08.-1


ホグズミードから帰った夜。
ベッドの四方を囲むカーテンを引いて、いざ眠ろうとベッドへ入ると、ネスが頬を突いた。





『……』





痛くは無いがくすぐったい。
閉じていた瞼を再び開き、暗がりの中ネスを見詰める。
ネスは枕元に立って此方を覗き込んでいる。

そしてベッドの端へ移動し、そこからまた此方を見詰める。
名前が上半身を起こすと、今度はベッドの下へ移動する。
明らかな誘導だ。
名前はベッドの下を覗き込んだ。

トランクの上にネスがいる。
名前を見詰め、それから嘴でトランクをコンコン叩いた。
文字盤で話がしたい時の合図だ。





『……』





極力静かにトランクを開き、中から文字盤を引っ張り出す。
杖を掴み、二人で布団を被った。
杖先に灯りを灯す。
ネスは文字を指し示す道具も使わず、嘴でアルファベットを綴る。





───ついさっき、アンブリッジの所へウィリー・ウィダーシンが来て、君達が「ホッグズ・ヘッド」で会合をしていたと報告しました。



『……』



───包帯を巻いた男です。見掛けませんでしたか。



『……』
頷く。



───ウィリー・ウィダーシンはこの夏、逆流トイレ事件を仕組んだ件で逮捕されました。しかし起訴されずに済みそうです。



『……』




───この件で君に対するアンブリッジの睨みが厳しくなった。気を付けてください。彼女は必ず何らかの手を打つでしょう。



『(ありがとうございます。クィレルさんもお気を付けて。)』





会合を終えた当日の夜にこの報告だ。
早速暗雲が立ち込めている。
情報をハリー達と共有して警戒を強めるなり、対策を立てるなり出来ればいいのだが、したくても出来ない。
何せ情報源がクィレルである。

心のわだかまりが晴れないまま日曜日を迎える。
今日も快晴だ。
四人は談話室を抜け出して、湖の畔へ足を運んだ。
大きなブナの木の下で各自作業をしようという目論見である。
尻の下にドングリが当たるのは少々気にはなるが。
ハリーとロンは宿題、ハーマイオニーは編み物。名前は読書を、それぞれ進めた。





「そういえば、ナマエ。セドリックの話って何だったの?」





編み棒の様子を気にしつつも、ハーマイオニーは問い掛けた。
名前は本から顔を上げる。

そよ風が葉を揺らし、その度に木漏れ日が動いて、金属製の編み棒を光らせる。





『夢の事。』



「予知夢の件?」



『うん。何か気になる事や変化があれば話して欲しいって。力になりたいって、そう仰った。』



「いいアドバイスね。」



「うん。僕達も全く同じ考えだよ。」



「ナマエは一人でぜーんぶ片付けちゃうからなあ。」



『……
そういえば、ハリー。馬の事だけれど。』





目を湖に向けて話している。
露骨な話題逸しだった。





『馬……みたいな生き物……馬車馬の……』



「ああ、」
思い出したと言うように頷いた。



『多分、セストラル。』



「セスト……なに?」



「セストラルよ、ハリー。死を見た事がある人だけが見える生き物。馬車って何の話?」



『……ホグワーツ特急から学校へ移動する時に、馬のいない馬車に乗った。』



「ああ。それって、ハリーが僕に確認したやつ。」



『うん。』



「成る程ね。それなら見えないのも納得だわ。」



『そういう事だから。心配しなくて大丈夫。』





そう言って名前は読書へ戻る。

一つ不安が解消されてハリーは安堵していた。
それに前日会合がうまくいった事で気持ちが満たされている。

久し振りの穏やかな休日だ。
こんな日に夢の話を持ち出して、良い気分を壊す必要は無いだろう。


















翌朝。
いつものように日課を終えて大広間へ入る。
入ってすぐ目に飛び込んできたのは、忙しなく互いのテーブルを行き来し、何やら緊張した面持ちで話し合う生徒達の姿だった。

