02.-1


最後に名前が乗り込んで、ドアをしっかり閉じたが、馬車は直ぐには動かなかった。
他の馬車と揃って行動するのだろう。
きっと待っているのだ。

腰を落ち着け、背もたれに背中を預けて窓の外を見る。
動いていないし、そもそも夜の景色だから、眺める対象は早々無い。
それでも名前はぼんやりと見ていた。

落ち着くとまたもや眠気が襲ってきた。
堪えきれない欠伸を掌で隠していると、ルーナとバッチリ目が合う。
彼女は観察でもするかのように此方を見詰めている。





「皆、グラブリー-プランクばあさんを見た?
一体何しに戻ってきたのかしら? ハグリッドが辞めるはずないわよね?」



「辞めたらあたしは嬉しいけど。
あんまりいい先生じゃないもン。」



「いい先生だ!」





怒鳴るようなその声音に、名前は顔をそちらへ向けた。
ハリーとロン、ジニーの三人が、何故かハーマイオニーと名前を睨んでいる。

眠気にかまけて話を聞いていない名前は、何だか分からないが怒りの矛先が自分に向いていると理解して、途端に顔を青ざめさせた。
元々青白いが、より一層に。

取り繕うように咳払いをしてから、ハーマイオニーは口を開いた。





「えーっと……そう……とってもいいわ。」



「ふーん。レイブンクローでは、あの人はちょっとお笑い種だって思ってるよ。」



「なら、君のユーモアのセンスがおかしいって事さ。」





本人を目の前にハッキリ言い放たれた失礼な言葉。
言い放たれた本人は別段気を悪くした様子もなく、むしろ興味深そうににロンを見詰めていた。

ギィ、と車輪が軋んだ。
ゆっくりと馬車が動き出す。

ガタガタ揺れる車内に、名前の意識が遠退き始める。
また一つ欠伸をした。



馬車は校門を潜り、校庭に入った。
ハリーが身を乗り出して、どうやらハグリッドの小屋の方を見ているらしかったが、
小屋に明かりは点いておらず、不在を示していた。

正面玄関の扉に続く石段のそばで馬車が止まる。
乗り込んだ時とは逆の順番で、最初に名前、次にハリーと降りていく。

秋の夜気に意識がいくらか澄んでいく。
出てきたばかりの馬車を振り返れば、続々と降りてくる友人達。
その横にハリーが突っ立って、ハグリッドの小屋の方を見詰めていた。





「来るのか来ないのか?」



「あ……うん。」





ロンがそう言うと、ハリーは急いで向きを変えた。
待っていた名前達と並び、城内へ向かう生徒の列に加わる。
石段を上った先の玄関に入ると途端に、生徒の談笑する声や足音がホールに反響した。

開け放された大広間に入る。
そこには既に多くの生徒がいて、各々寮の長テーブルに着席し、談笑を続けていた。
一緒にいたルーナが前触れなく離れて、レイブンクローのテーブルへ向かっていく。
同学年の四年生達に呼ばれて、ジニーも離れていった。

残された名前達五人は、グリフィンドールの長テーブルを沿うように歩き進む。
中程に空席を見付けて、そこに座る事となった。





「あそこにはいない。」





着席して早々に、ハリーはそう言った。
大広間正面奥の教職員テーブルを眺めている。
ロンとハーマイオニー、名前も教職員テーブルを見遣った。

探さなくても見付かるような容貌だ。
そして隠しようもない。
しかし、ハグリッドの姿は無かった。

けれど別の意味で目立つ人物がいた。
ピンクのヘアバンドに、ピンク色のカーディガン。
遠目からでもハッキリと分かるどぎついピンク色だ。
ダンブルドアの隣に腰掛けたその魔女に、名前は見覚えが無かった。





