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「ですが……残念ながらタイムリミットのようだ。お遊びはおしまいですよ、銀次君」

──ゴプリ…
右手から溢れ出た鮮血が赤い剣の形にこごり、赤屍はそれを横なぎに振るった。
真一文字に引かれた真紅の残像を残し、容赦のない斬撃によってビルの一角が切り裂かれる。

「さようなら、銀次君。この続きはまたの機会に」

「うわっ、わ、わ、嘘っーーー?!」

着地するはずの足場が消失してしまった事で、銀次は宙に浮いたままバタバタと足を動かしたかと思うと、そのままビルの谷間へと落ちて行った。
悲鳴が下へ下へと遠ざかっていく。
銀次のことだ。これくらいで死にはしないはず。
赤屍は、クス、と笑うとポケットに片手を入れて歩き出した。
もとより本物の依頼品は卑弥呼が持っていて、赤屍は囮に過ぎない。
その役目が終わった今、依頼も終了したも同然だった。

時計を見る。
21時をまわったところだ。
予定よりも少し遅くなってしまったか。

「やれやれ…こんな事ならば、最初からヘリをチャーターしてもらうのでしたね」

携帯を取り出し短く会話を交わす。
程なくして、バラバラとヘリのプロペラ音が辺りに響き渡った。
明るいライトが屋上に佇む赤屍の姿を照らす。
ギリギリまで低空飛行で近づいて来たヘリが着地するかしないかのタイミングで、開いたドアから中へと入ると、そこには、ぽつんと座席に座る先客の姿があった。
帽子を押さえながら入って来た赤屍を聖羅は笑顔で出迎える。

「お帰りなさい、赤屍さん」

「ただいま戻りました、聖羅さん」

さあ、帰って誕生日パーティーをしましょう。
赤屍はそう言って微笑んだ。
自宅では、愛する恋人の作ったケーキとご馳走が待っている。
そして、甘い、甘い、プレゼントも。
今夜は実に楽しいバースデイになりそうだった。



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