臨也は右手を差し出した。
臨也のオフィスはモノトーンな色調にまとめられていて、夕方の今は不気味な色に照らされていた。

「シズちゃん」

静雄はじっ、とその手を見ている。いつもの鋭い獣の如き目でなく、少しだけ悲しみを含んだガラス玉のような目だった。

「シズちゃん、この手を取ってよ」
「…………今更、虫が良すぎるんじゃないのか」

静雄の声に強い抑揚は感じられなかった。相変わらず透き通った目で臨也の手を見つめている。

「……本当に悪かったと思ってる。でも、シズちゃんだって気付いてたんでしょ?」
「何に」
「自分が人を愛したいことに」

日はどんどん傾いていく。
ようやく静雄は臨也の目を見た。

「お前が」

言いながら、ポケットに突っ込んでいた右手を出す。その手は力無くしなだれた。

「お前が、俺のことを傷つけないって約束すんなら、手を繋いでもいい」




 


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