15.-3










『…』





息を吐けば、たちまち白いもやへと変わる。
鼻息さえ怪獣のように白くなるものだから、名前は何となく気恥ずかしいらしい。首に巻いたマフラーに顔を埋めた。

頭上を埋め尽くす雲からは絶え間なく雪が舞い落ちて、「魔法生物飼育学」に向かう生徒達の髪や肩に降り積もる。
払っても払っても一瞬で白く染まる為、今はもう誰しもが諦めて雪を積もらせていた。





「こんな日に外で授業だなんて、凍え死んじゃうよ。」





隣からくぐもった声が聞こえて、名前はチラリと横目で見る。
癖毛に雪を積もらせたハリーが、名前と同じく、マフラーに顔を埋めていた。

勉強と訓練に費やしたせいか、体感的には早く冬季休暇が終わったように思えた。
しかしそう簡単に寒さが遠退く事はなく、辺りはまだ深々と雪に覆われている。
現に今、制服の裾もローファーも水浸しだ。一歩進む度に足が雪に埋まるのだ。





「さあ、分からないぜ、ハリー。スクリュートのお陰で暖かくなれるかも。」



「ああ、そうだね。火傷するぐらいね。」





どこかおどけたロンの声に、ハリーは嫌そうに眉を寄せた。
歩みが遅いのは雪のせいだけではないだろう。

すると、数歩先を歩いていたハーマイオニーがクルリと振り返る。
鼻と頬が赤く染まっている。眉を吊り上げているせいか、怒っているように見えた。





「ハリー、ロン、ナマエ!早く歩いて。もう授業が始まっちゃうわ!」



『…』



「はいはい。」



「分かってるよ、ハーマイオニー。
…全く、道中も授業も地獄だ。」





怒っていた。

名前は固まり返事が出来ない。代わりに大股でハーマイオニーの方へ向かっていった。
ハリーとロンは慣れたように軽くあしらって、そのままのんびりと歩き続けたが。





「…あら?」





不意に聞こえた声に、名前はマフラーに顔を埋めていた顔をそちらに向けた。

ハーマイオニーは真っ直ぐ前を見据えたまま、不思議そうに首を傾げる。





「ねえ、あの人は誰かしら?ナマエ、知ってる?」



『…』





顔を上げて前を見る。

雪に埋まったハグリッドの小屋がある。
その戸口の前に、短く刈り込んだ白髪の、顎が突き出た老魔女が立っていた。

見覚えの無い人物だ。
名前は首を振った。





「さあ、お急ぎ。鐘はもう五分前に鳴ってるよ。」





魔女の大声は、雪でまごつく生徒全員に届いたらしい。
雪の坂道で転がりそうになりながら、生徒達はあっという間にやって来た。

見覚えの無い人物が現れたせいだろう。
先程までのゆったりとした足取りが嘘のように、殆ど走るようにしてハリーとロンはやって来た。
そして魔女をまじまじと見つめている。

魔女の周りにバラバラと集まる生徒に交じり、ロンが口を開いた。





「あなたは誰ですか?ハグリッドはどこ?」



「わたしゃ、グラブリー-プランク先生。
『魔法生物飼育学』の代用教師だよ。」



「ハグリッドはどこなの?」



「あの人は気分が悪くてね。」





ハリーは少し焦りを感じさせる大声で問うたが、グラブリー-プランクはそれ以上答えなかった。
ロン、ハーマイオニー、名前の三人は顔を見合わせる。しかし誰もが答えを知らない。
納得のいかないハリーが再び口を開くと、その思いを言葉にする前に、背後から低い笑い声が聞こえてきた。

スリザリン生が立っていた。先頭のドラコ・マルフォイがこれ見よがしに意地悪い笑みを浮かべている。
ドラコ・マルフォイだけではない。スリザリン生の誰もが笑みを浮かべていた。
そして、グラブリー-プランクの存在にちっとも驚いてはいない。
グリフィンドール生は皆一様に驚いていたというのにだ。

