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その声の主が誰なのか。
記憶から引っ張り出す前に、名前は反射的に振り返った。

すぐそこにルシウス・マルフォイが立っていた。
そしていつの間にか周囲にはフードを被った黒ずくめの人間が、ローブの下から杖を突き出し、名前達の周りを取り囲んでいた。





「私に渡すのだ、ポッター。」





ルシウス・マルフォイがそう繰り返す。
突き出された手が仄暗い辺りに青白く浮かんで見える。





「私に。」



「シリウスはどこにいるんだ?」





ハリーが聞くと、取り囲んでいた死喰い人が数人笑った。
それからハリーの左側に立つ数人の中から、冷たい女の声が、我が身のように喜びに震えた声でこう言った。





「闇の帝王は常にご存知だ!」



「常に。」





ルシウス・マルフォイが繰り返し唱えた。
依然として手を突き出している。




「さあ、予言を私に渡すのだ。ポッター。」



「シリウスがどこにいるか知りたいんだ!」



「シリウスがどこにいるか知りたいんだ!」





左側の女がハリーの声色を遣う。
それを合図にしたかのように、その女と仲間の死喰い人がじりじりと距離を詰めてきた。
最早数十センチの距離だ。





「お前達が捕まえているんだろう。
シリウスはここにいる。僕には分かっている。」



「ちいちゃな赤ん坊が怖いよーって起っきして、夢が本物だって思いまちた。」
女は赤ちゃん声で言った。



すぐ側でロンが微かに身動きするのを感じたらしい。
「何にもするな。
まだだ───」
ハリーは声を低めてそう言った。



ハリーの声を真似た女が狂ったように笑った。
「聞いたか?聞いたかい? 私らと戦うつもりかね。他の子に指令を出してるよ!」



「ああ、ベラトリックス、君は私ほどにはポッターを知らないのだ。
英雄気取りが大きな弱みでね。闇の帝王はその事をよくご存知だ。さあ、ポッター、予言を私に渡すのだ。」



「シリウスがここにいる事は分かっている。
お前達が捕らえた事を知っているんだ!」





ルシウス・マルフォイは女をベラトリックスと呼んだ。
いつだったか「日刊予言者新聞」に掲載されていた名前だ。名前は詳しくは読んでいなかったが───。
ネビルの両親を拷問し、廃人にまで追い詰めた張本人である。
傍らでネビルが身じろぎしたように見えた。

