彼、どう思う?A(28000/みう様へ)※前HPから。







フレッドとジョージに向けてそう言った後で、スネイプはもう一度、名前をじろりと見た。
念を押すかのように、瞬きもしないでじっと見るのだ。
見られる事に慣れていない名前としては堪ったもんじゃないだろう。

しかし言うだけ言うと多少は気が済んだのか。
スネイプはくるりと身を翻して、大股で歩き始めた。

途中で角を曲がり、すぐにその姿も見えなくなる。





「…」



「…」



『…』



「しっかり答えてないか?」



「ばっちり答えていたな。」





フレッドとジョージの声は笑っている。





『…怒っていました。』



「そうだな。」



「君を心配してね。」



『…心配。…』



「そうさ。」





肩に頭がくっつきそうなくらい、名前は首を傾げた。





「無駄な怪我などせずに済むのだ、だってよ。」



「僕達は言われた事無いぜ。」



「いつもいちゃもんをつけるくせに、おかしくないか。」



「減点も罰則もしないなんてな。」



「…」



「…」



『…』





名前の腕を組んでいた二人は、するりと手を肩に移動させた。そして見下ろしてくる。

意味深な目付きだ。





『…何ですか。』



「ナマエ、実はスネイプと仲が良いんじゃないか?」



『いや、…』



「おかしいと思わないか?君はグリフィンドールで、僕達はスネイプが嫌うような事をしたんだ。」



『…』



「なのにお咎め無しなんだぜ。」



『怒っていました、よね。…』



「あれは怒るっていうより、…」



『…』



「積もり積もったものが爆発したって感じだったな。」



『………それは、やっぱり。
怒っていますよね。』



「…」



「…」





名前を間に挟んで、フレッドとジョージは目を合わせた。

それから肩に置いていた手を離す。





「まあ、いいか。」



「何となく違う気がするけど。」



『…』





そんな事を目の前で言われたら気になるだろう。

名前は二人の顔を見比べたが、二人とも教えようとはしなかった。

再び腕を組み、宛てもなく歩き始める。





「ん?」



「あ」



「なっ…」



『…』





歩き始めてから間も無く、すぐに人に出会った。

プラチナブロンドをオールバックにしている、スリザリンの生徒。
ドラコ・マルフォイだ。





「何をやっているんだ、ミョウジ…」



『………これは、…』



「何なんだ?」



『…』





どう説明したものかと、考えあぐねているのだろうか。

名前は視線をさ迷わせる。



そんな中、見てしまった。

薄暗くなり始めた校内。
蝋燭が灯された廊下。
男の姿がぼんやりと照らし出されていた。

遠くからじっとこちら―――名前を見詰めている。





「ちょうどよかった。君に聞きたい事があってね。」



「聞きたい事だと?」



「そう。君はナマエをどう思っている?」



「ナマエ…ミョウジをどう思っているかだって?」



『…』





チラリ。

ドラコは名前を見上げた。
名前は遠くの方を見たまま動かない。
瞬きさえしない。





「変なやつだ。いつもボーッとしていて。
何でお前みたいなやつが優秀なんだ。」



『…』



「おい、聞いているのか?」



『…』



「おい、ミョウジ!」



『…、…何だ。』



「僕の話を聞いていたか?お前の事なんだぞ。」



『…いや。』



「フン。やっぱりな。全く失礼なやつだ。
話せと言うからわざわざ話してやったのに。聞いていないだと?」



『ごめん。…』



「その顔はやめろ。」



『…』



「いいか、もう一度言ってやる。
お前は変人だ。加えて失礼なやつだ。」



『…ごめん。』



「その顔はやめろと言っただろう!」



『…』





雨の中、捨てられた子犬。
見詰めてくる濡れた瞳。

ドラコの目にはそんな風に、何やら妙なフィルターがかかって見えるらしい。

当然名前には分からない。
首を傾げるばかりである。

ドラコは気分を害したようで、大袈裟に顔をしかめた。
それからフンと鼻を鳴らす。
少しだけ顎を引いて、鼻先をつんと上げた。

肩を怒らせると、歩いていってしまった。



男のいる方向に。





「んっ?
あそこにいるのは…」



『帰ります。』



「え?でも、彼にも聞かなきゃ。」



『…。』



「こんなにこっちを見てるじゃないか。確かマーカス…」



『帰ります。』



「ナマエ。…」



『…』



「…」



『…』



「わかったよ。いいだろう、
帰ろう。」



「もうすぐ夕飯の時間だ。
これで切り上げよう。」





何か察したらしい二人は案外あっさりと諦めた。
名前は大層安心したことだろう。

男の名はマーカス・フリント。
スリザリンの生徒である。
彼は誤って恋の妙薬を使用してしまい、その場に居合わせた名前に対して妙薬の効果は発揮された。

もちろん効果は切れるものだ。
とっくに切れているはずだが。

なおも彼の視線は熱烈である。






「そうだ。」



『…』



「ナマエをどう思っているのか、俺達からは話していなかったな。」





当然のように両腕を組まれながら大広間に向かう途中だ。

フレッドとジョージはそんな事を言い出した。





『…』



「そう身構えるなよ。
君を嫌っているわけが無いじゃないか。その逆だよ。」



「友達なんだからね。
僕達はナマエを好いているんだ。」



『…』



「無口で無表情で、背が高くて痩せてる。
ナマエが避けられる理由だ。」



「だけど僕達は、そういうところも合わせてナマエのことが好きなんだぜ。」



『…俺も、二人の事は…好きです。……』



「おっ。そうそう、その顔!
笑ってるところを見れると、嬉しくなるしな。
全然笑わないから。」



「ファンも君のそういうところが好きなんだそうだ。
ギャップってやつかな。」



『………ファン、』



「しまった、また口が滑ってしまった。気にするなよ、ナマエ。」



「新聞は明日の朝一、掲示板に掲示する。
楽しみにしててくれよ!」



『…』





二人は逃げるように大広間に入っていった。
夕食で賑わう人込みに紛れて、もう分からない。

名前はぼうっと立ち竦む。

やがて思い出したように動き始め、
ゆっくりとテーブルに向かい、空いている席に座った。
元々追う気は無かったのかもしれない。



そうして翌日になって、フレッドとジョージが宣言した通り。

掲示板には手書きの新聞が掲示されていた。





「ナマエ・ミョウジだ。」



「ホントに羽毛みたいなのかな?」



「私の体重分けてあげたい…。」



『………』





以来、そんな会話が囁かれるようになった。

隙あらば髪に触れようと目論む者が続出し、何故か食べ物をプレゼントされる。
ほとんど匿名だ。



名前のストレスは計り知れない。

無表情だから、よくは分からないが。















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みう様へ捧げます。
リクエストありがとうございました。

リクエストの内容を見た途端、「これは楽しそうだ!進行役は双子で決まりだ!」と勝手に盛り上がってしまい、本編の雰囲気を大分崩すものになってしまいました。すみません…。

みう様、リクエストの内容に沿うものになりましたでしょうか?
楽しんで下さったのならば嬉しいです。

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