早く死ね



「ホントシズちゃんてば生きてるだけ無駄。早く死んでよ」
「その言葉そっくりそのまま返すぜ臨也。塵も残さず消滅しろ」

いつも通りの言葉の暴力。俺も彼も、本気で相手に死んでほしいんだ。子供が気軽に使う「死ね」ではなく、今この瞬間、リスクやその後の処理も省みず相手に消え去ってほしい「死ね」。

「俺が死んだら困る人は大勢いるけどシズちゃんが死んでも誰も困らないよ」
「俺が死んで悲しんでくれる人はいるがテメェが死んでも誰も悲しまねーぞ」

ああイライラする。ああ言えばこう言う。
シズちゃんも同じことを思っているのだろう。煙草を噛み切ってしまった。
でもねシズちゃん、君が気付いてなくて、俺だけが気付いていることがあるんだよ。

「いつもいつも池袋に現れやがって。新宿から出んな。いや家から出んな」
「じゃあシズちゃんさあ、」


俺が死ねって言いに来なくなったらどうするの。
シズちゃんは噛み切った煙草を、両方とも携帯灰皿へ入れた。

「清々する」
「嘘だね」
「ああ゛……?」


「シズちゃんはね、俺に死ねって言うことで自分を傷付けてるんだよ。そして俺に死ねって言われることで自分の存在価値を確かめてる。とんだ自慰だ。人のことオカズにすんの止めてくれない? 気持ち悪い。あ、これもまたオカズにしちゃうんでしょ。止めてよね吐き気するから。シズちゃんは何も考えず死んでくれればそれでいいよ」



シズちゃんの息は止まっていた。
と思ったら、ハァッ、と短く吸い込んだ。

「ふざけんな、ふざけんな! 誰がテメェなんかでするか! キモイんだよ、死ね、死んじまえ!」 
 
顔を真っ赤にして叫ぶ。
俺の言ったことの意味分かってるのかなあ。
しばらく俺を睨みつけながら肩で息をしていた。そうしてゆっくりと、長く、息を吐き、

「マジでキメェ。……最低な野郎だなお前」

あ、行っちゃった。
シズちゃんはあれで意外と初だから、顔が赤かったのは怒りのせいだけでは無かったかもしれない。
彼が去った後は、所々コンクリートの壁や地面がクレーターを成していた。

「意味、分かってないよねえ。シズちゃん」




俺も、君で自傷して自慰してるんだよ。





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -