一週間ぶりに赤屍が帰ってくる。 普通のサラリーマンで言うなら『出張』にあたるのだろうか。 大変な内容の依頼だから手こずったというわけではなく、遠方での依頼であることと、移動と待機時間に少々日数がかかる仕事だったせいだ。 帰宅は夜になるという連絡があったのだが、聖羅はもう前日からそわそわしっぱなしだった。 「赤屍さんまだかなあ…」 何度も何度も時計を確認してしまう。 夕食は先に済ませておくように言われていたから軽くとっておいた。 風呂にも入ったが、パジャマではなく部屋着で赤屍を待っていた。 今日ほど赤屍のようなエスパー並みのサーチ能力があればいいのにと思ったことはない。 そうすれば彼が帰ってくる時間が正確に解ったはずだ。 「!」 玄関の鍵が開けられる音が聞こえてきた瞬間、聖羅は玄関に飛んで行った。 ドアが開く。 待ちに待った瞬間がやってきた。 開いたドアの向こうに赤屍の長身が現れ、おや、という風に微笑みながら中に入ってくる。 「お帰りなさい!」 「ただいま戻りました、聖羅さん」 微笑を浮かべた白皙に疲労の色はない。 出掛けた時のままの姿だった。 変わった事と言えば、黒衣がほんの少し汚れていることくらいだ。 恐らく返り血だろう染みは、しかし、黒に紛れてはっきりとは分からない。 「寂しかったです…」 「私もですよ」 ぎゅうっと抱きつくと、優しく、そして力強く抱きしめ返された。 「赤屍さあん…」 「おやおや…甘えん坊さんですね」 顔を埋めた胸から赤屍の匂いがする。 鉄錆に似た匂いもしたが、そっちは気にしないよう努めた。 胸一杯に彼の匂いを吸い込むと、胸とお腹の奥がきゅんと切なく疼いた。 (どうしよう……私変態かもしれない…) 赤屍の香りを嗅いだだけで欲情してしまうなんて。 「キスをしてもよろしいですか?」 「はい。いっぱいして下さい」 頬に手を添えられて顔を上向かされる。 近づいてくる人形のように整った顔をうっとりと見つめていた聖羅は、唇が重なった瞬間、目を閉じた。 |