05.-2


ホグワーツ、グリフィンドール寮、ロナルド・ウィーズリーへ



親愛なるロン
たった今、君がホグワーツの監督生になったと聞かされた。
(しかも魔法大臣から直々にだ。大臣は君の新しい先生であるアンブリッジ先生から聞いた)。

この知らせは僕にとって嬉しい驚きだった。
まずはお祝いを言わなければならない。
正直言うと、君が僕の足跡を追うのではなく、いわば「フレッド・ジョージ路線」を辿るのではないかと、僕は常に危惧していた。
だから、君が権威をバカにする事をやめ、きちんとした責任を負う事を決意したと聞いたときの僕の気持は、君にも分かるだろう。

しかし、ロン、僕はお祝い以上の事を君に言いたい。
忠告したいのだ。
だからこうして、通常の朝の便ではなく、夜に手紙を送っている。
この手紙は、詮索好きな目の届かないところで、気まずい質問を受けないように読んでほしい。

魔法大臣が、君が監督生だと知らせてくれた時に、ふと漏らした事から推測すると、君は未だにハリー・ポッターと親密らしい。そして、ナマエ・ミョウジとも。
ロン、君に言いたいのは、あの少年達と付き合い続ける事ほど、君のバッジを失う危険性を高めるものは無いという事だ。
そう、君はこんな事を聞いてきっと驚くだろう───君は間違いなく、ポッターはいつでもダンブルドアのお気に入りだった、と言うだろう───しかし、僕はどうしても君に言わなければならない義務がある。
ダンブルドアがホグワーツを取り仕切るのも、もうそう長くはないかもしれない。
重要人物達は、ポッターの行動について、全く違った意見を───そして恐らく、より正確な意見を持っている。
今はこれ以上言うまい。
しかし、明日の「日刊予言者新聞」を読めば、風向きがどの方向なのかが分かるだろう───記事に僕の名前が見付かるかもしれない!

真面目な話、君はポッターとミョウジ、あの二人と同類扱いされてはならない。
そんな事になれば、君の将来にとって大きな痛手だ。
僕は卒業後の事も含めて言っているのだ。
我々の父親がハリーの裁判に付き添っていた事から君も承知の通り、ポッターはこの夏、ウィゼンガモット最高裁の大法廷で懲戒尋問を受け、結果はあまり芳しくなかった。
僕の見るところ、単に手続き的な事で放免になった。
僕が話をした人の多くは、未だにハリーが有罪だと確信している。
前科の無いミョウジならばまだ良いかもしれないが、まあ時間の問題だろう。彼は現実的ではない。
彼の言動が将来的にどのような結果をもたらすか、それを踏まえて考えてみて欲しい。

二人との繋がりを断ち切る事を、君は恐れるかもしれない───何しろポッターもミョウジも情緒不安定で、事によったら暴力を振るうかもしれない───しかし、それが少しでも心配なら、その他君を困らせるような二人の挙動に気付いたら、ドローレス・アンブリッジに話すように強く勧める。
本当に感じのいい人で、喜んで君にアドバイスするはずだ。

この事に関連して、僕からもう一つ忠告がある。
先程ちょっと触れた事だが、ホグワーツでダンブルドア体制は間もなく終るだろう。
ロン、君が忠誠を誓うのは、ダンブルドアではなく、学校と魔法省なのだ。
アンブリッジ先生はホグワーツで、魔法省が切に願っている必要な改革をもたらす努力をしていらっしゃるのに、 これまで教職員から殆ど協力を得られていないと聞いて、僕は非常に残念に思う。
(尤も来週からはアンブリッジ先生がやりやすくなるはずだ───これも明日の「日刊予言者新聞」を読んでみたまえ!僕からはこれだけ言っておこう───今現在アンブリッジ先生に進んで協力する姿勢を見せた生徒は、二年後に首席になる可能性が非常に高い!)。