「辞めたはずはないし。」



「そんな事、絶対ない。」



「もしかして……怪我しているとか、そう思う?」



「違う。」



「だって、それじゃ、どこにいるの。」



「まだ戻ってきてないのかも。ほら───
任務から───
ダンブルドアの為に、この夏にやっていた事から。」



「そうか……うん、きっとそうだ。
ナマエ、さっきから何を見ているんだ?」





ロンは唐突に話の矛先を名前に向けた。
話の最中もずっと一点を見詰めていたからだ。

ハリーとハーマイオニーも名前を見た。
名前はピンク色の魔女から目を離し、ロンへと移動させる。





『あの』



「あの人、誰?」





いざ口を開いて言い掛けるも、ハーマイオニーの方が少し早かった。
ロンとハリーの視線がハーマイオニーへ、そしてハーマイオニーが指し示す方向へと動く。

先程まで名前が凝視していた魔女だ。
ダンブルドアが顔を寄せて、魔女はその耳元で何やら話している。
魔女が正面に向き直った時、その顔を見て、ハリーの息を呑む音が聞こえた。





「アンブリッジって女だ!」



「誰?」
すかさずハーマイオニーが聞いた。



「僕の尋問にいた。ファッジの下で働いてる!」





ハリーの尋問。
そしてファッジという言葉から、彼女───アンブリッジが魔法省の人間だという事が推測される。

そしてハリーの反応からして、あまり良い印象が無いのも分かる。

ロンは名前の脇を小突いて、意地悪く笑った。





「カーディガンがいいねぇ。」



『ピンク色が好きなのかな。』



「ああ、きっとそうなんだろうな。それか似合うと思っているのか……いや、よくお似合いだ。なあ、おい、ナマエ?」



『……』
頷く。



「ファッジの下で働いてるですって?
一体どうしてここにいるの?」



「さあ……。」





二人の会話をよそに、ハーマイオニーは教職員テーブルを眺め回した。
何か重要な事に気が付いたかのように目を見開く。





「まさか。
違うわ、まさか……。」





呟きの真意は聞けずじまいだった。
大広間の扉が開き、マクゴナガル率いる一年生集団が登場したからだ。
マクゴナガルの両腕には丸椅子が抱えられており、その上には色褪せて擦り切れた三角帽子が載っている。

マクゴナガルと一年生が教職員テーブルの方へ歩いていくと、大広間の喧騒はだんだんと静まっていった。
教職員テーブルの前に一年生が並ぶ頃には、大広間は水を打ったように静まり返っている。

緊張で強張った一年生の列の前に、マクゴナガルは抱えていた丸椅子を置いた。
役目を終えるとさっさと後ろに下がる。
すると、丸椅子の上の帽子がモゾモゾ動いた。
つばの裂け目が口のように開き、そこから歌声が飛び出した。




昔々のその昔、私がまだまだ新しく
ホグワーツ校も新しく
気高い学び舎の創始者は
別れることなど思わずに
同じ絆で結ばれた

同じ望みは類なき
魔法の学び舎興すこと
四人の知識を残すこと
「ともに興さん、教えん!」と
四人の友は意を決し
四人が別れる日が来ると
夢にも思わず過ごしたり

これほどの友あり得るや?
スリザリンとグリフィンドール
匹敵するはあと二人?
ハッフルパフとレイブンクロー

なれば何故間違うた?



何故崩れる友情や?
なんとその場に居合わせた
私が悲劇を語ろうぞ

スリザリンの言い分は、
「学ぶものをば選ぼうぞ。祖先が純血ならばよし」
レイブンクローの言い分は
「学ぶものをば選ぼうぞ。知性に勝るものはなし」
グリフィンドールの言い分は
「学ぶものをば選ぼうぞ。勇気によって名を残す」
ハッフルパフの言い分は
「学ぶものをば選ぶまい。すべてのものを隔てなく」

こうした違いは格別に
亀裂の種になりもせず
四人がそれぞれ寮を持ち
創始者好みの生徒をば
この学び舎に入れしかば

スリザリンの好みしは
純血のみの生徒にて
己に似たる狡猾さ
もっとも鋭き頭脳をば
レイブンクローは教えたり
勇気溢るる若者は
グリフィンドールで学びたり
ハッフルパフは善良で
すべてのものをば教えたり

