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入隊して三十年も経てばすっかり生活にも慣れて、あれだけ忌避していた仲間の死にも自然と折り合いをつけられるようになっていた。
トキの死後、落ち込んでいた自分を励ました先輩たちもこんな風に慣れていったのだろうか。自分よりもずっと深く傷ついてきた先輩たちの「よくあることだ」は、ひょっとするとものすごく濃い意味があったのかもしれない。
それでも、平子や藍染がいてくれる限り、何が起きても絶対に大丈夫だと断言できるだけの安心感が、五番隊にはあった。


『平子隊長、藍染副隊長。明日またみんなで花火するんです。一緒にどうですか』
『花火ィ?季節外れやな』


あの頃に始めた小さな小さな花火大会は徐々に習慣となりつつあった。
夏のときもあれば秋のときもあり、冬のときもあれば春のときもあった。季節の定まらない風物詩は何かの節目の時に行うこととなっていて、今回は新人の歓迎やら研修後の打ち上げやらを兼ねていた。
平子と藍染に声をかけると、藍染は少しだけ顔を曇らせて手を振った。


『みんな、すまないが今少し立て込んでいて……』
『明日やったらエエやろ。俺も羽伸ばしたァてしゃあないわ。またなまえの落第記念かァ?』
『ち、違いますっ』
『でも先輩、前も試験落ちてましたよね』
『やめてよ、今言わないで!』


愛おしい隊員たち一人一人の顔をしっかり見て、平子は意地悪そうに笑う。『ほな明日な』と声をかけて執務室に入り、柔らかなソファに身を投げ出した。


『お忙しいのによろしいのですか』
『魂魄消失の件やろ』
『はい。楽観視できかねます』
『ま、そのうち調査が入るっちゅう話や。報せあるまで待機、やで』
『………そうですか』


窓の外へ視線を投げた平子は、それきり口をつぐんで何も言わなかった。



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