25.-1
学期最後の日、試験の結果が発表された。
四人とも全科目合格だった。
『…』
「…」
この結果に驚いたのは、名前とハリーの二人である。
長いこと無言で結果を眺めていた。
何しろ、名前は眠気との戦いで問題も解答も覚えていないほどだったし、ハリーは魔法薬学をパスした事に驚いていた。
しかし、一安心である。
更に嬉しいことに、グリフィンドール寮は三年連続で寮杯を獲得した。
そして名前は、この三年間で初めて学期末の宴会に参加することとなる。
大広間はグリフィンドールの真紅と金色の装飾が施され、宴会は大いに盛り上がった。
「私、今朝、朝食の前にマクゴナガル先生に御目にかかったの。
『マグル学』をやめることにしたわ。」
「だって、君、百点満点の試験に三百二十点でパスしたじゃないか!」
狭いコンパートメントの中で、ロンは一際大きな声で言った。
驚くロンをよそに、ハリーと名前は窓の外をじっと見つめている。
天気は快晴だ。
ホグワーツ特急はホームから出発したばかりである。
「そうよ。」
隣から深い溜め息が聞こえた。
名前は窓の外を見るのをやめて、ハーマイオニーへと目を向ける。
「でも、また来年、今年みたいになるのには耐えられない。
あの『逆転時計』、あれ、私、気が狂いそうだった。ナマエと一緒に返したわ。
『マグル学』と『占い学』を落とせば、また普通の時間割りになるの。」
『俺も落とした。』
「どうしてナマエまで?だって君だって、全部高得点でパスしただろ?」
「ナマエは一通り授業を受けて手応えを確かめたかったらしくて、ナマエも普通の時間割りになるわよ。」
『…』
頷く。
「君達が僕達にもその事を言わなかったなんて、未だに信じられないよ。特にナマエ、君だ。
まさか君に誤魔化されるなんて…」
ロンが膨れっ面をした。
『ごめん。』
「僕達、君達の友達じゃないか。」
「誰にも言わないって約束したの。」
それ以上文句は聞かないとばかりにきっぱり言い放った。
言ってから、ハーマイオニーはハリーを見る。
ハリーは未だ窓の外を眺めていた。
寂しげな横顔だった。
「ねえ、ハリー、元気を出して!」
「僕、大丈夫だよ。」
ハーマイオニーも寂しそうだ。
それでも元気付けようと、精一杯明るくそう言った。
窓の外を見るのをやめて、ハリーは早口に答える。
何だか慌てているようだった。
「休暇の事を考えてただけさ。」
「うん、僕もその事を考えてた。」
本当に考えていたらしい。
ロンが真剣な様子で話に乗っかってきた。
「ハリー、絶対に僕達のところに来て、泊まってよ。
僕、パパとママに話して準備して、それから話電する。
話電の使い方がもう分かったから―――」
「ロン、電話よ。」
ハーマイオニーが素早く訂正した。
「全く、あなたこそ来年『マグル学』を取るべきだわ……。」
呆れて言うが、ロンは知らん振りである。
「今年の夏はクィディッチのワールド・カップだぜ!
どうだい、ハリー?泊まりにおいでよ。一緒に見に行こう!
パパ、大抵役所から切符が手に入るんだ。」
「ウン……ダーズリー家じゃ、喜んで僕を追い出すよ……
特にマージおばさんの事があった後だし……。」
ロンの話はハリーを元気付ける事に成功したようだ。
表情が随分明るくなって、ゲームを楽しむ余裕も出てきた。
昼頃に魔女がワゴンを引いてきた時も、随分とランチやお菓子を買い込んでいた。
狭いコンパートメント内で長い時間過ごすのだ。
出来る事など限られているし、暇をつぶすのは難しい。
けれどもゲームをしたり、お菓子を食べながら談笑したりしている内に、いつの間にか景色は夕空へと変わっていた。
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