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「それでもまだとっても危険だわ!暗い中を狼人間と走り回るなんて!
もし狼人間が皆を上手く撒いて、誰かに噛み付いたらどうなったの?」



「それを思うと、今でもゾッとする。」





ルーピンの声は途端に重苦しくなった。





「あわや、という事があった。何回もね。後になって皆で笑い話にしたものだ。
若かったし、浅はかだった―――
自分達の才能に酔っていたんだ。」





落ち着いていた表情と声音が、だんだんと崩れてきていた。
自責の念にかられているのだ。





「勿論、ダンブルドアの信頼を裏切っているという罪悪感を、私は時折感じていた……
他の校長なら決して許さなかっただろうに、ダンブルドアは私がホグワーツに入学する事を許可した。
私と周りの者の両方の安全の為に、ダンブルドアが決めたルールを、私が破っているとは、夢にも思わなかっただろう。
私の為に、三人の学友を非合法の『動物もどき』にしてしまった事を、ダンブルドアは知らなかった。
しかし、皆で翌月の冒険を計画する度に、私は都合よく罪の意識を忘れた。
そして、私は今でもその時と変わっていない……。」





そして、自分自身にうんざりしたように続けた。





「この一年というもの、私は、シリウスが『動物もどき』だとダンブルドアに告げるべきかどうか迷い、心の中で躊躇う自分と闘ってきた。
しかし、告げはしなかった。
何故かって?それは、私が臆病者だからだ。
告げれば、学生時代に、ダンブルドアの信頼を裏切っていたと認める事になり、私が他の者を引き込んだと認める事になる……
ダンブルドアの信頼が私にとって全てだったのに。
ダンブルドアは少年の私をホグワーツに入れてくださったし、大人になっても、全ての社会から締め出され、正体が正体なので、まともな仕事に就けない私に、職場を与えてくださった。
だから、私はシリウスが学校に入り込むのに、ヴォルデモートから学んだ闇の魔術を使っているに違いないと思いたかったし、『動物もどき』である事は、それとは何の関わりもないと自分に言い聞かせた。……
だから、ある意味ではスネイプの言う事が正しかったわけだ。」



「スネイプだって?」





突然、ブラックが鋭く聞いた。
初めてスキャバーズから目を離し、ルーピンを見た。





「スネイプが、何の関係がある?」



「シリウス、スネイプがここにいるんだ。
あいつもここで教えているんだ。」





ルーピンはブラックにそう言ってから、ハリーとロン、ハーマイオニー、名前を見た。





「スネイプ先生は私達と同期なんだ。
私が『闇の魔術の防衛術』の教職に就く事に、先生は強硬に反対した。
ダンブルドアに、私は信用出来ないと、この一年間言い続けていた。
スネイプにはスネイプなりの理由があった……
それはね、このシリウスが仕掛けた悪戯で、スネイプが危うく死にかけたんだ。
その悪戯には私も関わっていた―――」



「当然の見せしめだったよ。」





ブラックは嘲笑を浮かべた。
どう見ても悪人である。





「こそこそ嗅ぎ回って、我々のやろうとしている事を詮索して……。
我々を退学に追い込みたかったんだ……。」



「セブルスは私が月に一度どこに行くのか非常に興味を持った。」





ルーピンは四人を見詰めたまま話を続けた。





「私達は同学年だったんだ。それに―――
つまり―――
ウム―――
お互いに好きになれなくてね。セブルスは特にジェームズを嫌っていた。
妬み、それだったと思う。
クィディッチ競技のジェームズの才能をね……。
兎に角、セブルスはある晩、私が校医のポンフリー先生と一緒に校庭を歩いているのを見つけた。
ポンフリー先生は私の変身の為に『暴れ柳』の方に引率していくところだった。
シリウスが―――その―――
からかってやろうと思って、木の幹のコブを長い棒で突つけば、後をつけて穴に入る事が出来るよ、と教えてやった。
そう、勿論、スネイプは試してみた―――
もし、スネイプがこの屋敷までつけてきていたら、完全に人狼になりきった私に出会っただろう―――
しかし、君のお父さんが、シリウスのやった事を聞くなり、自分の身の危険も顧みず、スネイプの後を追い掛けて、引き戻したんだ。……
しかし、スネイプは、トンネルの向こう端にいる私の姿をチラリと見てしまった。
ダンブルドアが、決して人に言ってはいけないと口止めした。
だが、その時から、スネイプは私が何者なのかを知ってしまった……。」



「だからスネイプはあなたが嫌いなんだ。」





考えつつ、ハリーは納得したように頷く。





「スネイプはあなたもその悪ふざけに関わっていたと思ったわけですね?」





「その通り。」





低い声が響いた。
そして、セブルス・スネイプが突如として現れた。

杖の照準をルーピンに向けている。
片手に「透明マント」を持っていた。

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