21.-6






「こいつはアズカバンに行けばいいんだ。」





それでも、ブラックの目は殺意を如実に訴える。
ハリーはその目を見詰め返して、念を押すように言った。





「あそこが相応しい者がいるとしたら、こいつしかいない……。」





そして、また少し沈黙に包まれた。
今度はさっきより短い。
ルーピンは黙ったままハリーを見て、少しだけ頷いてみせた。





「いいだろう。
ハリー、脇に退いてくれ。」





ルーピンは言ったが、ハリーは動かなかった。
迷うようにルーピンを見る。





「縛り上げるだけだ。誓ってそれだけだ。」





そろり、ハリーは脇に退いた。
すかさずルーピンが杖を振る。

杖の先から紐が出て、ペティグリューを縛り上げた。
猿轡まで噛まされている。





「しかし、ピーター、もし変身したら。」





床の上でもがくペティグリューに、ブラック尚も杖を向けていた。





「やはり殺す。いいね、ハリー?」





ハリーはペティグリューを見下ろし、ゆっくり頷いた。





「よし。」





言って、ルーピンは急に手際よく動き始めた。
授業に戻ったかのようだ。





「ロン、私はマダム・ポンフリーほど上手く骨折を治す事が出来ないから、医務室に行くまでの間、包帯で固定しておくのが一番いいだろう。」





ルーピンはロンの側に屈んで、ロンの折れた脚を杖で軽く叩いた。
続けて、「フェルーラ、巻け。」と唱えた。

するとロンの脚は添え木で固定され、包帯が巻き付いた。

ルーピンが手を貸してロンを立たせる。
ロンは恐る恐る脚に体重をかけたが、床にしっかり立ち上がると、目を見開いてルーピンを見た。





「よくなりました。有難う。」



「スネイプ先生はどうしますか?」





ハーマイオニーが小さな声で言う。
スネイプは未だに項垂れたままだ。





「こっちは別に悪いところはない。」





スネイプの側に行って屈んだルーピンは、脈を確認したらしい。
頭から大量出血しているが、大したこと無いようだ。





「君達三人共ちょっと―――過激にやり過ぎただけだ。
スネイプはまだ気絶したままだ。ウム―――我々が安全に城に戻るまで、このままにしておくのが一番いいだろう。
こうして運べばいい……」





ルーピンは「モビリコーパス、体よ動け!」と唱えた。
すると、スネイプは立ち上がった。
というよりは、吊るされた。床に足がついていない。
操り人形のようである。

それから「透明マント」を拾い上げ、ポケットにしまった。





「誰か二人、こいつと繋がっておかないと。」





ブラックが爪先で手も足も出ない無抵抗なペティグリューを小突きながら言った。





「万一の為だ。」



「私が繋がろう。」



「僕も。」





ルーピンに続いて、ロンが立候補した。
ブラックはどこからともなく手錠を取り出し、三人の腕にはめる。
ペティグリューの左腕はルーピンの右腕に、右腕はロンの左腕に繋がた。

ロンは唇を引き結んでいる。
屈辱に耐えるように。



クルックシャンクスは見計らうようにして起き上がり、大きく伸びをした。
そしてベッドから飛び降り、皆の先頭に立って部屋を出た。

尻尾は真っ直ぐ天井を向いている。

- 136 -


[*前] | [次#]
ページ:




×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -