07.


翌日。
ケイティ・ベルは「聖マンゴ魔法疾患傷害病院」移された。
ケイティが呪いにかけられたというニュースは既に学校中に広まっていたが、その詳細は誰も知らなかった。
呪いの標的がケイティ本人ではないという事実は、居合わせた四人と名前以外は知らないようだった。





「ああ、それに勿論、マルフォイも知ってるよ。」





ハリーが「マルフォイ死喰い人説」を持ち出すと、決まってロンとハーマイオニーは聞こえないふりをした。
一方無視を出来ない名前は、「そうかもしれないな」と半信半疑の様子で相槌を打っていた。














薬草学の温室へ向かう途中。
ハリーはダンブルドアとの個人授業の話をしてくれた。
ダンブルドアとの授業は、「憂いの篩」にダンブルドアの想い出を注ぎ込み、ヴォルデモートの生い立ちを知ることだった。
前回の話は名前は知らないが、今回の話は、孤児院に預けられたヴォルデモート───トム・リドルを、若きダンブルドアがいかにしてホグワーツに誘ったか、そのような話だった。





「ウワーッ、ぞっとするな。少年の『例のあの人』か。」





ロンが小さな声でそう言った。
名前達四人は今学期の課題の「スナーガラフ」の株の周りを取り囲み、保護手袋をはめるところだった。
この植物を取り扱うにはマウスピースやゴーグルなど、十分な準備が必要だ。





「だけど、ダンブルドアがどうしてそんなもの見せるのか、僕にはまだ分かんないな。そりゃ、面白いけどさ、でも、何の為だい?」



「さあね。
だけど、ダンブルドアは、それが全部重要で、僕が生き残るのに役に立つって言うんだ。」



「素晴らしいと思うわ。
出来るだけヴォルデモートの事を知るのは、とても意味のある事よ。そうでなければ、あの人の弱点を見つけられないでしょう?」



「それで、この前のスラグホーン・パーティはどうだったの?」





マウスピースをはめていたので、ハリーの声はちょっとくぐもって聞こえた。
ハーマイオニーは保護用のゴーグルをかける。





「ええ、まあまあ面白かったわよ。
そりゃ、先生は昔の生徒だった有名人の事をだらだら話すけど。それに、マクラーゲンをそれこそちーやほーやするけど。だってあの人は色々なコネがあるから。でも、本当に美味しい食べ物があったし、それに、グウェノグ・ジョーンズに紹介してくれたわ。」



「グウェノグ・ジョーンズ?」
ロンの目が驚きで見開かれた。
「あのグウェノグ・ジョーンズ?ホリヘッド・ハーピーズの?」



「そうよ。
個人的には、あの女ちょっと自意識過剰だと思ったけど、でも───」



「そこ、お喋りが多過ぎる!」
スプラウトがせかせか此方ヘやって来た。
「あなた達、遅れてますよ。他の生徒は全員取り掛かってますし、ネビルはもう最初の種を取り出しました。」





見ると、ネビルは唇から血を流し、顔の何カ所も酷い引っ掻き傷だらけだったが、手にはしっかりとグレープフルーツ大の緑色の種を掴んでいた。
よく見ると種はピクピクと脈打っている。





「オーケー、先生、僕達今から始めます!」





ロンがそう言うと、スプラウトは四人から離れた。
スプラウトの耳に届かないであろう距離になると、ロンが小さく付け加えた。





「耳塞ぎ呪文を使うべきだったな、ハリー。」



「いいえ、使うべきじゃないわ!
さあ、それじゃ……始めましょう……。」





名前達四人は互いの顔を見交わして、深く息を吸い込む。
それから株に飛び付いた。
株は突然息を吹き返したように暴れ出し、先端から長い棘だらけの蔓を出して、鞭のように振り回す。
その一本がハーマイオニーの髪を狼牙棒のように絡め取り、ロンが剪定鋏でそれを叩き落とした。
名前は蔓を五、六本纏めて捕まえ、ハリーは二本捕まえて結ぶ。

すると蔓と枝の真ん中に穴が現れ、ハーマイオニーがそこへ片腕を肘まで突っ込んだ。
ハーマイオニーの腕を銜え込んだまま、穴はピッチリ閉じる。
男子三人が蔓を引っ張ったり捻ったりして再び穴を開かせると、ハーマイオニーの腕は無事に抜けた。
そしてその手にはしっかりと種が握り締められていた。
途端に蔓は株の中へ引っ込み、株は置物のように静かになった。