スリザリン生にとって、中でもドラコ・マルフォイにとって、何か良い事が起きたのは確かだろう。





「こっちへおいで。」





グラブリー-プランクの声は張り詰めた空気を破った。
そして背後の生徒達を気にしないような足取りで、どんどん進んでいってしまう。

慌ててその背中を追う生徒に交じり、ドラコ・マルフォイ率いるスリザリン生はさっさと行ってしまった。
こちらを見て、ニヤリと笑ってから。

ボーバトンの馬達の囲い地に沿って、最後尾を黙々と歩く。
歩きながら、名前達は時折背後を振り返った。
背後にあるハグリッドの小屋が小さくなっていく。





「僕、聞いてくる。」





ぽつりとそう言ったかと思うと、ハリーは走ってグラブリー-プランクの元へ走っていってしまった。

一緒に行く、とか。分かった、とか。
三人は口を開く間もなく取り残された。

ハーマイオニーが深く息を吐いた。
吐息は一瞬で白く染まる。





「ハリー、心配なのね。」



「僕だって心配だよ。」



「分かってる。私達みんな同じ気持ちよ。
ハグリッド、一体どうしちゃったのかしら。」


『…風邪、』


「風邪ならまだいいわよ。いや、良くはないけど…マダム・ポンフリーが直ぐに治してくれるもの。
気になるのはスリザリンのあの態度よ。」





言って、ハーマイオニーは顔をしかめた。
先程の意地悪な笑みを思い出したらしい。
ロンも同じように眉を寄せた。





「ああ、あいつら、また何か仕出かしたのか?」



「分からないけど、スリザリン生にとって良いことなのは間違いないわ。」





「おぉぉぉぉー!」





女子学生の歓声が響いて、三人は思わず声のした方を見た。

いつの間にやら囲い地を過ぎ、禁じられた森の端までやって来たらしい。
聳え立つ木の一本に、大きな一角獣が繋がれていた。

発光しているのではないかと錯覚するほど白く、動く度に毛並は滑らかで美しい光沢を見せる。
ただ酷く苛立っているようで、とても近付ける雰囲気ではない。
金色の蹄は地を掻き、角のある頭を見せつけるように頭をのけ反らせている。





「まあ、なんてきれいなんでしょう!」





ラベンダー・ブラウンの囁く声がきこえた。
一角獣から目を離さないまま言ったその声は、微かに震えているようだった。

ハーマイオニーもロンも、先程までのしかめっ面はどこへやら。
一角獣の美しさに瞬きすら忘れ、言葉を失っている。





「あの先生、どうやって手に入れたのかしら?捕まえるのはとっても難しいはずよ!」



「男の子は下がって!」





グラブリー-プランクの大声が響いて、生徒達はお喋りを止めた。





「一角獣は女性の感触の方がいいんだよ。女の子は前へ。気を付けて近付くように。さあ、ゆっくりと……」





グラブリー-プランクの声に倣い、ハーマイオニーは他の女子学生と共に一角獣の方へ行ってしまった。
入れ替わるようにハリーが戻ってきて、ゆるりと首を左右に振る。どうやら、ハグリッドの事は聞けなかったらしい。

女子学生に紛れてしまいそうな一角獣を、男子学生は囲い地の柵のそばに立って眺めた。
グラブリー-プランクは女子学生のそばで一角獣の説明をしている。

こちらの声は聞こえないだろうと判断してか、ハリーはロンと名前に向き直った。





「ハグリッドはどこが悪いんだと思う?まさかスクリュートに―――?」



「襲われたと思ってるなら、ポッター、そうじゃないよ。」





そばで聞いていたらしい。ロンと名前が口を開くよりも早く、ドラコ・マルフォイがそう言った。

背後に立っていたドラコ・マルフォイは、ニヤニヤとした笑みを浮かべて三人―――特にハリーを見ている。
ハリーの眉は一瞬にして吊り上がった。
ハリーの反応を見て、ドラコ・マルフォイはますます笑みを深くするのだ。