グリフィンドールの長テーブルに沿って歩く。
───アンブリッジ……
───掲示板……
───組織の解散……
そんな言葉がポツポツ耳に入ってくる。
ハリー達の姿を見付け、席に着いた。





『おはよう。』



「ナマエ、掲示板を見たか?」





名前が着席するやいなや、挨拶もせず、出し抜けにロンは尋ねた。
名前はロンを見詰め、目をパチパチさせた。
それから首を横に振る。





『見ていない。』



「アンブリッジのやつが新しい教育令を出した。学生による組織は解散。決まりを破れば退学処分。
誰かが土曜の事をチクったんだ。
そうじゃなきゃこんなタイミングで出てくるもんか。」



「あのね、言ったでしょう、ロン。私は皆が署名した羊皮紙に呪いをかけたの。誰かがアンブリッジに告げ口したら、誰がそうしたか確実に分かるの。」



「ニキビだっけ。パッと見た所、それらしいやつはいないな。」



「そんな可愛らしいものじゃないけれど。まあ、そうよ。」



「ナマエ、皆の顔をよーく見ておくんだぜ。」



「よく見なくたって分かるわよ。」





朝食を終えて大広間を出る。
最初の授業は「魔法史」だ。
教室へ向けて四人で歩いていると、廊下を歩く生徒の群れを掻き分けて、誰かが真っ直ぐ此方へ走ってくるのが見えた。





「ハリー!ロン!」





背の高い黒人の女子生徒。アンジェリーナだ。
四人は足を止めてアンジェリーナを待った。





「大丈夫だよ。
それでも僕達やるから───」



「これにクィディッチも含まれてる事を知ってた?
グリフィンドール・チームを再編成する許可を申請しないといけない。」



「えーっ?」
ハリーは目を見開いて驚いた。
大方秘密の特訓の話だろうと思っていたのだろう。



「そりゃないぜ。」
ロンも驚愕している。



「掲示を読んだだろ? チームも含まれてる!
だから、いいかい、ハリー……!もう一回だけ言うよ……お願い、お願いだから、アンブリッジに二度と癇癪を起こさないで。
じゃないと、あいつ、もう私達にプレイさせないかもしれない!」



「分かった、分かったよ。
心配しないで。行儀よくするから……。」





泣きそうなアンジェリーナを宥めつつ見送ってから、四人は再び歩き始めた。
アンブリッジの教育令がどんなに深刻な打撃を与えたか、少しずつ、けれど確実に状況を理解していく。
重たい空気を漂わせ、ロンは暗い声で言った。





「アンブリッジ、きっと『魔法史』にいるぜ……。
まだビンズの査察をしてないしな……絶対あそこに来てるぜ……。」





しかし教室にはビンズしかいなかった。
いつものように授業の準備をしている。

そうなるとハリーとロンは相変わらず講義をそっちのけで、頭を寄せ合い羊皮紙に落書きしていた。
名前は説明を聞くのとノートに書き写すのに集中しているようだったが、ハーマイオニーに脇腹を突かれて顔を向けた。
ハリーとロンへ注意するのに睨んだり小突いたりするのは日常茶飯事だったが、それを名前が受ける事は滅多に無い。





『何。』



「なんだよ?」





ハリーも突かれたらしい。しかも多分、名前より容赦無く。
脇腹を擦りながら、不機嫌にハーマイオニーを見ていた。

ハーマイオニーが窓を指差した。
二人は揃ってそちらを見る。
ヘドウィグとネスの二羽が、窓ガラス越しに此方を見詰め返した。





「ああ、私、あの二羽大好き。とってもきれいよね。」





ラベンダーがパーバティに話し掛けるのが聞こえた。
他の生徒も大勢、窓辺にいる二羽を指差している。

チラリ。名前とハリーは互いの目を見交わし、それから教壇に浮かぶビンズの様子を窺った。
生徒の異変に気付いているのかいないのか、ビンズは単調な講義を続けている。

ハリーは名前に掌を向けて「待て」のポーズを取り、「任せろ」とばかりにコクリと頷いた。
静かに席を立ち、中腰で窓際へ向かう。
音を立てないよう慎重な手付きで窓を開けた。