ロンはゴーグルを押し上げて、保護用の手袋をはめた手で汗を拭う。





「あのさ、自分の家を持ったら、僕の庭にはこんなの植える気がしないな。」



「ボウルを渡してちょうだい。」





自分の体から出来るだけ遠くに離しながら、ハーマイオニーが気持ち悪そうに言った。
ハリーがボウルを渡すと、その中へハーマイオニーは種を入れる。





「びくびくしていないで、種を絞りなさい。新鮮なうちが一番なんですから!」





スプラウトが遠くから生徒達に呼び掛ける。






「兎に角。」
ハーマイオニーは話を切り出す。
「スラグホーンはクリスマス・パーティをやるつもりよ、ハリー、ナマエ。これはどう足掻いても逃げられないわね。だって、あなた達が来られる夜にパーティを開こうとして、あなた達がいつなら空いているかを調べるように、私に頼んだんですもの。」





固まる名前と呻き声を上げるハリーの横で、ロンは立ち上がり、両手でボウルの中の種を押し潰そうとしていた。
種は頑としてそのままだ。





「それで、そのパーティは、またスラグホーンのお気に入りだけの為なのか?」



「スラグ・クラブだけ。そうね。」





力任せに押していた種は滑って温室のガラスに当たって、跳ね返ってスプラウトの後頭部に当たり、帽子を吹っ飛ばした。
ハリーが取りに走り、帰って来ると、ロンとハーマイオニーのやり取りに挟まれ困惑している名前と目が合った。
ハリーは二人の間から名前を引っ張り出して、二人で種を割ろうと挑戦した。





「いいこと、私が名前をつけたわけじゃないわ。『スラグ・クラブ』なんて───」



「『スラグ・ナメクジ・クラブ』。」
ロンはマルフォイのように意地悪く笑った。
「ナメクジ集団じゃなあ。まあ、パーティを楽しんでくれ。いっそマクラーゲンとくっついたらどうだい。そしたらスラグホーンが、君達をナメクジの王様と女王様に出来るし───」



「お客様を招待出来るの。
それで、私、あなたもどうかって誘おうと思っていたの。でも、そこまでバカバカしいって思うんだったら、どうでもいいわ!」



「僕を誘うつもりだった?」


「そうよ。
でも、どうやらあなたは、私がマクラーゲンとくっついた方が……。」





嫌な沈黙が四人を包んだ。
ハリーは移植ごてで種を叩き続け、名前はボウルを押さえている。





「いや、そんな事はない。」




ロンの声はとても小さく、ハリーが種を叩く音や、周囲の物音や声に掻き消されてしまう程だった。
ハリーは種を叩き損ねてボウルを叩いてしまい、ミョウジの手の中でボウルは割れた。

ハリーがすぐさま「レパロ」と唱えてボウルは元通りになり、ボウルが割れた音でロンとハーマイオニーは我に返ったようだった。
ハーマイオニーは慌てて種を絞る正しいやり方を探す為、「世界の肉食植物」の本を探した。
ロンはばつが悪い思いでいっぱいのようだったが、何だか満足げでもあった。





「それ、よこして、ハリー、ナマエ。
何か鋭い物で穴を空けるようにって書いてあるわ……。」





種をハーマイオニーに任せて、男子三人は再び、凶暴な株に立ち向かった。
格闘の末、ロンが新しく種を獲得し、ハーマイオニーも上手く種を割れたようだった。
ボウルの中は幼虫のようにうごめく薄緑色の塊茎で満杯だった。

それからはスラグホーンのパーティについて話す事なく授業が終わった。
二人の口論が関係にどう変化を与えたのかは不明だが、その日から二人は互いに対して少し礼儀正しくなった。

暫くして。
クィディッチで対スリザリンの初戦が差し迫ってきていたが、チェイサーであるケイティ・ベルは未だ聖マンゴ病院にいる。
それで仕方無くハリーはディーン・トーマスを勧誘して快諾されたが、これには寮生がブツクサ言った。
けれど学校生活で様々な批判に耐えてきたハリーにとって、それはあまり問題にはならなかったようだ。

そうしてディーンを代理に加えて、初の練習を終えた頃だ。
翌朝のロン豹変しており、ジニーとディーンを冷たく無視しただけでなく、ハーマイオニーも無視した。
二人がようやく落ち着いた関係になったと思っていたところの事で、名前には訳が分からなかった。





「練習を終えた夜、ジニーとディーンがキスしてるところに僕達が出会したんだ。
それで、ロンとジニーが喧嘩しだした。」





思い出したくないという顔でハリーは語った。
ハーマイオニーは八つ当たりされた事に怒り、ロンと喧嘩を始めてしまった。また二人は口をきかなくなったのだ。
ハリーと名前は仲直りさせようと努力したが無駄だった。
ロンの攻撃的な態度は数日経っても治まらなかった。
そして、それは試合を控えた最後の練習まで続いたのだ。

翌日の朝食の席。
名前は途中で合流したハーマイオニーと一緒に大広間へ向かった。
最近ハーマイオニーはロンを避ける為に朝食の時間と席をずらしているのだ。
けれど今日は違ったらしく、迷った末にハリーとロンの方へ向かう。





『おはよう、ハリー、ロン。』



「二人とも、調子はどう?」



「いいよ。」





ハリーが返事をして、ロンは何も答えなかった。
その一瞬、かぼちゃジュースのグラスに、ハリーが何か注ぐような仕草をした。
ハーマイオニーも目撃したらしい。
名前と二人で顔を見合わせる。





「ほら、ロン、飲めよ。」



「ロン、それ飲んじゃダメ!」





そしてあろうことかハリーが何か得体の知れない物が入ったかぼちゃジュースをロンに勧めるではないか。
ハーマイオニーの制止に、ハリーとロンは揃ってハーマイオニーの顔を見上げた。





「どうして?」
ロンが不思議そうに聞いた。



ハーマイオニーはハリーを見ていた。
「あなた、今、その飲み物に何か入れたわ。」



「何だって?」
ハリーが聞き返した。



「聞こえたはずよ。私達見たわよ。ロンの飲み物に、今何か注いだわ。今、手にその瓶を持っているはずよ!」



「何の事か分からないな。」
ハリーは何かをポケットにしまった。



「ロン、危ないわ。それを飲んじゃダメ!」





ハーマイオニーの制止を無視して、ロンは一気にグラスの中身を飲み干した。





「ハーマイオニー、僕に命令するのはやめてくれ。」





ハーマイオニーは恥知らずを見るような顔をして背中を丸める。
ハリーの耳元に屈み込み、小さな声でこう言った。





「あなた、退校処分になるべきだわ。ハリー、あなたがそんな事する人だとは思わなかったわ!」



「自分の事は棚に上げて。
最近誰かさんを『錯乱』させやしませんでしたか?」





雲行きの怪しい雰囲気を感じ取った名前が困る間もなく、ハーマイオニーはガッチリ名前の腕を掴んでその場を離れた。
ハリーとロン、二人から離れた席に着き、朝食を摂る。
暫く無言の時間が過ぎて、突然ハーマイオニーが口を開いた。





「ハリーがロンに飲ませたのは『フェリックス・フェリシス』に違いないわ。」



『幸運の薬。』



「そう。あの薬のおかげでもし試合に勝ったら、私、先生に話すわ。いいえ、勝てなかったとしても……だってスラグホーン先生が仰っていたでしょう?組織的な競技や競争事では禁止されているって!」



『うん、ドーピングのようなものだね。』





二人は朝食を摂った後に、他の生徒達と共にクィディッチ競技場へ向かった。
空いているスタンド席に座り、試合が開始されるのを待つ。

少しすると更衣室からグリフィンドールとスリザリンのチームがゾロゾロ歩み出てくる。
マダム・フーチのところへ進み、お互いのキャプテン同士が握手した。

チームが箒に跨ると、ホイッスルが鳴り響く。





「さあ、始まりました。今年ポッターが組織したチームには、我々全員が驚いたと思います。ロナルド・ウィーズリーは去年、キーパーとしてむらがあったので、多くの人がロンはチームから外されると思ったわけですが、勿論、キャプテンとの個人的な友情が役に立ちました……。」





解説者はいつものリー・ジョーダンではない。
ハッフルパフのザカリアス・スミスだ。
スミスの言葉にスリザリン側から拍手と野次が飛んだ。
一方ハーマイオニーはムスッとして、スミスの言葉に異を唱えたそうだった。