ハリーの言葉を受けて何人かの死喰い人が笑った。





「現実と夢との違いが分かっても良い頃だな、ポッター。
さあ、予言を渡せ。さもないと我々は杖を使う事になるぞ。」



「使うなら使え。」





ハリーが杖を構えた。
それを合図に、名前達の杖も死喰い人達へ向けられる。

けれども死喰い人の誰も、杖は向けれども攻撃はしてこない。





「予言を渡せ。そうすれば誰も傷つかぬ。」



「ああ、そうだとも!
これを渡せば───予言、とか言ったな?そうすればお前は、僕達を黙って無事に家に帰してくれるって?」



「アクシオ、予───」



「プロテゴ!護れ!」



「おー、やるじゃないの、ちっちゃなベビー・ポッターちゃん。
いいでしょう。それなら───」



「言ったはずだ。やめろ!
もしもあれを壊したら───!」





どうもハリーの持つガラス球は彼ら死喰い人達にとって余程大事なものらしい。

ルシウス・マルフォイがガラス球を予言と呼び、棚に貼り付けられたラベルには闇の帝王とも書かれていた。
ヴォルデモートが欲する予言だという事は一目瞭然だ。

死喰い人達の中から女が進み出てフードを脱いだ。
くしゃくしゃの黒髪の下から落ち窪んだ目が覗く。





「もう少し説得が必要なんだね?
いいでしょう───一番小さいのを捕まえろ。
小娘を拷問するのを、こやつに見物させるのだ。私がやる。」





皆は一斉にジニーの周りを固める。
ハリーが横に一歩ずれて、ジニーの前に立った。





「僕達の誰かを襲えば、これを壊すことになるぞ。
手ぶらで帰れば、お前達のご主人様はあまり喜ばないだろう?」





どうやら図星のようだ。ベラトリックスは何も言わず、ピクリとも動かない。
落ち窪んだ目をぎらつかせ、薄い唇を舐めた。





「それで?
一体これは、何の予言なんだ?」



ベラトリックス笑みが消えた。
「何の予言、だって?
冗談だろう。ハリー・ポッター。」



「いいや、冗談じゃない。
何でヴォルデモートが欲しがるんだ?」



「不敵にもあの方のお名前を口にするか?」



「ああ。
ああ、僕は平気で言える。ヴォル───」



「黙れ!
お前の汚らわしい唇で、あの方のお名前を口にするでない。混血の舌で、その名を穢すでない。お前はよくも───」



「あいつも混血だ。知っているのか?
そうだとも、ヴォルデモートがだ。あいつの母親は魔女だったけど、父親はマグルだった───それとも、お前達には、自分が純血だと 言い続けていたのか?」



「麻痺───」



「やめろ!」





赤い閃光がベラトリックスの杖先から放たれた。
けれどマルフォイが素早く対応した。
ハリーに当たるはずだった呪文はマルフォイの呪文で、ハリーの左に三十センチ程ずれ、名前の顔スレスレ、背後の棚に当たり、ガラス球が数個砕け散った。
砕け散ったガラス球は名前の足元に落ちて、そこから白い半透明の姿をした、二人の人物が立ち昇る。
一人はヒゲの老人。もう一人は若い女性だ。
二人は何かを語り出したが互いの声に掻き消され、更にマルフォイとベラトリックスの怒鳴り合いによって、言葉は断続的にしか聞き取れなかった。





「……太陽の志の時、一つの新たな……」
ヒゲの老人が言った。



「攻撃するな、予言が必要なのだ!」



「こいつは不敵にも───よくも───
平気でそこに───穢れた混血め!」



「予言を手に入れるまで待て!」



「……そしてそのあとには何者も来ない……」
若い女性が言った。





二つの姿が煙のように掻き消えた。

その間にベラトリックスは落ち着いたらしい。まだまだ息は荒かったが。
マルフォイが油断無くハリーを見ている。
ハリーの後頭部はマルフォイの方へ向いていた。




「まだ話してもらっていないな。僕に渡せと言うこの予言の、どこがそんなに特別なのか。」



「私達に小細工は通じないぞ、ポッター。」



「小細工なんかしてないさ。」



「ダンブルドアは、お前が額にその傷痕を持つ理由が、神秘部の内奥に隠されていると、お前に話していなかったのか?」



「僕が───えっ?
僕の傷痕がどうしたって?」



「あろうことか?」





マルフォイが意地悪く笑った。仕草まで息子のドラコとそっくりだ。
死喰い人の何人かが、またもや示し合わせたように笑った。





「ダンブルドアはお前に一度も話さなかったと?
成る程、ポッター、お前がもっと早く来なかった理由が、それで分かった。闇の帝王は何故なのか訝っておられた───
───その隠し場所を、闇の帝王が夢でお前に教えた時、何故お前が駆けつけてこなかったのかと。闇の帝王は、当然お前が好奇心で、予言の言葉を正確に聞きたがるだろうとお考えだったが……」



「そう考えたのかい?」





足先を踏まれた。意図して強く踏んだ感じだ。
名前は視線だけを巡らせた。
「ハリーが合図したら棚を壊すんだ。」
ロンが殆ど唇を動かさず小さくそう言った。





「それじゃ、あいつは、僕がそれを取りにやってくるよう望んでいたんだな?どうして?」



「どうしてだと?
何故なら、神秘部から予言を取り出す事を許されるのは、ポッター、その予言に関わる者だけだからだ。闇の帝王は、他の者を使って盗ませようとした時に、それに気付かれた。」



