07.-1






月曜の早朝。

学校に戻ってきた名前は、いつも通りトレーニングを終え、シャワーを浴びて、
朝食を摂りに大広間に向かう。





『おはよう。ハリー、ハーマイオニー。』



「ああ。おはよう、ナマエ。」



「おはよう、ナマエ。」





先に朝食を摂っていた二人に声を掛けて、空いていた席に着く。

ハリーは何やら他の事を考えているようで、あまり食が進んでいない。
皿の上に数枚のベーコンがよそってあるだけだ。

会話も少なく朝食を終えて、ハリーとハーマイオニーと共に立ち上がる。
大広間を出ていく時だった。





「ハーマイオニー、ナマエ、温室で会おう。
先に行って。すぐ追い付くから。」



「ハリー、遅れるわよ。もうすぐベルが鳴るのに―――」



「追い付くよ。オッケー?」





言って、ハリーは先を歩いていたセドリックの後を追い掛けていってしまった。





「どうしたのかしら。」



『…』





兎に角、授業に遅れるわけにはいかないからと、二人は温室に向かって歩き始めた。





『元気がない。』



「ハリーの事よね。」



『…』
頷く。



「土曜はホグズミードに行ったのよ、ハリーと一緒に。
勿論、ハリーはマントを使ってね。」





少し周りを気にしてから、ハーマイオニーは小さな声でそう言った。





『気晴らしにならなかったの。』



「いいえ。楽しんでたと思う。それに、結果的には良かったかもしれない。
私達、『三本の箒』に行って、そこでハグリッドとムーディに会ったのよ。
その時ハグリッドがハリーに、夜中に会いたいって言って…」



『……ハグリッドさんが、』



「そうよ。ああ、あのね、ムーディの目。マントの中が透けて見えるらしくて、だからハリーを見つける事が出来たみたい。
それで、ハグリッドは…ドラゴンを見せたらしいの。
第一の課題はドラゴンを出し抜く事なのよ。一人一頭ね。」



『…』



「それから、シリウスの話だけれど。」



『会えたのか。』



「会えたみたいよ。私は会ってないけれど。
カルカロフは『死喰い人』だったんですって。シリウスはアズカバンで一緒だった。」



『…』



「だけどカルカロフは過ちを認めて、釈放された。」



『…』



「カルカロフを逮捕したのはムーディよ。
ムーディがカルカロフをアズカバンに入れたんですって。」



『…ムーディ先生が教師になったのは、偶然じゃなかったのか。』



「そうかもしれない。でも、クィディッチ・ワールドカップの騒ぎの件もあるし、断言は出来ないわね。」



『…』



「それと、『死喰い人』の動きが活発になってるらしいの。
魔法省の魔女職員…バーサ・ジョーキンズは知ってる?
その人、アルバニアで姿を消した。」



『…ヴォルデモートが、最後にそこにいたという噂のある場所。』



「そう。」



『…』



「…ゴブレットにハリーの名前を入れたのが誰かは、結局分からないままだけど、ただの悪戯じゃないのは確かだわ。
試合は襲うには好都合だし、事故に見せ掛けるには良い方法よね…。」





温室に到着して、会話はそこで途切れた。
スプラウトから説明を受けて、授業は開始される。
今日は「プルプル震える木」の剪定らしい。
剪定鋏で枝を整えながら、名前はぼんやりとハーマイオニーの話を思い出す。





『(カルカロフさん……)』





カルカロフは元『死喰い人』で、ムーディは『死喰い人』であるカルカロフをアズカバンに入れた事がある。

現在『死喰い人』の動きが活発になっており、バーサ・ジョーキンズがアルバニアで姿を消している。

そして今回、何者かがゴブレットにハリーの名前を入れた。





『(カルカロフさんが、ゴブレットにハリーの名前を入れた…)』





そう考えるのが自然な流れだ。
しかし、と、名前は頭を振る。
(隣にいるハーマイオニーが訝しげに名前を見た)
ダンブルドアとムーディがすぐ側にいると言うのに、そんなに大胆な事が出来るだろうか?





「ハーマイオニー。ナマエ。」





小さな声で名前を呼ばれて、それまで頭の中にあった思考は消えてしまった。

「プルプル震える木」から、声がした方へ目を移す。

ハリーだ。





「ハーマイオニー、ナマエ―――助けてほしいんだ。」



『…』



「ハリーったら、私、これまでだってそうしてきたでしょう?」





何やら切羽詰まった様子に、名前は首を傾げてハリーを見た。
ハーマイオニーも「プルプル震える木」の剪定を続けながら、心配そうにハリーを見ている。





「ハーマイオニー、ナマエ。
『呼び寄せ呪文』を明日の午後までにちゃんと覚える必要があるんだ。」





授業を終えたハリーとハーマイオニーは、早速練習するらしい。
昼食を抜いて、空いている教室に行くと言う。
しかし名前はムーディとの訓練がある。
付き合いたい気持ちは山々だが、訓練を無視するわけにもいかない。
後ろ髪を引かれる思いで二人と別れた。

それから再び顔を合わせたのは「占い学」の教室。
数時間の内に、ハリーは随分疲れた顔をしていた。





『うまくいった。』



「全然。」





言いながら、ハリーは名前の隣にどっかりと腰を下ろす。

いつもはハリーとロンが隣同士で座るが、ここのところ名前が隣同士で座っていた。
いつも一人の名前には新鮮だが、経緯が経緯なので、あまり喜ぶべき事ではない。

「占い学」の授業の半分は、火星と土星の今現在の位置関係が持つ意味について説明された。
七月生まれの者が、突然痛々しい死を迎える危険性がある位置だと言う。





「ああ、そりゃいいや。」





突然ハリーは大声で言った。
隣に座る名前はその声量に驚いたのか、勢い良くハリーを見た。





「長引かない方がいいや。僕、苦しみたくないから。」





そう遠くない席に座るロンが、一瞬噴き出しそうな顔でハリーを見た。





『…』





「これはもしかして…」と若干の期待を込め(たかどうか分からないが)、名前はハリーを見る。
どうやらハリーはロンの視線に気付いてはいるらしい。
けれど、ロンを見ようとしなかった。
そう簡単に仲直りとはいかないようだ。

授業が終わるまで、ハリーはテーブルの下で杖を使い、「呼び寄せ呪文」の練習をしていた。
トレローニーの説明を聞きながら、名前は時折、小声でハリーにアドバイスした。
しかし中々うまくいかない。

「占い学」が終わると急いで夕食を摂り、ハリーとハーマイオニーは「透明マント」を被って、再度空いた教室に向かった。
背が高い名前は、二人と一緒にマントの中に隠れるのは困難を極めたので、談話室で二人の帰りを待つこととなった。

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