「ほお・・・まるで“永遠の生”を知ってる様な物言いだなぁ?」
『・・・枯れない花を誰が愛でよう?儚いからこそ人は焦がれる』
――――――“永久の生”などありはしない・・・
「…ケッ、くだらねぇ」
テメェもデイダラと同じかと吐き捨てたサソリを眺め、そういえば彼の相方は爆弾狂だったなと思い出した…彼は刹那を愛しているのだろうか?
『・・・ぐっ!?』
そう思った瞬間凄まじい衝撃と浮遊感を感じ、木の幹に全身を酷く叩き付けられた。後ろから蹴り飛ばされたと気付いたのは地面にずり落ちてからだ・・・柄になく油断した。
「もろ脇腹に入ったな…うん」
…掌を封印しても動けれる。サソリの“芸術”とやらに集中し過ぎていたようだ。流石暁…彼が消えたのに全く気づかなかった。油断大敵とは正にこの事だろう。
フードの隙間から足が見えた。2組あるソレは徐々にこちらに近づいて来る・・・どうやら素顔が見たいらしい。雫は自分の容姿などに興味はないが、他人を酷く惹き付ける事は知っている。だから隠しているのに・・・
「吹雪…そのツラ拝ましてもらうぜ?」
バサリと乱雑に外されたフード。その弾みに長い銀髪が顔にかかり、反射的に目を瞑った。冷たい指に優しく髪の毛を払われ、雫は目の前に立つ2人を見上げた・・・
月光の如き銀髪、人形の名匠が丹精込めて作った様な顔立ち、白雪の肌・・・それだけでも十分な程の絶世の美女なのだが、芸術家である2人の目を釘付けにしたのは・・・その瞳。
澄んだ空の様で深海の様でもある不思議な色彩の瞳には何の感情も浮かんでなかったが、その蒼には誰をも魅入らせてしまうような輝きを秘めていた。
『・・・珍しいか?この眼が』
…若い容姿に釣り合わぬ年数を生きてきたサソリも、こんな特異な蒼の瞳は初めて見た。デイダラも同じなのだろう、薄い空色の瞳を見開いたまま雫を凝視している。
「・・・噂通りだな、うん」
―――――誰かにも言われた台詞だ・・・確か大蛇丸だったか
未だ視線を逸らせない2人組を無視し、雫は埃を払いながら立ち上がった。コイツらを正面から相手にしてたら日が暮れてしまう。
立ち上がった事で漸く我に返った2人から殺気を向けられる。一般人なら失神する程のソレでさえ雫には通じない…慣れとは恐ろしいものだと自嘲した。
「「!!」」
雫が印を組むのを見た瞬間2人は素早く距離を取った。警戒心も露に睨んで来るのもサソリはともかく、デイダラは氷遁を詳しく知らないだろうから当然か・・・ただし
『――――背後の警戒が疎かだな』
「なっ!?」
「・・・チッ、やられたな」
振り返った2人の目に映ったのは後ろから覆い被さるように迫る氷の柱。それらは勢い良くに地面に突き刺さって強固な檻となり、瞬く間に動きを封じた。
・・・氷遁は基本的に印を組んでから術の発動が遅い事で知られている。湖などで水が近くにある場合は別だが、空気中の水分を凝縮させて水を作り出し、更に結晶化させる過程に時間がかかるのだ。
――――いくら霧があるとはいえ、発動が早すぎる・・・
「テメエ…やっぱり何者だ?」
『・・・さぁな、』
気になるなら赤目のリーダーにでも聞いてみろ、と呟くと檻越しに驚愕に見開かれた瞳が向けられた・・・なんだというのだろうか??
「―――――イタチはリーダーじゃないぞ?うん」
『・・・・・・は?』
何の話だ、と雫が口を開く前に2人が口々に呆れた様な声で呟いた。
「吹雪…お前天下の情報屋の癖に知らない事もあるんだな」
「イタチがリーダーだったらオイラ絶対に暁に入らないな…うん」
限りなく話は噛み合っていないのに、2人は気付かずに話し続ける。雫はイタチがリーダーだなんて一言も言っていないし、当然黒幕はアイツしかあり得ない・・・赤目でイタチに直結するという事はつまり――――――
『・・・まさかお前ら、』
―――――知らないのか?
――――どういう事だ??
知らないのか、と吹雪は問うた。暁のリーダーを赤目だと言った事からイタチだと思ってやがるのかと呆れていたら、肋骨が折れる程蹴られても揺らがなかった瞳を見開いて彼女は思わずと言った様子でそう呟いた。
・・・吹雪の言い方からすると俺が知らない赤目の誰かがリーダーと言う事になるが・・・それはあり得ない。サソリはイタチが暁に入る前から居るが、リーダーは輪廻眼を持つ喰えないあの男以外は過去にも居た事がない。
「・・・・・・」
だが、あの吹雪の動揺の仕方は異常だった。信じられないという瞳で呆然とサソリを見返していた姿に偽りはなかった・・・もしあれが演技だとすれば騙されない者など居ようか?
「・・・はぁ、結局逃げられちまったな、うん」
あの檻は卑怯だとかぼやく相方を無視し、サソリは眉間に皺を寄せたままつい数分前まで吹雪が居た場所を睨みつける。
―――――もしも、吹雪の言う事が本当ならば・・・
「…帰るぞ、デイダラ」
俺の知らない所で、何が起きてる?
初めて の 手紙 は 遺書 でした
嗚呼 私 が 唯一 愛した 人 よ
淡々 と 綴られた 言葉たち
後は頼む だなんて
姿 探せど 影 さへ あらず
封筒 の 底 に 残った 4つ折り の 便箋
最後の手紙は恋文でした
その 優しさ が 引き裂かれる 程 痛かった
もう さよなら さえ 言えないのに
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