンのポケットを探った。
そうして、取り出した煙草の中身が空であることを見てとり、チッと舌打ちする。
さっきからずっとそんな相棒の様子を眺めていた隣の銀次は、そこで「あっ」と声をあげた。
まだあどけなさの残る顔がパアァァッと輝く。

「そっか!蛮ちゃんは聖羅さんのことが好きだったんだね!」

次の瞬間、驚異的な握力を誇る手で頭をぶん殴られた銀次が、木製のカウンターを額でかち割って波児に激怒されたことは言うまでもない。
破壊したカウンターの修理代を稼ぐ為、今日も奪還屋の二人は工事現場で働いている。
そして、彼らが汗水垂らして労働している同じ町の同じ空の下、聖羅と赤屍は今日も仲睦まじく過ごしていた。



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