夏の間、君に会う機会が少なかったのは残念だ。
親を批判するのは苦しい。しかし、両親がダンブルドアを取り巻く危険な輩と交わっている限り、一つ屋根の下に住む事は、残念だが僕には出来ない。
(母さんに手紙を書く事があったら知らせてやって欲しいのだが、スタージス・ポドモアとかいう、ダンブルドアの仲間が、魔法省に侵入した科で最近アズカバンに送られた。両親も、これで、自分達が付き合っている連中がつまらない小悪党だという事に目を開かせられるかもしれない)。
僕は、そんな連中と交わっているという汚名から逃れる事が出来て幸運だった───
魔法大臣は僕にこの上なく目をかけてくれる───
ロン、家族の絆に目が曇り、君までが両親の間違った信念や行動に染まる事が無いように望んでいる。
僕は、あの二人もやがて、自らの大変な間違いに気付く事を切に願っている。
その時は勿論、僕は二人の十分な謝罪を受け入れる用意がある。

僕の言った事を慎重によく考えてほしい。
特にハリー・ポッターとナマエ・ミョウジについての部分を。
もう一度、監督生就任おめでとう。
君の兄、パーシー





揃って読み終えたらしい。
殆ど同時に名前とハリーは顔を上げた。
そして、ロンを見た。
眉を八の字に寄せて、唇はへの字にひん曲がっている。
気まずいようにも怒っているようにも見える表情だ。





「さあ。」





ヒョイと肩を上げてハリーは、気さくに笑って見せた。





「もし君が───
えーと───
何だっけ?」





名前の手に開かれたままの手紙を覗き込む。





「ああ、そうそう───
僕との『繋がりを断ち切る』つもりでも、僕は暴力を振るわないと誓うよ。」



『俺も約束する。』



「返してくれ。」





ロンが手を突き出した。
手紙を畳もうとした手を止めて、名前はロンに手紙を渡す。
受け取るとロンは、手紙を躊躇無く縦に割いた。




「あいつは───
世界中で───
一番の───
大バカヤロだ。」





言葉を発する度、怒り任せに破く。
手紙はどんどん細かく、小さくなっていく。
紙吹雪にでも使えそうなサイズになったそれを、ロンは燃え盛る暖炉に打ち込んだ。
紙は一瞬、熱によって空中に舞い上がる。
その後は炎に巻かれ、炭へと変わった。





「さあ、夜明け前にこいつをやっつけなきゃ。」





ロンはハリーに向き直り、宿題を手元に引き寄せながらそう言った。
それを見詰めるハーマイオニーの表情を、何と表現したらよいものやら。
憂うような、気遣うような、優しげな、とても複雑な表情だ。
そして唐突に口を開いた。




「あ、それ、こっちによこして。」



「え?」



「それ、こっちにちょうだい。目を通して、直してあげる。」



『そういう事なら、ハーマイオニー。手伝うよ。』





今日一日気を揉んでいた事だ。やっと手伝う事が出来て、少し安堵しているようにも見える。
ハーマイオニーが買って出たのだから、名前が手伝って許されるだろう。

ロンは口を開けて、ハーマイオニーと名前を見比べた。





「本気か? ああ、ハーマイオニー、ナマエ、君達は命の恩人だ。
僕、何と言って───?」



「あなた達に言って欲しいのは、『僕達は、もう決してこんなにぎりぎりまで宿題を延ばしません』だわ。」





二人分の宿題を受け取りながら、ハーマイオニーは笑った。





「ハーマイオニー、ナマエ。
ほんとにありがとう。」





か細い声でそう言うと、ハリーは目を擦り、椅子に沈み込んだ。
虚ろな目でじっと暖炉を見詰めている。
宿題を片付ける為にずっと机に齧り付き、疲労感もマックスな所へパーシーからのあの手紙だ。
無理も無い。体力も精神も摩耗しているのだ。

パーシーとは四年間の付き合いがあった。
それなりに親しかったし、分かりあえていた。
……と、思っていた。
今までの様々なやり取りを覆される文面だったのだ。
ハリー、名前と付き合いをやめるよう忠告し、何かあればアンブリッジに告発せよとアドバイスまでしている。
読み終えた今でも信じ難い。

名前とハリーは似たような立場だ。
少なからず。大分かもしれないが。ハリーはショックを受けている。
けれども名前は無表情である。
心中を問い質してみたい気持ちが無いでもないが、レポートの修正中だ。
邪魔をするわけにはいかない。