「あ、スリザリンが最初のゴールを狙います。ウルクハートが競技場を矢のように飛んでいきます。そして───
───ウィーズリーがセーブしました。まあ、時にはラッキーな事もあるでしょう。多分……。」





試合開始から三十分。
グリフィンドールは六対ゼロでリードしていた。
ロンが素晴らしく守りを固め、ジニーは四回もゴールシュートを決めていた。
そこでスミスはウィーズリー兄妹が友人として入れられたのだと言えなくなって、今度はピークスとクートを非難の対象にした。





「勿論、クートはビーターとして普通の体型とは言えません。
ビーターたるものは普通もっと筋肉が───」





しかしスミスの解説の声も最早聞こえないほど、グリフィンドールのチームはのりに乗っていた。
「ウィーズリーはわが王者」の歌まで響き渡るぐらいだ。

その時マダム・フーチが背中を向けていた時を狙って、ハーパーがハリーに体当たりをかました。
怒鳴り散らすグリフィンドール生を嘲笑うかの如く、ハーパーは素早く飛び去っていく。
その後をハリーが続いた。





「さあ、スリザリンのハーパー、スニッチを見つけたようです!
そうです。間違いなく、ポッターが見ていない何かを見ました!」





ハリーが加速した。
けれどハーパーの方がスニッチに近い。
今や遅しと手を伸ばし……
掴み損ねた。
キャッチしたのはハリーだった。

スニッチを持った手を高々と上げて、ハリーは地上へと向かう。
スタンド席から歓声が沸き起こったが、ハーマイオニーは複雑そうな表情を浮かべていた。

選手達が空中で抱き付き合っている。
その横をジニーは飛んで通り過ぎて、そのまま解説席へ突っ込んだ。
壊れた演台の下でスミスがもがいているのが見えた。
マクゴナガルがカンカンに怒っているが、ジニーは平然としている。

兎に角試合は終わったのだ。
スタンド席から下りていく生徒に混じり、名前とハーマイオニーも階段を下りていく。
ハーマイオニーは更衣室の側でピタリと止まり、迷うようにグリフィンドールのスカーフを捻った。





『二人と話すの。』



「ええ……。他に人がいない方が、二人にも良いと思うし……。」





そう言って暫く更衣室の横で二人は、更衣室から他の選手達が出て行くのを待った。
そしておそらくハリーとロンだけになったであろうタイミングで、二人は更衣室の中へ入った。
思った通り、そこにはハリーとロンしかいない。
ハーマイオニーはハリーを見つめて深く息を吸い込んだ。





「ハリー、お話があるの。
あなた、やってはいけなかったわスラグホーンの言った事を聞いたはずよ。違法だわ。」



「どうするつもりなんだ?僕達を突き出すのか?」
ロンが脅すように近寄った。



「二人とも一体何の話だ?」



「何の話か、あなたにははっきり分かっているはずよ!
朝食の時、ロンのジュースに幸運の薬を入れたでしょう!『フェリックス・フェリシス』よ!」



「入れてない。」



「入れたわ、ハリー。それだから何もかもラッキーだったのよ。スリザリンの選手は欠場するし、ロンは全部セーブするし!」



「僕は入れてない!」




ハリーはニヤリと笑って、ポケットに手を入れた。
取り出したのは「フェリックス・フェリシス」の入った小さな瓶だ。
瓶のコルク栓はしっかり蝋づけしてある。
つまり未開封だ。





「僕が入れたと、ロンに思わせたかったんだ。だから、君達が見ている時を見計らって、入れるフリをした。
ラッキーだと思い込んで、君は全部セーブした。全て君自身がやった事なんだ。」
ハリーは薬をポケットに入れた。



『プラシーボ効果か。』



「僕のかぼちゃジュースには、本当に何も入ってなかったのか?
だけど天気は良かったし……それにベイジープレイ出来なかったし……僕、ほんとのほんとに、幸運薬を盛られなかったの?」





ハリーは首を横に振って答えた。
唖然としたロンは暫く口をポカンと開けて、暫くするとやおらハーマイオニーに向き直った。





「ロンのジュースに、今朝『フェリックス・フェリシス』を入れたでしょう。それだから、ロンは全部セーブしたのよ!どうだ!ハーマイオニー、助けなんかなくったって、僕はゴールを守れるんだ!」



「あなたが出来ないなんて、一度も言ってないわ───ロン、あなただって、薬を入れられたと思ったじゃない!」





箒を担いで更衣室を出て行くロンの背中にハーマイオニーは投げ掛けた。
けれどロンの方からは何の声も返ってこなかった。

静寂が三人を包む。
名前は無表情に、ハリーは「しまった」という顔でハーマイオニーを見た。





「えーと。
じゃ……それじゃ、パーティに行こうか?」



「行けばいいわ!」
ハーマイオニーの目には涙がいっぱい溜まっていた。
「ロンなんて、私、もううんざり。私が一体何をしたって言うの……。」





そう言ってハーマイオニーは駆け出してしまった。
名前は慌てて後を追い掛ける。
角を曲がった時にはしかし、ハーマイオニーの姿は忽然と消えていた。
階段を上がって寮に戻ったのか?
それともどこか別の場所へ向かったのか?
分からないが、名前はグリフィンドールの寮に戻る事にした。

談話室はお祭り騒ぎで混雑しており、この中からハーマイオニーを探すのはかなり困難な事だ。
それでも名前は人の合間を縫うように歩き回り、ハーマイオニーの姿を探した。
そこで見てしまった。
部屋の隅でロンとラベンダー・ブラウンがキスしているのを。
名前は顔がカッと熱くなるのを感じて目を逸らした。
そこにはハリーが立っていた。ちょうど名前の肩を叩こうとして、手が空中で止まっている。





「ハーマイオニーを見付けた?」



『まだ。女子寮に行ったのかな……。』





と、名前が女子寮の方を見上げた時。
ハリーは肖像画の扉が開いて、すぐ閉まったのを見た。
その一瞬、豊かな栗色の髪の毛を見た気がしたのだ。





「ナマエ、こっちだ。」





スラグホーンのクリスマス・パーティに一緒に行きたいと仄めかすロミルダ・ベインを躱し、二人は肖像画の扉を潜る。
廊下には誰もいないように見える。
そこでハリーは教室を探そうと提案した。
鍵のかかっていない最初の教室を開けると、そこにハーマイオニーの姿を発見した。
ハーマイオニーの頭上には、ハーマイオニーが創り出したであろう黄色い小鳥達が飛び交っている。





「ああ、ハリー、ナマエ、こんばんは。
ちょっと練習していたの。」



『上手。』



「うん……小鳥達……あの……とってもいいよ……。」





ハーマイオニーは虚ろな表情で床を見詰めていた。
おそらく床を見詰めているというよりも、考え事をしているという方が正しいのだろう。





「ロンは、お祝いを楽しんでるみたいね。」



『……。』
名前の頬が赤くなった。



ハリーは名前を肘で小突いた。
「あー……そうかい?」



「ロンを見なかったようなふりはしないで。
あの人、特に隠していた様子は───」





背後でドアが開く音が聞こえた。
振り向くと、ロンが笑いながらラベンダーの手を引いて教室へ入ってきたところだった。





「あっ。」



「あらっ!」





三人に気が付いてロンは固まり、ラベンダーはクスクス笑いながら教室から出て行った。
沈黙の中、ハーマイオニーはじっとロンを見詰めた。
ロンはハーマイオニーを見ようとしない。
どこか偉ぶり、照れ臭そうな態度で、ハリーだけを見ていた。





「よう、ハリー!どこに行ったのかと思ったよ。」





座っていた教卓からハーマイオニーが降りた。
まだじっとロンを見詰めている。





「ラベンダーを外に待たせておいちゃいけないわ。
あなたがどこに行ったのかと思うでしょう。」





奇妙なほど落ち着いた声でそう言うと、ハーマイオニーはドアの方へ歩いていく。
ロンはホッと安堵している様子だ。

ドアに立ったハーマイオニーは突如振り向いた。
怒りや悲しみが入り交じる、複雑で、とても激しい表情で、ロンに真っ直ぐ杖を向けて。





「オパグノ!」





油断していたロンに黄色い小鳥達が襲い掛かる。
情けない悲鳴を上げてロンは両手で顔を覆った。
しかし小鳥達は露出している肌に狙いを定めて的確に攻撃している。





「こぃつらを追っ払え!」





早口だったのでよく聞き取れなかったが、おそらくそのような言葉を口走ったのだろう。
ハーマイオニーはロンをギンと睨み付け、乱暴にドアを開けて出て行った。
ドアが閉まる瞬間、すすり泣く声が聞こえた。

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