『…ッ!!』



森の静寂を破る爆発音。背後から襲ってくる千本を振り向かずに避けながら白いフードの人物は逃げる。見上げた空を舞うのは大きな鳥・・・術か。



頭上から降ってくる爆弾避けて横に跳躍する。間髪入れずに飛んで来たクナイが僅かに外套を裂いた。



―――――さすがS級犯罪者・・・



横目で背後を睨む。一定の間隔を空けて追ってくる“人に在らざるモノ”・・・何なんだアレは??生き物の気配はしないのにチャクラを感じる。ソイツから放たれた千本の雨を上に飛び上がる事で回避した。



『!!』



「はい射程圏、うん」



視界に映るのは眩い金髪。丁寧に塗られた黒い爪化粧の指は既に印を組んでいる。ニヤリと歪んだ三日月の口元が言葉を発する直前、雫も無意識にに印を組む。





















一際大きな爆発が、霧に包まれた樹海に響いた。













樹海にポッカリと空いた砂煙を上げるクレーター

「・・・おいデイダラ」



「なんだい、うん?」



「俺らの任務は?」



「吹雪の勧誘または拉致だっけかな、うん」



「…で、その吹雪は何処だ?」



「・・・オイラの芸術喰らって行方不明」



「生存は絶望的だな…」



歪な手に掴まれた布切れ。ブスブスと音を立てるそれは元の色を失い、黒く焼け焦げていた。考えなしに爆発させるからだ、と相方を睨むと冷や汗を流しながら謝って来た。



「しかし吹雪ってあんまり強くなかったな…うん」



「実力を出す前に何処かの馬鹿が爆発したんだろうが」



「・・・悪かったって、うん」



殺気を飛ばす相方から目を逸らして思考を巡らせる・・・いくら隙を付いたとはいえ呆気無さすぎる。なにより吹雪が爆発させる直前に組んだ印が気になった。



今まで見た事がない印だった・・・五遁のどれにも当てはまらない事からして吹雪独自の術だろうか。



――――つまり吹雪は・・・



「生きてるな、うん」



「・・・何だと?」



怪訝そうな視線を寄越す相方を無視して辺りの気配を探る。相変わらず幽霊みたいに気配が感じられない。思わず霞んだ視界に舌打ちをした。



「「?!」」



ピリリと首筋に静電気が走る。反射的に飛び退いた刹那、鋭利な細い水晶が足場の太い木の枝を軽々と貫通し、地面に突き刺さった。




「やっぱり生きてやがったか…うん」



――――――ニヤリと笑うデイダラの視線の先に立つ白い人影・・・



多少コートの端が焦げたりしているが怪我は一切ない。あの爆発から無傷で逃げ切った吹雪を見てサソリは目を細めた。今更ながらリーダーの発言が脳裏に横切る・・・まったく…面倒な事を任されたモンだ。



『・・・私に何の用だ??』



―――――元、岩隠れの天才デイダラと砂隠れの天才造形師赤砂のサソリ・・・??



凛と言い放たれた言葉はゆるりと霧に溶けていった。流石吹雪…と言うべきか、自分達の事を完璧に知られていた。情報屋としても忍としても申し分ない程の実力・・・リーダーが欲しがる訳だ。



『・・・“暁”は余程暇らしいな』



「「!!」」



『うちはイタチと干柿鬼鮫の後にわざわざ来るとは・・・』



――――――まさか依頼しに来たんじゃないだろう??



「・・・暁に来い、吹雪」



『断る』



「…即答かよ、うん」



『私が誰にも付かないのは知っているだろう』



「リーダーの命令なんでな…断られれば『力ずくで、か?』・・・分かってんじゃねぇか」



『だが断る』



「なら…無理矢理にでも連れて行くぜ!!」



―――――ブワっと一瞬で膨れ上がった殺気に森がざわめいた。再び起爆粘土を練ろうとしたデイダラに吹雪は淡々と告げる。



『出来るか?今のお前に・・・』


「・・・なっ!?」



凍り付いた両手。気付かぬ内に封じられた腕では粘土どころか印だって結べやしない。驚愕の瞳で見つめてくるデイダラを無視して吹雪はサソリに視線を向けた。



『傀儡か…』



「ククク・・・流石だな」



バシリと音を立てて氷の張ったヒルコから本体のサソリが飛び出して来た。十代後半くらいの背格好の少年を見て吹雪は声を低くした。



『・・・禁術か?』



「まぁな…自分で傀儡にした」



『何の為に・・・』



「芸術は永久の美だからだ」



『・・・・・・くだらない』



「…なんだと?」



『永遠に何を望む?時の流れに逆らって何の意味がある?・・・お前のいう“芸術”の先にあるのは』







・・・空虚で無機質な・・・・



生きながらの



死  だ







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