彼、どう思う?@(28000/みう様へ)※前HPから。
「と、言うことで参りましょうか。
「突撃!いきなりインタビュー」のコーナーです!」
晴れ渡る青空。
輝くように白い雲。
コントラストが美しい。
風が心地好い、
天気の良い午後のこと。
こういう日に限って、災難はやってくるものだ。
「この企画はホグワーツの隠れたアイドル、
ナマエ・ミョウジくんを徹底調査するための素晴らしいプロジェクトです!
記念すべき第一回と言うことで、
今回はまず、ナマエくんがどんな人物なのかをご紹介したいと思います!
進行役は私、ジョージ・ウィーズリー。
カメラマン兼記者はフレッド・ウィーズリー。
二人でお送りします!
さて早速主役のご登場といきましょう。
この時間帯はおそらく、談話室で宿題をこなしているはずです。」
談話室の扉が勢いよく開けられた。
室内にいた人々―――名前、ハリー、ロン、ハーマイオニーの四人のみだが―――は、一斉にそちらを見た。
「大当たり!
暖炉に一番近いソファーに座っています!
寒がりなのでしょうか!?
側にはハーマイオニー・グレンジャーさん、
ロナルド・ウィーズリーくん、
ハリー・ポッターくんもいます!」
「フレッド、ジョージ。
何やってるの?」
「まあ見とけよ。」
「悪いようにはしないからさ。」
マイク、カメラ、羊皮紙、羽ペンを構えた、何とも怪しげな出で立ち。
ロンは実の兄に白い目を向けた。
いつも悪戯ばかりする二人の事だからと、あまり信用していないらしい。
ハーマイオニーとハリーも「またか」という表情だ。
名前だけが状況を分かっていない。
自身を挟むように座ったフレッドとジョージを見比べては、首を傾げている。
ジョージは気にした様子もなく、ポケットから紙切れを取り出した。
「さてまずはナマエくんのプロフィールをご紹介いたします。
身長は170cm、体重50kg。
痩せてますね!細い!
そして日本人らしい黒目、黒髪。
羽毛のように柔らかいです!」
『…』
ジョージは名前の頭を、両手でぐしゃぐしゃに撫でた。
そうして鳥の巣状態になった名前の頭へ、フレッドはカメラを向ける。
遠慮ないフラッシュに名前は目を細めるしかない。
取り出した紙切れは、名前のプロフィールだったらしい。
教えた覚えはないが。
「触る必要があるの?」
「ハリーくん、これはナマエを徹底調査する企画なんだぞ。
見たままを書いただけじゃつまらないだろう。」
「ナマエ、嫌なら嫌って言っていいのよ。」
『…大丈夫。』
頭は大変な事になっているが。
「さてこのコーナーはこれで終わりじゃありません。
ナマエくんの周囲にいる人々にもインタビューをします!
年齢性別、生徒や先生方関係なく、
ナマエくんをどう思っているのか!?
幅広い意見を聞いちゃいます!
と言うことで。
ハリーくん、ハーマイオニーさん、ロンくん。
ナマエくんをどう思われていますか?」
「そりゃあ、友達だよ。」
「そうね。それ意外に言葉が見つからないわ。」
「無口で無表情だけど、いいやつさ。」
「ロン、初めは怖がってたよね。」
「あら、そうなの?知らなかった。」
「う、うるさいなあ。今は全然怖くないんだから、いいじゃないか。」
「ふむふむ。三人の思いは"友達"で一致しているようですね。
ナマエくんはどう思っています?」
『…友達です。』
フレッドは羽ペンを使い、何やら羊皮紙に書き出している。
今の会話の内容を書いて、一体どうしようというのだろうか。
名前はただただ首を傾げるのみである。
「ところで、友達同士ですし当然お喋りしますよね?
彼はこの通り無口・無表情ですよね。会話に困ったりしませんか?」
言いながら名前を指差す。
『…』
人形の如く生気が感じられない。
「うーん…あんまり困らないよ。
僕達と一緒にいる間もこんな感じだけどね。
ほとんど動作で済ませちゃうんだよ。頷いたり、首を傾げたりして。」
「でもそれで伝わるんだから、不思議だよな。」
「そうなのよね。何て言うか
…
そう、ナマエは動物的なのよ。」
『…』
ハーマイオニーを凝視している。
「言葉は伝わらないけれど、何となく思っていることが分かるの。」
「普段は全く何を考えているのか分からないけどね。」
「分かる時と分からない時があるんだよな。確かに動物っぽいや。」
何だか盛り上がっている。
話の中心となっているのは名前だが、全く会話に入れていない。
「ちなみに動物に例えるなら何ですか?」
「犬。それもおっとりした大型犬だな。
結構のんびり屋だからね。」
「猫かしら。気が付くといなくなってて、いつの間にか側にいるのよ。」
「梟かな…。
あんまり動かないところとか、首を傾げるところ。あとは目で訴える感じが、ヘドウィグに似てるんだ。」
「見事に意見が分かれましたね。一緒にいても、それぞれ感じる印象は違うようです。
ナマエのどこに強い印象を感じるのかが分かりますね。
ナマエくん、自分に一番近いのはどれだと思いましたか?」
突如ターゲットが名前に切り替わった。
いきなり向けられたマイクとカメラに一瞬身を引いている。
驚いたらしい。
『分からない。…
動物に、似ているのか。』
「動物というよりペットっぽかったですね!
ハリーの意見は完全にペットでした。」
『…………
…
これからは、なるべく話す。』
「い、いいよ!ナマエはそのままで!」
「お喋りなナマエなんて想像できない。怖い!」
「ナマエはそのままでいいのよ。むしろそのままがいいの。」
『………』
全否定である。
自ら変わろうとする名前に対し、三人はあまりにも必死な様子で止めている。
動物的というイメージは無くなりそうもない。
「さて。粗方のお話は聞けましたね。
お次は談話室を出て、意外な方々からお話を聞くとしましょうか!」
「さあナマエくん立ち上がって!」
『…』
両脇から伸びてきた手は名前を支えるようにして立ち上がらせた。
右腕にはジョージ。
左腕にはフレッド。
両者にがっちり両腕を組まれ、名前は逃げる事が出来ない。
そのまま談話室のドアまで引き摺られる。
「ちょ、ちょっと待って、フレッド!ジョージ!
まだナマエに宿題教えてもらってないんだ!」
「さあ行きましょう行きましょう!」
「ナマエ〜〜〜っ!!」
『…』
あっけなく談話室から連れ出された。
ドアは冷淡にも閉められ、ロンの悲痛な叫びは遮断される。
談話室を出てもなお両腕を組まれたままだ。
これではまるで名前が何か悪い事をしたように見える。
廊下に人気が無いのが救いだ。
『…どこに向かっているのですか。』
「適当だよ。歩いていれば、誰かしらに会えるさ。」
「その人が君を良く思っているかは分からないけどね。
…おや?」
ちょうど、曲がり角を曲がった時だ。
前方にこちらへ背を向けて、誰かが歩いていた。
引き摺りそうなぐらい長い、黒いマントを翻しながら。
名前はそれが誰かすぐに分かった。
そして「まさか」と二人を見比べた。
「おやおや?あそこにいるのはスネイプじゃないか。」
何とも嫌な笑顔を浮かべている。
本能的に何かを感じ取ったのだろう。
名前は後退した。
しかし両腕はがっちり抱えられているのである。
「スネイプ先生!待ってください!」
『…』
名前は首を左右に振ってみたり、踏ん張ったりして抵抗を試みるが、全く無駄であった。
ずるずると引き摺られあっという間に距離は縮まる。
立ち止まったスネイプが目の前にいた。
「何かようかね。」
嫌そうな顔だ。
眉間の皺がいつもより増えているように見える。
「はい。ナマエくんをどう思っていらっしゃるのかお聞きしたいのです。」
「…」
『…』
スネイプの目が名前へ向けられた。
蔑むような目付きだが、呆れているようにも感じられる。
名前は目を合わせられない。
「くだらん質問をするな。」
「ですがこれは校内新聞として掲載するのです。
マクゴナガル先生、校長先生にだって許可は頂いています。
いわばこれはホグワーツの為なのです。」
「何。校長に?…」
『校内新聞…』
それぞれ別のところで反応している。
スネイプとしては、ダンブルドアが認可しているのならば止める事は難しい。
そして名前としては、校内新聞など初耳である。
まさか公に自分の事が広がるなんて想像もしていなかっただろう。
「…本人は初耳のようだが。」
「おっと、いけない。サプライズにしようと思ってたんですが。」
「つい口が滑ってしまいました。」
「…」
『…ごめんなさい。』
視線に耐えきれなくなったらしい名前がぽつりと謝る。
スネイプは目を細めた。
ますます呆れている。
「気を付けていればこんな事にはならない。
Mr.ミョウジ、君には注意しようという気持ちが無いのかね。それとも自身の力を過信しているかね。
ならば身の程をわきまえる事をお勧めしよう。何せ君のする事なす事手を煩わす。今もそうだ。」
『…』
「いくら腕が立つだろうと意味がない。
自分の能力や立場を正しく理解していれば、無駄な怪我などせずに済むのだ。」
『…』
「質問には答えん。他にあたれ。」
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