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エプロンは装着した。
勝手知ったるキッチンに立ち、さあ始めるか、と腕捲りをする。
赤屍のマンションのキッチンは何度も使った事があるので、何処に何が入っているかは大体把握していた。
調理に必要な道具をテキパキと取り出し、自宅から持参したタッパを並べていく。
中身は今朝から午前中いっぱいかけて準備しておいた料理の数々だ。

「聖羅さん、何か手伝う事はありませんか?」

赤屍がやって来て尋ねた。
プレーンなブラックのセーターとスラックスが、背が高くてスリムな体型に良く似合っている。
初めて『仕事着』以外の私服を見た時は、改めて惚れ直してしまったくらいだ。

「いいえ、大丈夫ですよ。殆ど家で作ってきてあるので、大半は温めたり盛り付けたりするだけですから。そうじゃなくても、今日の主役にお手伝いなんてさせられません」

聖羅はタッパの一つを開けて、オードブルのハムとチーズのゼリー寄せを皿に盛り付けながら笑った。
誕生日の準備は恋人であり自分がやるからこそ意味があるのだ。
赤屍に手伝わせるわけにはいかない。

「良い子ですから、大人しく待っていて下さい」

恋人の口調を真似して言うと、赤屍はクスと笑って「わかりました」と引き下がってくれた。
いつもの悪戯も無し。
それだけ聖羅の気持ちを汲んで楽しみにしていてくれているという事だろう。
早く準備を済ませてしまわなければ!
聖羅は盛り付けのスピードを上げて忙しく動き回った。



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