かくして寮と創始者の
絆は固く真実で
ホグワーツ校は和やかに
数年間を過ごしたり



それから徐々に忍び寄る
恐れと疑惑の不和のとき
四本柱の各寮が
それまで支えし学び舎を
互いに反目させし上
分断支配を試みた

もはやこれにて学び舎も
終りと思いし日々なりき
決闘に次ぐ決闘と
友と友との衝突が
ある朝ついに決着し
学び舎を去るスリザリン

争い事こそ無くなれど
後に残りし虚脱感



四人がいまや三人で
その三人になりしより
創始者四人が目指したる
寮の結束成らざりき

組分け帽子の出番なり
諸君も先刻ご存知の
諸君を寮に振り分ける
それが私の役目なり

しかし今年はそれ以上
私の歌を聴くがよい
私の役目は分けること
されど憂えるその結果

私が役目を果たすため
毎年行う四分割



されど憂うはその後に
恐れし結果が来はせぬか

ああ、願わくば聞きたまえ
歴史の示す警告を
ホグワーツ校は危機なるぞ
外なる敵は恐ろしや
我らが内にて固めねば
崩れ落ちなん、内部より
すでに告げたり警告を
私は告げたり警告を……

いざいざ始めん、組分けを





歌声が止み、裂け目が閉じる。
帽子は動かなくなった。

一拍置いて皆が拍手をしたが、互いの顔を見ては戸惑いの視線を交わしていた。
帽子の歌が予想と反していたからだ。
例年の如く四つの寮が持つ特性と、どの寮に当て嵌まるか判断するのが役目だと、そう歌うかと思っていたのに。
帽子は学校に対して警告を発した。

拍手の手を止めないまま、ロンは口を開いた。





「今年はちょっと守備範囲が広がったと思わないか?」



「全くだ。」



「これまでに警告を発した事なんて、あった?」



「左様。あります。」





不安そうなハーマイオニーに答えたのは「ほとんど首無しニック」だ。
ネビルの体を通り越して話すものだから、ネビルはどうにか身を遠ざけたがっている。
けれど「ほとんど首無しニック」は気にした様子も無く、もしかしたら気付いていないのかもしれないが、訳知り顔で物を言うのだった。





「あの帽子は、必要とあらば、自分の名誉にかけて、学校に警告を発する責任があると考えているのです───」





一年生の名簿を掲げて、いざ読み上げようとするマクゴナガルが、帽子の歌の意味を紐解こうと未だ囁き合う生徒を一睨みした。

生徒は一斉に口を閉じた。
「ほとんど首無しニック」も同様である。
唇へ指を寄せて、「シーッ」という仕草をして見せて、姿勢を正した。

急激に現れた静寂に耳鳴りが残る。
各寮のテーブルを見渡して視線で制すると、マクゴナガルやっと再び名簿へ目を戻した。





「アバクロンビー、ユーアン。」





一番手の名前が大広間に響く。
読み上げられた名前の男の子は、歩き出しに足先を躓かせて、転げそうになりながら前へ出てきた。
帽子が被せられて、怯えた顔が見えなくなる。





「グリフィンドール!」





帽子が叫んだ。
拍手が沸き起こる。

帽子が取っ払われると、ユーアン・アバクロンビーは小さな体を更に縮めて、よろよろとグリフィンドールの席に着いた。
(大きめな耳が真っ赤になっていた。)

名前が読み上げられ、一年生の列は徐々に短くなっていく。
時間にしてみれば三十分も掛からなかっただろう。
しかし隣に座るロンの胃が空っぽだと主張するので、名前はその度に振り返ってしまい、ロンに嫌な顔をされた。
しょっちゅう雷鳴のような音が聞こえれば、反射的に振り返ってしまうのも、仕方ない事だろう。