「ただ、恥ずかしくて、あのでかい醜い顔が出せないだけさ。」



「何が言いたいんだ?」



「ほら。」





言いながら、マルフォイはローブのポケットに手を入れた。
再び現れた手には、折り畳まれた小さな紙があった。
どうやら新聞紙のようだ。





「こんな事を君に知らせたくは ないけどね、ポッター……」




言葉とは裏腹に意地悪な笑みを浮かべ、見せ付けるように新聞紙を左右に振る。
そんなマルフォイから、ハリーは怒り任せに新聞紙を奪い取った。
そして破いてしまいそうな勢いで広げると、記事の内容に目を通す。





『…』





ハリーを囲むように、その場を見守っていたロン、シェーマス、ディーン、ネビルも新聞を覗き込む。
名前も彼らを倣い、ハリーの後ろから新聞を見た。

―――ダンブルドアの「巨大な」過ち
記事の冒頭はそう始まり、ハグリッドの写真が載せられている。
―――本紙の特派員、リータ・スキーターは…
記事はそう続いていた。





『(リータ・スキーター……)』





どこかで聞いた名前だ。名前は記憶を探る。

冬休み前の「魔法生物飼育学」での事だっただろうか、ハグリッドの庭の柵に女性が寄り掛かっていた事を覚えている。

―――あんた、誰だね?

ハグリッドが怪訝そうに、そう尋ねたはずだ。
そしてその女性は確かに、リータ・スキーターと名乗った。
『日刊予言者新聞』の記者だと、はっきり告げていた。





『…』





派手な衣装と濃い化粧。
化粧品の匂いも、名前ははっきり覚えている。

記事の内容は、ダンブルドアとハグリッドに対する皮肉と悪評で埋め尽くされていた。
あの時、妙に面白そうにハグリッドの授業を眺めていた。
まさかこんな記事を書く目的だとは思いもよらなかった。





「何で分かったんだろう?」





記事を読み終えたハリーに向けて、ロンは囁くようにそう言った。
記事の内容にある、ハグリッドが半巨人である事を指しているのだろう。
(その存在がいかに危険で、いかに生徒へ被害があるか、長々と書かれていた)

ダンスパーティの夜、ハグリッドは半巨人である事を、マダム・マクシームに告白した。
マダム・マクシームを同じ半巨人と思っての告白だった。
恐らく、彼女も半巨人である。本人は否定しているが。

それを目撃したハリーとロン、二人によって事実を知らされたハーマイオニーと名前。
この五人以外、ハグリッドが半巨人である事を知らないはずだ。
今までハリー達に黙っていたハグリッドが、誰かに話すとは考えられない。
では、マダム・マクシームがリータ・スキーターに話したのだろうか?





「『僕達は皆、ハグリッドをとても嫌っています』だって?どういうつもりだ?」





そこまで考えていた名前の耳に、ハリーの低い声が聞こえてきた。





「こいつが―――」
怒りに震える手で、ハリーはクラッブを指差した。
「レタス喰い虫にひどく噛まれた?デタラメだ。あいつらには歯なんかないのに!―――」



「まあ、これでやっと、あのデカブツの教師生命もおしまいだな。」





ハリーの怒る様を滑稽そうに眺めて、マルフォイは笑みを深くさせた。





「半巨人か……それなのに、僕なんか、あいつが小さい時に『骨生え薬』を一瓶飲み干したのかと思っていた……
どこの親だって、これは絶対気に入らないだろうな……ヤツが子供達を食ってしまうと心配するだろうよ。ハ、ハ、ハ……」



「よくも―――」



「そこの生徒、ちゃんと聞いてるの?」





グラブリー-プランクの鋭い声が飛び込んでくる。
それまでやり取りを見ていた男子生徒は、慌てた様子で一角獣の方へ向き直った。

ハリーも一角獣の方へ目を向けてはいたが、意識はそこに無いように見えた。
「日刊予言者新聞」を握る両手が細かく震え、怒りを物語っていた。

グラブリー-プランクが大声で一角獣の特徴を説明しているが、この様子では全く耳に入っていないだろう。





「あの女の先生にずっといてほしいわ!」





授業を終えて城に向かう道中、パーバティ・パチルが興奮冷め遣らぬ面持ちで言った。





「『魔法生物飼育学 』はこんな感じだろうって、私が思っていたのに近いわ……一角獣のようなちゃんとした生物で、怪物なんかじゃなくって……」



「ハグリッドはどうなるんだい?」



「どうなるかですって?」





乱暴に石段を上がるハリーが、強い口調で言った。
するとパーバティは急に厳しい表情になった。





「森番に変わりないでしょう?」





やけに刺々しい口調に、名前は違和感を覚えた。
彼女はハリーに対して、こんなにも冷たかっただろうか?