「それなら、どうして僕に関する予言を盗もうとしたんだ?」



「二人に関するものだ、ポッター。二人に関する……お前が赤ん坊の時、闇の帝王が何故お前を殺そうとしたのか、不思議に思った事はないのか?」



「誰かがヴォルデモートと僕に関する予言をしたと言うのか?
そしてあいつが僕に来させて、これを取らせたのか?どうして自分自身で来て取らなかった?」



「自分で取る?」
ベラトリックスが心底楽しそうに高笑いした。
「闇の帝王が魔法省に入り込む? 省がおめでたくもあの方のご帰還を無視しているというのに?私の親愛なる従弟のために時間を無駄にしているこの時に、闇祓い達の前に闇の帝王が姿を見せる?」



「それじゃ、あいつはお前達に汚い仕事をやらせてるわけか?
スタージスに盗ませようとしたように───それにボードも?」



「なかなかだな、ポッター、なかなかだ……
しかし帝王はご存知だ。お前が愚か者ではな───」



「今だ!」





一斉に「レダクト!」と呪文が放たれた。
奇跡的にも呪文はそれぞれ別々の棚に向けられ、呪文を受けた棚は爆発を起こしたかのように爆煙を上げる。
呪文による衝撃で高く切り立つ棚はバランスを崩し、何百というガラス球を床へ落としながらドミノ倒しに倒れていく。

埃が舞い上がった。まるで豪雨のようだった。

何百というガラス球が爆竹のように爆ぜていく。
何百という予言が煙のように浮き上がる。
しかしそんなもの悠長に観察している暇は無い。





「逃げろ!」





自らが引き起こした惨状に目を引かれながらも、ハリーの叫びにより我に返る。
ハーマイオニーのローブを引っ張って駆け出すハリーを見て、名前も腕で頭を覆いながら一歩を踏み出した。
長身に見合った長い足を持つ名前は、数歩駆けただけで先頭に躍り出てしまう。
走りながら後ろを振り返ると、ハリーが追い付いてきた死喰い人の一人に肘鉄を食らわせたところだった。

片方の手で頭を庇い、片方の手で杖を回す。無事な棚を壊す為だ。
そうしていると一番に九十七列目の端に出てしまい、まだ死喰い人はおろか他の皆の姿すらない。
足は止めず、だが少し緩め、振り返りながら来る時に潜った扉を目指した。

釣鐘型のクリスタルが煌めく部屋の扉を潜る。
あの視界の悪い惨状で定かではなかったが、やはり名前が一番乗りだった。
数秒遅れてハリー、ハーマイオニー、ネビルが部屋へ飛び込んでくる。
素早くハリーが扉を閉めた。





「コロポータス!扉よくっつけ!」





杖先を扉に向けたハーマイオニーが唱えた。
どうやら扉は密閉されたようだ。





「皆───皆はどこだ?」
ハリーが名前に尋ねた。



名前は首を左右に振る。
『入った時は俺一人だった。』



「きっと道を間違えたんだわ!」



「聞いて!」





密閉された扉の向こうへ、ネビルは注意を向ける。
緊張で静まり返る辺りに、扉の向こうから足音や怒鳴り声が響いてきた。
ルシウス・マルフォイが矢継ぎ早に捲し立てる声が聞こえてくる。





「ノットは放っておけ。放っておけと言っているのだ!───闇の帝王にとっては、そんな怪我など、予言を失う事に比べればどうでもいい事だ。ジャグソン、こっちに戻れ、組織を立て直す!二人組になって探すのだ。いいか、忘れるな。予言を手に入れるまではポッターに手荒なまねはするな。他のやつらは、必要なら殺せ───ベラトリックス、ロドルファス、左へ行け。クラッブ、ラバスタン、右だ───ジャグソン、ドロホフ、正面の扉だ───マクネアとエイブリーはこっちから───ルックウッド、あっちだ───マクシベール、私と一緒に来い!」





「どうしましょう?」



「そうだな、兎に角、このまま突っ立って、連中に見付かるのを待つという手は無い。
扉から離れよう。」





マルフォイが作った二人組は必ずこの部屋も探すだろう。
そうなる前にこの部屋を抜けるべきだ。───離れ離れになった仲間の事が気には掛かるが。
名前達四人は静かに扉から離れて、出来る限り足音を立てないように走った。

机と机の間を駆け抜ける。
緊張のせいで胸がドキドキと脈打つのを感じる。まるで頭の中で響いているようだった。
胸のドキドキなのかそれとも、ありとあらゆる時計のチクタク音なのか、分からなくなるくらいだ。

やはり一番乗りの名前が扉に辿り着いて開けたと同時、背後で大きな音が聞こえた。
ハーマイオニーが密閉した扉に、何かがぶつかったような音だ。





「退いてろ!
アロホモーラ!」





扉が開いたようだ。死喰い人らの忙しない足音が部屋に響き渡る。
近くにあった柱時計の影に、名前は身を潜めた。
そこからそっと周りを覗き込むと、ハリー、ハーマイオニー、ネビルの三人がサッと机の下に飛び込むのが見える。
そして部屋の奥のクリスタル付近には二人の死喰い人がおり、足早に此方ヘ近付いて来ている。名前四人が隠れたのはタッチの差だった。





「やつらは真っ直ぐホールに走り抜けたかもしれん。」
男の声だ。


「机の下を調べろ。」
此方も男の声だ。




死喰い人らが屈んで一つ一つ机の下を確認し始めた。
このままではいずれハリー達が見つかってしまう。
そうならない為には、ここで死喰い人らをノックアウトするしかない。
そしてこれは先手必勝が成功への鍵だ。何故なら名前達と死喰い人達の経験は天地の差だからだ。
いくら倍の数でアタックしようと、やつらは手練である。

柱時計の影で杖を握り直す。
呼吸を整え、柱時計の影から杖を突き出す。





『「麻痺せよ!」』





呪文の声が重なった。ハリーの声だ。
同じ死喰い人に呪文が当たり、二人分の呪文を受けた死喰い人は吹き飛んで床置き時計にぶつかって、時計と一緒に倒れた。

二人目の死喰い人は素早く名前とハリーの位置を確認した。
二発目を食らわそうと唱えたハリーの呪文を躱し、狙いを定めようと今や机の下から這い出すハーマイオニーに、杖先を向けた。





「アバダ───」





ハリーは床を蹴って死喰い人の足に飛び付いた。
死喰い人は転倒し、あらぬ方向へ照準がずれる。

名前は柱時計の影から飛び出し、ハーマイオニーの方へ向かって走る。
大急ぎでネビルが机ごと体を起こし、ハリーと死喰い人の方向へ杖を向けた。





「エクスペリアームス!」





入り乱れる二人の杖が両方手を離れた。
杖は予言の球がある部屋の、入口の方向にポーンと飛んでいく。
入り乱れる暇など無い、二人は急いで立ち上がり、飛んでいった杖を追い掛けた。
不幸な事に死喰い人が先頭で、次にハリー、最後がネビルだ。





「ハリー、どいて!」





ネビルはどうやら先程の失敗を取り返そうとしているらしい。
ハリーは横に飛び、それを確認したネビルが再び狙い定める。
名前はハーマイオニーを立たせて、近くにあった時計を手に取った。





「麻痺せよ!」





呪文はまたも外れた。
死喰い人の右肩辺りを通り過ぎ壁際の、砂時計が並ぶガラス戸棚に当たったのだ。
ガラスが飛び散り、衝撃で戸棚が床に倒れ、床の上でまたもガラスが飛び散る。

しかし次の瞬間、ガラス戸棚は元通りになって壁際に戻った。
そしてまた倒れ、また砕け散る。

悠長に観察などしている場合ではない。
死喰い人が自身の杖を拾った。
死喰い人は振り向き、ハリーは机の陰に身を潜めた。

名前は時計を振りかぶる。
死喰い人のフードがずれて、ちょうど目を塞いでいた。
ハーマイオニーは杖を構える。
死喰い人は空いている手でフードを脱ぎ捨てた。





「麻───」



「麻痺せよ!」



パリーン。
ハーマイオニーの呪文は死喰い人の胸の真ん中を捉え、何を考え投げたのかは分からないが名前の投げた時計は顔面にぶち当たった。
(呪文同士がぶつかって相殺されるのを恐れたのかもしれない)
(しかし時計に呪文が当たれば同じ事だが)

死喰い人の手から杖が離れた。仰向けにクリスタルの方へ倒れる。





「アクシオ! 杖よ来い!」
ハーマイオニーがハリーの杖を呼び寄せ、それをハリーへ投げた。



「ありがとう。
よし、ここを出───」



「見て!」





ネビルが悲鳴のような声をあげた。
その目はクリスタルの方を見詰めている。
四人は杖を構え直してクリスタルの方を注意深く見た。

死喰い人はクリスタルの載った机に倒れており、頭だけをクリスタルの中へ突っ込んで動かない。
それでも注意深く見ていると───数秒の出来事だったが───死喰い人の頭の変化が起きた。

頭が小さくなっていく。
髪も無精ひげも皮膚の中に引っ込み、高かった鼻は縮み、頭蓋骨は丸くなり、フワフワした産毛に覆われる。
赤ん坊の頭だった。
意識を取り戻したのか、立ち上がろうとする死喰い人の筋肉質な首に、赤ん坊の頭が載っている。

四人が釘付けになっている内にも、今度は頭が膨らみ始め、元の大きさに戻り、体毛が生えてきた。





「『時』だわ。
『時』なんだわ……。」





眠気を振り払うように死喰い人が、元々の頭を振った。
けれども頭がまた縮みだし、また赤ん坊に戻っていく。

直後近くの部屋で叫ぶ声が聞こえ、衝撃音と悲鳴が鈍く響き渡った。





「ロン?」
目を背け、ハリーは大声で声を掛けた。
「ジニー?ルーナ?」



「ハリー!」
ハーマイオニーが悲鳴のような声をあげた。





偶然か死喰い人の努力の賜物か、クリスタルから頭が離れた。
しかし不幸にも頭は赤ん坊の姿だった。
死喰い人は大声で泣き喚き、筋肉質な太い腕を振り回す。

それが危うくハリーに当たりそうになったが、ハリーは何とか躱した。
思わずだろうかハリーが杖を構えると、ハーマイオニーがその腕を押さえた。





「赤ちゃんを傷つけちゃダメ!」





果たして赤ん坊と呼ぶべきか。考えている暇は無い。
ガラス球の部屋の方から足音が聞こえてきた。しかも二人以上、忙しなく此方へ駆けて来る音だ。
どうやらハリーの大声が効いたらしい。自分達の居所を知らせてしまったのだ。





「来るんだ!」





ハリーの言葉に皆が従った。
やはりどうしても一番槍になってしまう名前を先頭に扉まで走る。
扉は開け放したままだ。





『向こうから来ている。』



「左だ!」





開け放したままの扉の向こう、此方へやって来る死喰い人を見付けた。
ハリーの素早い判断で進路を変更する。
そこにも扉があり、四人はその部屋に飛び込んだ。

薄暗くて周りに何があるか分からない小さな部屋だ。入った途端、扉を閉めた。
ハーマイオニーが扉へ杖先を向ける。




「コロ───」
二人の死喰い人が突入してきた。



「インペディメン夕! 」



『プロテゴ。』





死喰い人の侵入の方が早かった。
幸運にも呪文を避けた名前を残して、他の三人は仰向けに吹っ飛んだ。
三人の安否が気になるが、死喰い人から目を離すなど隙を作る行為は出来無い。
お互い杖を構えたまま、二人の死喰い人はじっと名前を見詰める。





「捕まえたぞ!
この場所は───」



「シレンシオ! 」





呪文を放つかと思われたが死喰い人の一人は、勝利を確信したらしく叫んで仲間に居場所を教えようとした。
けれどもハーマイオニーの呪文の方が早かった。
フードの隙間から覗く口元は動いているのに、何の音も出てこない。
もう一人の死喰い人が声の出なくなった死喰い人を押し退けた。





『ステューピファイ。』



「ペトリフィカス トタルス! 」





殆ど同時に放たれた呪文は二つとも命中した。
名前と、名前の背後からハリーが放ったものだ。
ごった煮になった呪文が悪い方にどう変化するかと思われたが、死喰い人は気絶して石化したらしく、倒れて動かなくなった。

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