「新入生よ。おめでとう!」





滞り無く組分けが終わり、マクゴナガルが丸椅子と帽子を持って退却すると、ダンブルドアが入れ代わり立ち上がって進み出た。

白い口鬚に覆われた口元が、うっすら微笑みの形を作っているのが見える。
ゆったりと両腕を広げ、良く通る声は穏やかだ。





「古顔の諸君よ───お帰り! 挨拶するには時がある。今はその時にあらずじゃ。
掻っ込め!」





歓声と拍手が湧き起こる。
ダンブルドアが席に戻った頃には、テーブルの上は様々な料理で一杯になっていた。

キジのロースト、ビーフミートパイ、サーモンのグリル、アイリッシュ・シチュー、パン、ソース、南瓜ジュースの大瓶等々。
挙げれば切りが無い。
その上、この後はデザートが控えているはずだ。





「いいぞ。」





早速ロンは骨付き肉の皿を引き寄せて、自身の皿に装い始めた。
零れ落ちそうな程山盛りに装うので、隣に座る名前はハラハラと見守っている。
ロンは名前の視線に気にする事無く骨付き肉に齧り付いた。

ロンが骨付き肉に齧り付く様を、「ほとんど首無しニック」は何だか羨ましそうに眺めていた。





「組分けの前に何か言いかけてたわね?
帽子が警告を発する事で?」



「おお、そうでした。」





嬉しそうに微笑んで、ニックはハーマイオニーに顔を向けた。

名前がゴブレットにミルクを注ぎ、皿にサラダを装う間に、ロンは既に山盛り骨付き肉を食べ切っていた。
今度は山盛りローストポテトを口に運んでいる。





「左様、これまでに数回、あの帽子が警告を発するのを聞いております。いつも、学校が大きな危機に直面している事を察知した時でした。
そして、勿論の事、いつも同じ忠告をします。団結せよ、内側を強くせよと。」



「ぼしなン がこきけん どってわかン?」



「何と言われましたかな?」



『帽子なのに、学校が危険だとどうして分かるの。』





律儀に聞き返すニックに答えたのは、質問を投げ掛けたロンではなく名前だった。
一杯に物を詰め込んだロンが再び口を開くのは難しそうだったし、その行為を二度もハーマイオニーが許すとは思えなかったからだ。

ロンはモグモグと口を動かし、大きく飲み込むと同時、コックリ頷いた。





「うん、それだ。ナマエ、よく分かったね。
それで、どうして分かるの?」



「私には分かりませんな。
勿論、帽子はダンブルドアの校長室に住んでいますから、敢えて申し上げれば、帽子は、そこで感触を得るのでしょうな。」



「それで、帽子は、全寮に仲良くなれって?」





言いながら、ハリーは意味ありげにスリザリンのテーブルの方へ視線を走らせた。

視線の先にはドラコ・マルフォイとその仲間がいる。





「とても無理だね。」



「さあ、さあ、そんな態度はいけませんね。
平和な協力、これこそ鍵です。我らゴーストは、各寮に分かれておりましても、友情の絆は保っております。
グリフィンドールとスリザリンの競争はあっても、私は『血みどろ男爵』と事を構えようとは夢にも思いませんぞ。」



「単に恐いからだろ。」



「恐い?」




ロンの言葉にニックから微笑みが消えた。
けれどロンはアイリッシュ・シチューを頬張るのに夢中で、その変化に気付かなかった。





「痩せても枯れてもニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿。命在りしときも絶命後も、臆病の汚名を着たことはありません。この体に流れる気高き血は───」



「どの血?
まさか、まだ血があるの?」



「言葉の綾です!
私が言の葉をどのように使おうと、その楽しみは、
まだ許されていると愚考する次第です。たとえ飲食の楽しみこそ奪われようと。
しかし、私の死を愚弄する生徒がいる事には、この僕、慣れております!」



「ニック、ロンはあなたの事を笑い物にしたんじゃないわ!」





心底申し訳無さそうにそう言って、ハーマイオニーはロンを睨んだ。

自分がマズイ事を口にしたのだと理解したらしい。
ロンは食べ物が詰まった口でモゴモゴと謝罪した。
「ちがン ぼっきみンきぶン ごいすンつもらい」
……おそらく、「違う、僕は君の気分を害するつもりは無い」というような言葉だったのだろう。