「オーケー、清書して。」





先にハーマイオニーが修正を終えた。
ロンのレポートを返し、自分の書いた羊皮紙を一枚、加えて差し出す。





「それから、私の書いた結論を書き加えて。」



「ハーマイオニー、君って、ほんとに、僕が今まで会った最高の人だ。
もし僕が二度と再び君に失礼な事を言ったら───」



「───そしたらあなたが正常に戻ったと思うわ。」



『……』





此方も終わったようだ。
羽根ペンをスタンドに置いて、伏せていた顔を上げる。

ハリーが暖炉の前でに四つん這いになっていた。





『……』



「……」



「……」





名前は目を逸らし、ロンとハーマイオニーを見詰めた。
二人もハリーを見て、そして名前を見た。
最初に口を開いたのはロンだった。





「あー───ハリー?
何でそんなところにいるんだい?」



「たった今、シリウスの顔が火の中に見えたんだ。」



「シリウスの顔?」





しっかり芯の通った声だ。それに落ち着いた様子で話している。
夢や寝ぼけ眼の見間違いなどでは無さそうだ。





「三校対抗試合で、シリウスがあなたと話したかった時そうしたけど、あの時と同じ? でも、今はそんな事しないでしょう。それはあんまり───シリウス!」





暖炉の燃え盛る炎の中、シリウスの生首が現れた。
狙い澄ましたかのようなタイミングだ。
ハーマイオニーは息を呑み、ロンは羽根ペンを取り落とした。
名前とハリーは平然としている。
ネスはよく分からない。
肘掛部分に静かに止まって、シリウスの顔を凝視していた。
けれど多分、驚きと呆れがない混ぜになっていた事だろう。





『こんばんは。ブラックさん。』



「こんばんは、ナマエ。
良ければシリウスと呼んでくれ。」



『……分かりました。シリウスさん。』



「ついでにもう少しフランクになってくれた方が私は嬉しいな。だがまあ、いいだろう。それは追々だ。
皆がいなくなるより前に君達の方が寝室に行ってしまうんじゃないかと思い始めたところだった。
一時間ごとに様子を見ていたんだ。」



「一時間ごとに火の中に現れていたの?」
ハリーはちょっと笑った。



「ほんの数秒だけ、安全かどうか確認するのにね。」



「もし誰かに見られていたら?」
ハーマイオニーは心配そうだ。



「まあ、女の子が一人───
見掛けからは、一年生かな───
さっきちらりと見たかもしれない。だが、心配しなくていい。
その子がもう一度見た時には私はもう消えていた。変な形をした薪か何かだと思ったに違いないよ。」



「でも、シリウス、こんなとんでもない危険を冒して───」



「君、モリーみたいだな。
ハリーの手紙に暗号を使わずに答えるにはこれしかなかった───
暗号は破られる可能性がある。」





「ハリーの手紙」という言葉に、ハーマイオニーとロンがハリーに注目した。
責めるような目付きだった。
名前は何故かマットの焦げ跡を見詰めて、ふと顔を上げる。





『それって、昨日の朝に送ったもの。』



「知ってたの?ナマエ。」



『それらしい梟が飛んで行くのを見掛けただけだ。』



「シリウスに手紙を書いた事、言わなかったわね。」



「忘れてたんだ。」





ハーマイオニーに睨まれて、名前とハリーは縮こまった。





「そんな目で僕を見ないでくれよ、ハーマイオニー。あの手紙からは誰も秘密の情報なんて読み取れやしない。
そうだよね、シリウスおじさん?」



「ああ、あの手紙はとても上手かった。
兎に角、邪魔が入らないうちに、急いだ方がいい───
君の傷痕だが、」



「それが何か───?」



「後で教えてあげる。シリウス、続けて。」



「ああ、痛むのはいい気持じゃないのはよく分かる。
しかし、それほど深刻になる必要はないと思う。去年はずっと痛みが続いていたのだろう?」



「うん。それに、ダンブルドアは、ヴォルデモートが強い感情を持った時に必ず痛むと言っていた。」





ヴォルデモートの名前が出ると、ロンとハーマイオニーは身を強張らせる。
いつもの事だ。ハリーは気に留めず話し続けた。





「だから、分からないけど、多分、僕が罰則を受けていたあの夜、あいつが本当に怒っていたとかじゃないかな。」



「そうだな。あいつが戻ってきたからには、もっと頻繁に痛む事になるだろう。」



「それじゃ、罰則を受けていた時、アンブリッジが僕に触れた事とは関係が無いと思う?」



「無いと思うね。
アンブリッジの事は噂でしか知らないが、『死喰い人』でない事は確かだ───。」



「『死喰い人』並みに酷いやつだ。」





暗澹たる声でハリーが言うと、名前達は三人揃ってウンウン頷いた。
それを見るとシリウスは苦笑した。





「そうだ。しかし、世界は善人と『死喰い人』の二つに分かれるわけじゃない。
あの女は確かに嫌なやつだ───
ルーピンがあの女の事を何と言っているか聞かせたいよ。」



「ルーピンはあいつを知ってるの?」



「いや。
しかし、二年前に『反人狼法』を起草したのはあの女だ。それでルーピンは就職が殆ど不可能になった。」



「狼人間にどうして反感を持つの?」



「きっと、怖いのさ。」
ハーマイオニーが怒るのを見て、シリウスは嬉しそうに微笑んでいる。
「どうやらあの女は半人間を毛嫌いしている。
去年は、水中人を一網打尽にして標識をつけようというキャンペーンもやった。水中人をしつこく追い回すなんていうのは時間とエネルギーの無駄だよ。
クリーチャーみたいな碌でなしが平気でうろうろしているというのに。」



「シリウス!」





笑ったのはロン一人だけで、ハーマイオニーは和むどころか火に油だった。





「真面目な話、あなたがもう少しクリーチャーの事で努力すれば、きっとクリーチャーは応えるわ。
だって、あなたはクリーチャーが仕える家の最後の生き残りなんですもの。
それにダンブルドア校長も仰ったけど───」



「それで、アンブリッジの授業はどんな具合だ?」





全くハーマイオニーの話を聞く気が無いらしい。
話の途中で遮られたハーマイオニーは当然怒ったが、シリウスは謝りもせず気にしてもいない。





「半獣を皆殺しにする訓練でもしてるのか?」



「ううん。
あいつは僕達に一切魔法を使わせないんだ!」



「つまんない教科書を読んでるだけさ。」



「ああ、それで辻褄が合う。
魔法省内部からの情報によれば、ファッジは君達に闘う訓練をさせたくないらしい。」



「闘う訓練?
ファッジは僕達がここで何をしてると思ってるんだ?魔法使い軍団か何か組織してるとでも思ってるのか?」



「まさに、その通り。そうだと思っている。
むしろ、ダンブルドアがそうしていると思っている、と言うべきだろう───
ダンブルドアが私設軍を組織して、魔法省と抗争するつもりだとね。」





以前ダンブルドアから聞いた話では、ファッジはヴォルデモートの復活を頑なに認めようとしなかったらしい。
確かにヴォルデモートは恐ろしい人物だ。
復活など認めたくない気持ちも理解出来る。
けれども、だからこそ。
本来ならば手を取り合って立ち向かわなければならないのに。





「こんなバカげた話、聞いた事がない。
ルーナ・ラブグッドのホラ話を全部引っくるめてもだぜ。」



「それじゃ、私達が『闇の魔術に対する防衛術』を学べないようにしているのは、私達が魔法省に呪いをかける事をファッジが恐れているからなの?」



「そう。
ファッジは、ダンブルドアが権力を握る為には何ものをも辞さないと思っている。
ダンブルドアに対して日に日に被害妄想になっている。
でっち上げの罪でダンブルドアが逮捕されるのも時間の問題だ。」