『……』



「……」



「……」





三人はハリーとビンズを交互に気にして見守る。
元通り窓を閉めて、ハリーは左右の肩にヘドウィグとネスをそれぞれ載せて、ビンズに目を走らせながら席へ戻ってきた。
ネスを名前へ渡し、ヘドウィグを自身の膝へ移す。脚に結われ手紙を外しにかかった。

一方ネスは手紙も小包も何も持っていない。
一体何故ヘドウィグと一緒に現れたのか。





「怪我してる!」





ハリーの囁きに他の三人が頭を寄せた。
一斉に勢い良く寄せ合ったので、互いに頭突きをかましたほどだ。





「ほら───
翼がなんか変だ───」





少々クラクラする頭で、しかしハリーは問題の翼へ触れた。
途端にヘドウィグは小さく飛び上がり、威嚇するかのように羽毛を逆立てた。
けれど威嚇ではない。小刻みに震えている。
いつもは整え揃えられた羽が今は見る影もない。
問題の翼は有り得ない角度に伸びている。

ネスは怪我を負ったヘドウィグに付き添って来たのだ。
ハリーは名前の膝の上にいるネスへ、お礼代わりに撫でた。





「ビンズ先生。
気分が悪いんです。」





皆がハリーを振り返って見た。
何を言ったのか理解出来ない、ぼんやりとした表情で、ビンズじっとハリーを凝視した。





「気分が悪い?」



「とっても悪いんです。
僕、医務室に行かないといけないと思います。」



「そう。
そう……そうね。医務室……まあ、では、行きなさい。パーキンズ……」





ビンズがノートへ目を落とし授業を再開するのを見てから、ハリーはヘドウィグを背中に隠して立ち上がり、背中を見せないようにしながら教室を出て行った。

ハリーが戻ってこないまま終業ベルが鳴り響く。
教室を出て行く生徒の群れに加わり、三人(とネス)は外へ出た。





「ヘドウィグの事、どう思う?」



「どうって、心配さ。」



「そうだけど、そういう事じゃないの。」



『人為的なものを懸念しているの。』



「ええ。」



「誰かがヘドウィグを取っ捕まえたってこと?」



「取っ捕まえたかどうかは分からない。でも誰かがヘドウィグの手紙を奪おうとしたのなら、可能性はあるわ。だって……」





不自然に言葉を切って遠くに視線を向けた。
名前とロンもつられるようにそちらを見る。

ハリーが早足で此方へ向かいながら、手紙の封を開けていた。





「ヘドウィグは大丈夫?」



「どこに連れていったんだい?」



「グラブリー-プランクのところだ。そしたら、マクゴナガルに会った……
それでね……
ホグワーツを出入りする通信網は見張られている可能性があるから注意しろって。」





名前、ロン、ハーマイオニーは、顔を見合わせた。
驚くでも不思議がるでもない。
意味ありげなアイコンタクトを見て、ハリーは自分が除け者になった気がしたらしい。
ちょっと顔を顰めた。





「なんだよ?」



「あのね、ちょうどロンに言ってたところなの……
もしかしたら誰かがヘドウィグの手紙を奪おうとしたんじゃないかしら?だって、ヘドウィグはこれまで一度も、飛行中に怪我した事なんか無かったでしょ?」



「それにしても、誰からの手紙だったんだ?」




言いながらロンはハリーの手から手紙を取った。
巻紙を伸ばす横から、ハーマイオニーと名前、肩を掴むネスも覗き込む。





「スナッフルズから。」



「同じ時間、同じ場所? 談話室の暖炉の事か?」



「決まってるじゃない。
誰もこれを読んでなければいいんだけど。」



「だけど、封もしてあるし。
それに、誰かが読んだって、僕達がこの前どこで話したかを知らなければ、この意味が分からないだろ?」



「それはどうかしら。」





始業のベルが鳴り響く。
肩に軽い衝撃を残しネスは飛び立った。





「魔法で巻紙の封をし直すのは、そんなに難しい事じゃないはずよ……
それに、誰かが煙突飛行ネットワークを見張っていたら……
でも、来るなって警告のしようがないわ。だって、それも途中で奪われるかもしれない!」





シリウスは今夜現れるのだ。
大至急解決しなければならない問題だ。
けれど梟も煙突も伝達方法はどれも見張られている。
しかしこのままではシリウスが捕まってしまう。

何か方法が無いか。
四人は思案しながら地下牢教室へ続く石段を下りた。





「ああ、アンブリッジがスリザリンのクィディッチ・チームに、プレイを続けて良いという許可をすぐに出してくれたよ。」





石段を下りきった途端、ドラコ・マルフォイの声が耳に飛び込んできた。
教室の前にドラコが立ち、何やら書類のようなものを靡かせてている。





「今朝一番で先生に申請に行ったんだ。ああ、殆ど右から左さ。つまり、先生は僕の父上をよく知っているし、父上は魔法省に出入り自由なんだ……
グリフィンドールがプレイを続ける許可がもらえるかどうか、見物だねえ。」



「抑えて。
じゃないと、あいつの思うつぼよ。」





ハリーとロンがマルフォイを睨みつけている。
ハーマイオニーに言われずとも二人は我慢しようと努力していた。
拳を固く握り締め、奥歯を噛み締めている。

マルフォイは此方へ素早く目を走らせた。
そして先程よりも大きな声で話を続けた。





「つまり、魔法省への影響力で決まるなら、あいつらはあまり望みがないだろうねえ……
父上が仰るには、魔法省は、アーサー・ウィーズリーを首にする口実を、長年探しているし……
それに、ポッターだが、父上は、魔法省があいつを聖マンゴ病院に送り込むのは、もう時問の問題だって仰るんだ……
どうやら、魔法で頭がいかれちゃった人の特別病棟があるらしいよ。」





マルフォイは口をぽっかり開けて白目を剥いた。
悪質な物真似にクラッブとゴイル、パンジー・パーキンソンが大喜びで囃し立てる。

ハリーが一歩、二歩。前に進み出た。
それはハリーの意思ではない。
背後から現れたネビルに弾き飛ばされたのだ。
ネビルは謝りもせず、そもそもぶつかった事にも気付いていないようで、マルフォイを目指し突撃していく。





「ネビル、やめろ!」





ネビルの行動にいち早く反応したのはハリーだった。
駆け出して手を伸ばし、ネビルのローブの背中を掴んだ。
それでもネビルは止まらない。
手も足も振り回し、兎に角マルフォイを傷付けてやりたいようだった。

ネビルの反逆に対して、マルフォイの余裕綽々たる態度は鳴りを潜めた。
顔を強張らせ、身を引いたのだ。
驚いたのはマルフォイだけではない。
居合わせた殆どの者が立ち竦んでいた。





「手伝ってくれ!」





ロンと名前が慌てて向かった。
クラッブとゴイルがマルフォイの前に進み出た。

ハリーがネビルの首を捕え、引き摺ってスリザリン生から遠ざける。
駆け付けたロンがネビルの両腕を掴み、名前は背後から胴に腕を回したが、ネビルの後頭部が名前の顔面にクリーンヒットした。
それでも気丈なもので手を離さず、三人がかりでグリフィンドールの列まで引っ張って戻した。

ハリーが首を掴むせいか。怒りのせいか。
ネビルの顔は真っ赤だった。
未だ興奮状態で何事か口走っている。





「おかしく……ない……マンゴ……やっつける……あいつめ…」





前触れ無く地下牢教室の戸が開いた。
スネイプが立っている。
眉を顰めてグリフィンドール生を見渡し、四人の所でピタリと止まった。





「ポッター、ウィーズリー、ミョウジ、ロングボトム。喧嘩か?」





スネイプの登場で有り難い事に、ネビルは多少落ち着きを取り戻してくれた。
だがこの状況は非常にまずい。
反省が見受けられないから行動で表わせと注意されていたのに、これではますます呆れられてしまう。





「グリフィンドール、十点減点。ポッター、ロングボトムを放せ。さもないと罰則だ。ミョウジ、お前は鼻血を拭いてから入れ。我輩の教室を汚されては敵わん。
全員、中へ。」





一息で言い切って、スネイプは教室へ引っ込んだ。
とりあえずネビルを開放する。
鼻の下に触れて見ると、確かに血が垂れていた。

息も切れ切れでネビルはハリーを睨んだ。
ハリーはネビルの鞄を拾い上げ、差し出す。





「止めないわけにはいかなかったんだ。
クラッブとゴイルが、君を八つ裂きにしてただろう。」





言い返す言葉が見当たらなかったのだろう。
ネビルは黙ってハリーを睨み、次に心なしか申し訳無さそうに名前を見た。
そしてハリーの手から鞄を毟り取って、地下牢教室へ入っていった。





「驚き、桃の木。」



『……山椒の木。』



「一体、あれは、何だったんだ?」





鼻血を垂れながらもロンのおふざけに相槌を打つ余裕はあるらしい。
ハリーはノーコメント。
ハーマイオニーは呆れた目で二人を見た。

ハリー、ロン、ハーマイオニー、ハンカチで鼻を押さえた名前の四人組みは、いつもの通り後ろの席に座る。
鞄から羊皮紙と羽根ペン、「薬草ときのこ千種」を取り出して、テーブルの上へ並べた。

周囲の生徒はネビルの行動について小声で話し合っていたが、スネイプが大きな音を立てて戸を閉めると、身を飛び上がらせて静かになった。





「気付いたであろうが、今日は客人が見えている。」





言って、スネイプは地下牢教室の片隅を示した。
薄暗い中、アンブリッジのピンク色が浮いて見える。
膝にはお決まりのクリップボードだ。

ハリーが眉をちょっと持ち上げた。
ハリーにとって最悪な先生が二人。
どちらを応援すべきか甲乙つけ難い。





「本日は『強化薬』を続ける。前回の授業で諸君が作った混合液はそのままになっているが、正しく調合されていれば、この週末に熟成しているはずである。
説明は、」
杖を振る。
「黒板にある。取りかかれ。」





三十分程だろうか。
授業が始まってからアンブリッジはひたすらメモを取り続けていた。
その頃には名前の鼻血は止まっていたので、大鍋に誤って余計な材料を追加してしまう事態は避けられた。





「ハリー、サラマンダーの血液よ!ざくろ液じゃないでしょ!」



「成る程。」




ハーマイオニーがハリーの手首を掴んで押し止める。
間違った材料を入れそうになるのは今回で三度目だ。
アンブリッジとスネイプの動向へ意識を集中するあまり、魔法薬の方は全く身が入らない。
材料の量や混ぜ方、タイミング、どれもいい加減だ。
ハーマイオニーを挟んで名前もハラハラと落ち着きが無い。
ハリーは手に取った瓶を元に戻しながらも、視線は隅の方へ固定されたままだ。





「おっ。」





ハリーが呟いた。
本当なら目を離すのはよろしく無いが、一瞬だけ見てみると、アンブリッジが立ち上がっていた。
すぐに大鍋へ視線を戻す。
間隔の短い足音が素早く移動していく。
多分、スネイプの所へ向かっていったのだろう。





「まあ、このクラスは、この学年にしてはかなり進んでいますわね。」





アンブリッジが話し掛けたのが聞こえた。
甲高い声は大鍋をグツグツ煮込む音に掻き消されず、おそらく、この教室にいる者全ての耳に届いた事だろう。





「でも、『強化薬』のような薬をこの子達に教えるのは、いかがなものかしら。
魔法省は、この薬を教材から外したほうがよいと考えると思いますね。
さてと……あなたはホグワーツでどのぐらい教えていますか?」



「十四年。」





スネイプVSアンブリッジ。
素知らぬ顔で作業しているが、多分、皆が聞き耳を立てている。

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