果たせぬ約束   


   叶わぬ思い


流れ星に3回願えば―――


―――願いは叶いますか?



・・・結局、情報を集める前にターゲット全員が死体で見付かった為に雫の仕事は無くなった。抵抗の痕跡は一切見られない…出来なかったのだろう。やったのは恐らくイタチ達だ・・・同じ抜け忍とはといえレベルが違い過ぎる。

『………下らない』


――――死んだ抜け忍達が探していた物は[血継限界を持つ孤児]・・・


確かに裏のルートでは高く売れるだろう。孤児なので後腐れもない…全く良い“商売”だ。

霧隠れでは血継限界が忌み嫌われる…長く続いた内乱の影響だろう。土地柄としては雫と同じ[氷遁]を持つ者が多い。迫害されるためほとんどの者が隠して生きる。


――――――雫自身は霧出身ではないが・・・


木の葉は[うちは]や[日向]などの瞳術の血継限界が有名だ。幻術や洞察力に優れた一族…大蛇丸のように付け狙うや奴らも居る。

うちは一族は既にイタチが虐殺し生き残ったのは2人のみ・・・とされている、アイツは論外だ。はたけカカシも左目が写輪眼だが、一族ではない。


――――――裏切られた弟は・・・


『今頃中忍試験か…』

・・・将来“木の葉崩し”と呼ばれる大事件が起き、大蛇丸が三代目火影を殺害するのはまだ1月程先だろう…今は予選が終わった頃か。

『…行ってみるか』

右手に持った小さな手帳の[今後の予定]の欄にはビッシリと小さな字が書き込まれていたが、雫はそれを眺めるだけで終わった。

情報屋吹雪への依頼は危険を伴う物が多い。抜け忍の行方やら悪どい大名を叩く為の決定的な証拠やら・・・依頼主の手に負えなかった物ばかりでタチが悪い。

・・・だが別に雫にとっては楽な物だ。直接相手に手を下さず依頼主に求められた情報を渡すだけだとはいえ、襲われる事もしばしばある。だが雫とて伊達に[中立]を名乗っている訳ではない…上忍クラスなら瞬殺出来る自信がある。

親友の死を見届けるため、依頼をさっさと済ませようと雫は霧隠れの門から消え去った。




――――暗闇で揺らめく人影

「…霧隠れの任務ご苦労だったな」

「いえ、削りがいのない相手でしたよ」

「・・・」

「…どうした?」

「・・・気になる奴が居てな」

「…そういえば任務の後、奇妙な方に出会いましたねぇ」

「奇妙?」

「えぇ…隠れていた我々の気配に気付き、名前まで言い当てたので殺そうとしたんですが…」

「殺し損ねたのか?」

「ええ、追い詰めたと思ったら罠でしてね…2人して閉じ込められました」

「…ほう、お前らをそこまでするとはな」

「変わった方でしてね…殺す気はないと言って逃げました」

「…氷遁の使い手だ」

「霧隠れの忍か?」

「…違う、アイツは他里の忍か何かだと思う」

「お前ら2人相手に逃げられる程の忍か…」

「…しかも女性でしたね、恐らく」

「!?」

「かなり小柄な方でしたし、フードで顔は隠していましたが…」

「…声は隠せない」

「・・・」

「…リーダー?」

「…雫…」

「!?」

「雫…?」

「名前くらいは聞いた事があるだろう?…中立情報屋だ」

「…あぁ、噂なら聞いた事がありますよ」
情報は誰よりも早く正確。誰にも付かず、素性不明。探そうとしても見つからず、捕らえようしても逃げられる…まるで風の様な奴だと。

「…リーダーは会った事が?」

「ないな…暁に迎え入れたいとは思っているが」

「無理だろうな」

「…イタチさん?」

「確かにな…だが」

味方に率いれればかなり心強いぞ…と暁の頭領は不思議な形をした瞳を細めた。

「確かにかなりの強者でしたからね…」

「誰にもなびかないがな」

「ほう…まるで吹雪を良く知ったような口振りだな?」

「…まぁ、話は聞いてる」



アイツから、いつもな



「…今日はゆっくり休め」

「そうさせて貰う」

「意外に長引きましたからねぇ…今回は」

鬼鮫には最後のイタチの言葉が聞こえなかったのだろう…出ていく2人の背中を見てリーダーは目を細めた。





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