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「失礼します…」

他にこの場に相応しい言葉が見つからなくて、小さくそう呟きながら、聖羅は浴室のドアを開いた。
勿論、身体にはタオルをしっかり巻き付けてガードしたまま。
中へ入り、湯で濡れた赤屍の裸身が目に飛び込んで来た途端、聖羅は真っ赤になって慌てて目を逸らした。
覚悟はしていたものの、こうして見ると殺人的な破壊力がある。

「何を恥ずかしがっているのです?私の身体を見るのは初めてではないでしょう」

「そ…それはそうですけど……恥ずかしいものは恥ずかしいんですっ」

「見るだけではなく、奥深くまで繋がって交わった仲だというのに?」

「ひぁっ…!」

笑みを含んだ声が耳元で響いたかと思うと、次の瞬間には、耳を甘く噛まれていた。
いつの間にか距離を詰められていて、直ぐ傍らに赤屍が立っている。
湿った肌から放たれる熱さえ感じとれる距離に、冗談ではなく目眩がした。

「さあ…そんな邪魔なものは取ってしまいなさい」

最後の砦であるタオルをあっさり剥ぎ取られた聖羅は、泣きそうな顔で赤屍を見上げたが、それで許してくれるような相手ならば苦労はしない。
赤屍は実に楽しげに笑っていた。

「貴女の言う通り、ちゃんと血を洗い流したのですから、今度は私の希望を叶えて頂かなくては、ね」

「ダメ……やっぱり無理ですっ、心臓が飛び出しちゃう…!」

「大丈夫ですよ。こう見えて、私は医者ですから」

強引に唇を奪われ、シャワーの湯を浴びせられる。
赤屍は聖羅の抵抗を楽しみながら、ボディソープでぬめる手を身体のあちこちに滑らせた。
全く抵抗しない獲物はつまらない。
最後の最後まであがいて、絶望して堕ちてくる姿が堪らなくそそられるのだから。

「愛していますよ」と囁いてやると、既に潤み蕩けかけていた目で赤屍を見上げてくる。

──本当に、可愛らしい方ですねえ…
実に──美味しそうだ。

思わず緩む口許を気どられぬよう、わななく唇に唇を重ねて口付けを与えた。
美味この上ない獲物を味わいながら、赤屍は今夜も甘い毒を注ぎこむ。
心行くまで、たっぷりと。



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