ダンスパーティでハリーがパーバティを放置したのが原因なのだが、名前には知る由も無い。





「とってもいい授業だったわ。」





昼食を摂る為に大広間に入ると、ハーマイオニーは満足そうに笑った。
ハリーの膨れっ面にも気が付かず、ハーマイオニーはそのまま話し続ける。





「一角獣について、私、グラブリー-プランク先生の教えてくださったことの半分も知らなかっ―――」



「これ、見て!」





ハーマイオニーの笑顔の目の前に、ハリーは若干グシャグシャになった新聞紙を突き出した。
そのまま殴ってしまいそうな勢いだった。

突然の行動に驚きはしたものの、ハーマイオニーは素直に新聞紙を受け取って、歩きながら読み始める。

昼食時で込み合う大広間。
ハーマイオニーが人にぶつからないよう、名前は前に出て歩いた。





「あのスキーターって嫌な女、何で分かったのかしら?ハグリッドがあの女に話したと思う?」



「思わない。」





空いている席を見つけて三人を手招きすると、膨れっ面のハリーが大股でやって来た。
名前の向い側に、乱暴に腰を下ろす。
続いて名前の隣にハーマイオニー、ハリーの隣にロンが腰を下ろした。




「僕達にだって一度も話さなかったろ?散々僕の悪口を聞きたかったのに、ハグリッドが言わなかったから、腹を立てて、ハグリッドに仕返しするつもりで嗅ぎ回っていたんだろうな。」



「ダ ンスパーティで、ハグリッドがマダム・マクシームに話しているのを聞いたのかもしれない。」



「それだったら、僕達があの庭でスキーターを見てるはずだよ!」




ロンの言うことはもっともだ。
その場に誰かが居合わせたなら、ハリーもロンも真っ先に疑うだろう。





「兎に角、スキーターは、もう学校には入れないことになってるはずだ。ハグリッドが言ってた。ダンブルドアが禁止したって……」



『だけど、「魔法生物飼育学」の時にいた。侵入する方法があるのかもしれない。』



「ナマエの言う通りだ。きっと方法がある。
スキーターは『透明マント』を持ってるのかもしれない。」





言いながら、ハリーはチキン・キャセロールを皿に装う。
怒りに震える手で装うものだから、テーブルの上あちこちにチキンが零れた。





「あの女のやりそうなことだ。草むらに隠れて盗み聞きするなんて。」



「あなたやロンがやったと同じように?」



「僕らは盗み聞きしようと思ったわけじゃない!」





ロンが直ぐ様反論した。
グサリ。怒った勢いで、ソーセージにフォークを突き立てる。





「他にどうしようもなかっただけだ!
バカだよ、全く。誰が聞いているか分からないのに、自分の母親が巨人だって話すなんて!」



「ハグリッドに会いに行かなくちゃ!」





唐突にハリーが言った。その勢いに焦りさえ感じられる。





「 今夜、『占い学』の後だ。戻ってきてほしいって、ハグリッドに言うんだ……。
君もハグリッドに戻ってほしいって、そう思うだろう?」



「私―――そりゃ、初めてキチンとした『魔法生物飼育学』らしい授業を受けて、新鮮に感じた事は確かだわ―――
でも、ハグリッドに戻ってほしい。勿論、そう思うわ!」





話している数秒のうちに、ハリーの眦が吊り上がっていく。
怒りの矛先がハーマイオニーに向いているわけではない。
けれどもハーマイオニーはその視線に怯み、早口にそう言い終えた。





『俺も行く。』





ぽつりと零した声に、視線が一斉に集まる。
ロンは意外そうに、ハーマイオニーは驚きに目を見開いていた。
ハリーだけは「当然だ」と言った様子で頷いて見せたが。





「じゃあ、夕食を食べた後、すぐ行こう。」



「今回は『透明マント』を使う必要は無いからね、一緒に行けるだろうけど…でも、だって、ナマエ。
君は、ムーディの訓練があるだろ?どうするの?」



『休む。そう伝える。』



「ダメよ!」





すぐ隣から厳しい声が飛び、名前の肩は一瞬縮こまった。
ハリーが不服そうにハーマイオニーを見ている。





「どうして?ハーマイオニー。ハグリッドは友達なんだ。
心配なんだよ、分かるだろ?」



「勿論、心配な気持ちはよく分かるわ。
でもナマエはムーディ先生の所へ行かなきゃダメ。」



「良いじゃないか、ハーマイオニー。一日くらいさ。」



「ロンまで…!ダメなものはダメ。ナマエは命を狙われているのよ。訓練して身を守る術をしっかり身に付けなきゃならなきゃならないの。
もしナマエが明日にでも命を落としたらどうするの?
そうなったらきっと、ハグリッドは自分を責めるわ。」



「そんな、………

……話が飛躍しすぎてるよ。…」





ぼそぼそとそう言った後は、ロンもハリーもそれ以上は何も言わなかった。
名前が命を狙われている事は、皆よく分かっている。
ハグリッドは友達だが、名前もまた友達だ。
どちらも大事であることに変わりはない。

反論する事をやめた二人を眺めた後、ハーマイオニーは名前に向き直った。





「訓練に行くこと。いいわね、ナマエ。
あなたが心配していること、私達の口からしっかり伝えるわ。」



『…』





否定を許さない目に、名前は頷く事しか出来なかった。

そしてその日の夕食後。
ハリー達はハグリッドの小屋へ。
名前はムーディとの訓練へ。

玄関で別れ、それぞれの目的の場所へと向かった。





『どうだった。』





訓練から戻った名前は、談話室の暖炉前で身を寄せ合う三人の元へ歩み寄る。
振り向いた三人の表情はどれも浮かないもの。
結果は一目瞭然だった。
会うことが出来なかったのだ。

半巨人。
ハグリッド本人は、その事を誰よりも気にしているらしい。

食事の時間に教職員テーブルを見ても、あの大きな体は見当たらない。
窓からふと外を見た時も、校庭で見掛ける事も無い。
当然「魔法生物飼育学」の授業にも現れず、グラブリー-プランクが続けて教えた。
そしてついにその週、ハグリッドは姿を見せなかった。





「折角談話室が静かになるのよ。
このチャンスを利用したらいいのにと思って。」





一月半ばに差し掛かった頃、ホグズミード行きが許可された。
当然ながら、名前は訓練がある為行かない。
(行くと言えばまたハーマイオニーに叱られるのは目に見えていたからだ)
ハリーは行く予定だと言うので、ハーマイオニーは大層驚いたようだった。





「あの卵に 真剣に取り組むチャンスよ。」



「ああ。僕―――
僕、あれがどういう事なのか、もう相当いいとこまで分かってるんだ。」



「ほんと?
すごいわ!」





いつも通りの口調で言ってのけたハリーの顔は、決して「いいとこまで分かってる」顔ではなかった。

しかし、普段の観察力はどこへいってしまったのか。
その食い違いに気が付かないハーマイオニーは、素直に喜んではしゃいでいる。

両者の温度差を感じながらも、口下手な名前には、ただ見つめる事しか出来ないのだった。





「根を詰めすぎてもダメなんじゃないかな。」



「ハリーの言う通りだよ。今日一日…いや、半日くらい…」



「しつこいわよ、ハリー、ロン。」





一月半ばにホグズミード行きが許されて、あっという間に土曜日がきた。

一緒に行こうと誘うハリーとロンを、名前は訓練があるという理由でやんわりと断る。
最終的にハーマイオニーの一喝でその場は収まり、殆ど二人を引きずるようにして城を出ていった。

こういう時に一番強いのはハーマイオニーである。

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