礼儀を重んじるニックにとって、そしてロンの発言に対して、この謝罪は十分な値にはならなかったようだ。
帽子を被り直して空中に浮かび上がると、そのままどこかへ行ってしまった。





「お見事ね、ロン。」



「なんが?
簡単な質問をしちゃいけないのか?」



「もう、いいわよ。」





隣同士のくせに顔を見ようともせず、口もきかない。
ギスギスしたロンとハーマイオニーを間に挟み、名前とハリーは顔を見合わせた。

ハリーは肩を竦めて見せてから、ステーキ・キドニーパイをつつくのに戻った。
ロンとハーマイオニーがいがみ合うのに慣れてしまって、仲を取り持とうとは思わなくなったようだ。
名前もサラダをつつくのに戻った。

ついさっき組分け帽子とニックが、協力だとか友情だとか話して聞かせたばかりなのに。
しかも学校初日から早々に喧嘩してしまうなんて先が思いやられる。
けれどきっと、その内元通りになるだろう。
今までそうだったのだから。





「さて、またしても素晴らしいご馳走を、皆が消化しているところで、学年度始めのいつものお知らせに、少し時間をいただこう。」





食事とデザートが終わり、生徒が談笑を一通り楽しんだところで、
ダンブルドアは再び立ち上がって話を始めた。





「一年生に注意しておくが、校庭内の「禁じられた森」は生徒立ち人り禁止じゃ───
上級生の何人かも、その事はもう分かっておることじゃろう。」





隣で動く気配を感じて、名前はダンブルドアから視線を逸らしてそちらを見た。

ハリー、ロン、ハーマイオニーが顔を見合わせて、ニヤッと笑い合っている。





「管理人のフィルチさんからの要請で、これが四百六十二回目になるそうじゃが、全生徒に伝えてほしいとの事じゃ。授業と授業の間に廊下で魔法を使ってはならん。その他諸々の禁止事項じゃが、全て長い一覧表になって、今はフィルチさんの事務所のドアに貼り出してあるので、確かめられるとの事じゃ。」





ロンとハーマイオニーの雰囲気がギスギスしていない。
いがみ合いは終わったようだ。

安堵の息を吐くと、名前はダンブルドアに視線を戻した。





「今年は先生が二人替わった。グラブリー-プランク先生がお戻りになったのを、心から歓迎申し上げる。『魔法生物飼育学』の担当じゃ。
更にご紹介するのが、アンブリッジ先生、『闇の魔術に対する防衛術』の新任教授じゃ。」





形式的な拍手が起こり、すぐに静まる。
隣でまた動く気配を感じて、名前はまたそちらを見た。

ハリー、ロン、ハーマイオニーが素早く互いの目を見交わしている。少々混乱気味の様子だ。
それもそのはず。
ダンブルドアはハグリッドの話をしなかったし、グラブリー-プランクがいつまで教えるかも言わなかった。





「クィディッチの寮代表選手の選抜の日は───」





不自然に言葉が切れた。
ダンブルドアの視線は生徒から、隣のアンブリッジに向けられた。

何故ダンブルドアが話を止めて、何故アンブリッジを見たのか。
生徒も、教師陣さえも、不思議そうに二人を見詰めた。





「ェヘン、ェヘン。」





静かな大広間に、アンブリッジの咳払いが響いた。

ダンブルドアは一瞬驚いたように目を見開いたが、その意図を理解し、上品に着席した。





「校長先生。
歓迎のお言葉恐れ入ります。」





アンブリッジは隣のダンブルドアにニッコリ笑い掛けると、今度は生徒の方へ向き直った。
どうやら、今からスピーチを始めようとしているらしい。

新任の教師がダンブルドアの話を遮った事など無い。
皆の驚きは様々だったが、正面の席に教師陣のテーブルがあるだけに、教師陣の表情の変化はよく見える。

スプラウトの眉は吊り上がり、マクゴナガルの唇は真一文字に引き結ばれている。
話を待ち望んでいますというような顔をしているのはダンブルドア一人だけだ。

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