「明日の『日刊予言者新聞』にダンブルドアの事が出るかどうか、知ってる?
ロンの兄さんのパーシーが何かあるだろうって───」



「知らないね。
この週末は騎士団のメンバーを一人も見ていない。
皆忙しい。この家にいるのは、クリーチャーと私だけだ……。」



「それじゃ、ハグリッドの事も何も聞いてない?」



「ああ……
そうだな、ハグリッドはもう戻っているはずだったんだが、何が起こったのか誰も知らない。
しかし、ダンブルドアは心配していない。だから、皆そんなに心配するな。
ハグリッドは絶対大丈夫だ……。」



「だけど、もう戻っているはずなら……。」



「マダム・マクシームが一緒だった。我々はマダムと連絡を取り合っているが、帰路の途中ではぐれたと言っていた。
───しかし、ハグリッドが怪我をしていると思わせるような事は何も無い。
───と言うか、完全に大丈夫だという事を否定するようなものは何も無い。」





表立っても水面下でも、問題は起きていない。
けれど消息は絶たれている。
連絡も取り合っていない。
一安心とはいかない状態だ。

黙ったまま、名前達は目を見交わした。
その様子が心配そうみ見えたのだろう。
名前達四人の顔を見回してから、再びシリウスが口を開いた。





「いいか、ハグリッドの事をあまり色々詮索して回るんじゃないよ。
そんな事をすれば、ハグリッドがまだ戻っていない事に余計に関心を集めてしまう。ダンブルドアはそれを望んではいない。ハグリッドはタフだ。大丈夫だよ。

ところで次のホグズミード行きはどの週末かな?
実は考えているんだが、駅では犬の姿で上手くいっただろう?多分今度も───」



「ダメ!」





突然ハリーとハーマイオニーが大声を出したので、他の三人は驚いて固まった。





「シリウス、『日刊予言者新聞』を見なかったの?」



「ああ、あれか。」
ニヤリと笑う。
「連中はしょっちゅう、私がどこにいるか当てずっぽに言ってるだけで、本当はさっぱり分かっちゃ───」



「うん。だけど、今度こそ手掛かりを掴んだと思う。
マルフォイが汽車の中で言った事で考えたんだけど、あいつは犬がおじさんだったと見破ったみたいだ。
シリウスおじさん、あいつの父親もホームにいたんだよ───
ほら、ルシウス・マルフォイ───」



『俺もその可能性は高いと思います。』





ハリーに続いて名前も発言した。
心苦しい発言だった。

無実の罪で長い間、死にそうになりながらアズカバンに閉じ込められていたのだ。
そしてようやく脱獄とはいえ外へ出られたのに、閉じ籠りの生活を強いられているらしい。
同じ騎士団員は皆大忙しなのにシリウスのような行動力のある人物が、身動きが取れないというこの現況。

そもそも危険を承知で行動しようとしているのだ。
名前に重ね重ね言われなくとも、十分理解しているはずだ。





『ピーター・ペティグリューがヴォルデモート側にいるなら、シリウスさんが黒い犬の姿に変わる事が伝わっていてもおかしくはないです。
ピーター・ペティグリューはシリウスさんを知っています。』



「ナマエの言う通りだ。だから、来ないで。どんな事があっても。
マルフォイがまたおじさんを見付けたら───」



「分かった、分かった。言いたい事はよく分かった。
ちょっと考えただけだ。君が会いたいんじゃないかと思ってね。」



「会いたいよ。でもおじさんがまたアズカバンに放り込まれるのは嫌だ。」





黙ったままシリウスは、じっとハリーを見詰めた。
もう微笑んではいない。
眉が寄せられ、深い皺が刻まれている。

再びシリウスが口を開いた時出てきたのは、威圧的な低い声だった。





「君は私が考えていたほど父親似ではないな。
ジェームズなら危険な事を面白がっただろう。」



「でも───」



「さて、もう行った方が良さそうだ。クリーチャーが階段を下りてくる音がする。」





それが嘘か本当かは分からなかった。
けれどシリウスは、もうこの場にいたくないように見えた。





「それじゃ、この次に火の中に現れる事が出来る時間を手紙で知らせよう。いいか?
その危険には耐えられるか?」





言葉を残して、シリウスの生首は消えた。
炎が再び燃え盛る。

- 217 -


[*前] | [次#]
ページ:




×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -