「あ!!イタチさん鬼鮫さんお帰りなさぁい!!」

リビングに入ると聞こえてきた明るい声…ゼツに連れられて来たのだろう、トビがいた。こちらに手を振る様子をイタチは眉をしかめる。それをみた鬼鮫は苦笑し、帰りましたと告げた。

「結構長引いたな…イタチにしちゃ珍しいな、うん」

「霧隠れっつったら鬼鮫の故郷か…懐かしくて長居した訳じゃねぇだろうな?」

「…なかなか相手が尻尾を出さなかったんですよ」

からかう様に声を掛けて来たのはソファーに座るデイダラとサソリ…どうやら今日は非番だったらしい。

「・・・」

「部屋に戻られるんですか?」

「…少し寝る」


―――――これ以上奴の猿芝居を見るのはうんざりだ。


自室に戻ろうと廊下に出る。後ろで機嫌悪ぃな…などとデイダラの呟く声が聞こえた。





ガチャ




「・・・何の真似だ」

――――――自室のベッドに偉そうに腰掛ける人物。勝手に入るな、と睨むと俺とお前の仲だろうと笑った。良い訳がない…自然に眉間に皺が寄った。

「会ったんだろう?」

「・・・」

「そう怒るな、匂いがするからな」

甘く芳しい匂いがな、と口角をあげるマダラは酷く妖艶に見えた・・・男である自分でさえも見ずには居られない程の危険な香りさえする笑み。

「顔は見たのか?」

「…いや」

「だろうな」

フードを被ってただろう?と自分と同じ紅い眼が笑う…その色が鮮血を思わせて、鉄臭い空気を嗅いだ気がした。

「…会ったのか?」

「3日前位にな」

女の口は軽い、と嘲る男。面を被らない姿は久しぶりに見た…リビングの“トビ”は分身か。この本性を知る者にとって、あの演技っぷりには舌を巻かされる。

「強かったか?」

「…いちいち聞くな」

「逃げられたんだろう?」


・・・会話になってない。答えを知っている癖にわざわざ聞くなといつも思う。この男は人の神経を逆撫でするのを好む…全く悪趣味な事だ。

「…マダラ」

「ん?何だイタチ?」

「…なぜ連れてこなかった?」

ふと疑問に思った事。ずっと探していた女…それを見付けたのなら拒まれようが何だろうが幻術でもかけて無理矢理に連れてくる筈だ。


―――――この男なら、それ位なんとも思わないだろう


「うちはの天才と言われたお前でも分からないか?」

「・・・」

「俺の性格を考えてみろ」

お前の言葉を借りるなら悪趣味な事だ、と楽しそうに言った…さっきから心を読まれていたらしい。軽く目を閉じて…暫く考えてから呟いた。

「お前が楽しむ為…か?」

「まぁ当たりではあるが…」


―――――もっと具体的に言え


「そうだな、“何”の為かを当ててみろ」

「・・・」

「そうだ、ロクでもない事だな」

「…勝手に心を読むな」

「俺が読めない様にしないお前が悪い」

確かに俺は性悪だがな、と笑う男。分かっているなら改善しろと思ったら、俺は気に入ってるんだと返された…それよりも早く考えろと急かされる。

「…時間を与える為か?」

「まぁそうだが…」


―――――それは何の為に?


「準備…か?」

「・・・」

「…お前の思い通りにするために」

「やっと当たりか…まぁお綺麗な言葉で言えばそうだな」

俺らしく言うとだな・・・と一旦口を閉じ、心底楽しくて仕方がないという表情をした。笑顔な筈なのに、全く笑っていない・・・紅く欲に塗れた爛々と光る瞳。


最高の舞台を 用意してやろう



「一生、俺だけを見させてやる為だ」



キ ョ ウ キ の 笑 み



一族を滅ぼした、イタチを蒼白にさせる程の狂気。血に塗れた瞳から眼が逸らせない、呼吸が出来ない…純粋に恐怖を感じた。

「…暫くは手を出さない」

最後の自由を楽しむ期間をやる・・・その後は





二度と 太陽 を 


拝めない様にして


俺 だけ の 月 に





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