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杖先から出てきたのは、白銀色のオーロラのようだった。

それを放った後、ハリーはすぐにスニッチを掴んだ。

グリフィンドールの勝利だ。
興奮のあまり、生徒達が観客席からフィールドに飛び込んでいく。





「いぇーい!
えい!えい!」



『…』





フィールドに最後に降り立った名前とハーマイオニーは、ロンとハリーがハイタッチをしているのを、遠くから眺めた。

ハーマイオニーは試合が無事終わった事に安堵している。
しかし、「おめでとう」と伝える事は難しいようで。
それは名前でも無理だ。

グリフィンドール生の群れを掻き分けていかなければならないのだから。





「どうしたのかしら?」





ルーピンがハリーを人垣から連れ出した。
フィールドの端が見えるところまで向かっている。





『…見てくる。』



「ええ。分かったわ。…」





気にはなるが、仲違いの最中である。
ハーマイオニーはチラチラ見るばかりだ。

人混みを掻き分けて、ロンがハリーの方へ向かっていくのを見て、
名前もそちらへと足を運んだ。





「ハリー、どうしたんだい?」



『…』



「ロン、ナマエ。あれを見て。」





ハリーはロンと名前に、フィールド端を見るように指で示した。

見ると、地面に頭巾のついた長いローブを被った生徒が転がっている。





「何だい、あれ?」



「マルフォイ、クラッブ、ゴイル、それにスリザリン・チームのキャプテン…」



「マーカス・フリント?」



「そう。僕を驚かせようとしたみたい。
逆に僕が驚かせちゃったみたいだけどね。」



『…』





ローブを脱ごうともがく四人の傍らには、憤怒の形相をしたマクゴナガルと、ダンブルドアが立っていた。
この有り様にハリーとロンは腹を抱えて笑っているが、名前はそろりと目をそらした。
傍らで見守るルーピンの微笑みもいつもとは違い、心境は若干複雑そうである。





「来いよ、ハリー!」





ジョージが人混みを掻き分けながら叫んだ。





「パーティーだ!グリフィンドールの談話室で、すぐにだ!」



「オッケー。」





パーティーは一日中、夜になっても続いた。
パーティーでする事といえば、遊ぶか食べるかどちらかである。
フレッドとジョージに捕まり、ありとあらゆるお菓子を勧められた名前は、祝宴をそこそこに退場する。
食べ過ぎである。

寝室に向かうと、シャワーを済ませ、グッタリとベッドに横たわった。















「ああああああああああああああアアアアアアァァァァァァっっっッッッッッ!

やめてえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」





前もこんな事があった気がする。名前は叫び声に目を覚ました。
まだ辺りは真っ暗である。
暗闇の中、彼方此方からカーテンを開く音がする。





「何事だ?」



「ブラックだ!シリウス・ブラックだ!ナイフを持ってた!」



「エーッ?」



「ここに!たった今!カーテンを切ったんだ!それで目が覚めたんだ!」



「夢でも見たんじゃないのか、ロン?」



「カーテンを見てみろ!ほんとだ。ここにいたんだ!」





皆は急いでベッドから飛び出すと、ハリーを先頭に転がるようにして寝室から出ていった。





『…』





一人置き去りにされた名前は、パチパチと瞬きを繰り返す。

談話室へ繋がる階段を慌ただしく駆け降りていく音が聞こえた。
その内、いくつもドアが開く音が聞こえる。
話し声がし出した。





『…』





素足にローファーを履き、ゆっくりと立ち上がる。
ロンのベッドに近付いた。
確かに、カーテンが切り裂かれている。
いつかの「太った婦人」の肖像画が切り裂かれていた時のように。





『…』





名前はパジャマの下に隠した、母親から受け取った鈴を取り出して眺めた。
振ってみるが、やはり音は無い。





『…』





騒がしい話し声が聞こえてくる。
マクゴナガルがやって来るのも時間の問題だろう。

鈴を元に戻す。
パジャマ姿にカーディガンを羽織ると、名前も談話室へ向かった。





「マクゴナガル先生が寝なさいって仰ったでしょう!」



「いいねえ。まだ続けるのかい?」



「皆、寮に戻るんだ!」



「パース―――シリウス・ブラックだ!」





すがり付くような視線を向けて、ロンは掠れた声で訴えた。





「僕達の寝室に!ナイフを持って!僕、起こされた!」



「ナンセンス!」





これには談話室は静まり返った。
シリウス・ブラックの侵入は一度あったのだ。
恐怖が振り返しても仕方ない。

しかし警備は強化されている。
パーシーは信じていない。





「ロン、食べ過ぎたんだろう―――
悪い夢でも―――」



「本当なんだ―――」



「おやめなさい!全く、いい加減になさい!」





談話室に繋がる扉が勢い良く開く。
怖い顔をしたマクゴナガルが入ってきた。





「グリフィンドールが勝ったのは、私も嬉しいです。でもこれでは、はしゃぎ過ぎです。
パーシー、あなたがもっとしっかりしなければ!」



「先生、僕はこんな事、許可していません。」





パーシーは胸を張って抗議している。





「僕は皆に寮に戻るように言っていただけです。弟のロンが悪い夢に魘されて―――」



「悪い夢なんかじゃない!」





ロンが叫んだ。
マクゴナガルの視線がロンに向く。





「先生、僕、目が覚めたら、シリウス・ブラックが、ナイフを持って、僕の上に立ってたんです。」



「ウィーズリー、冗談はおよしなさい。
肖像画の穴をどうやって通過できたというんです?」



「あの人に聞いて下さい!」





ロンは真っ青な顔で、カドガン卿の絵がある方向を指差した。





「あの人が見たかどうか聞いて下さい―――」





訝しい表情でロンを見てから、マクゴナガルは談話室を出ていった。
談話室にいた者達は、マクゴナガルとカドガン卿の会話を聞こうと沈黙し、耳を澄ます。





「カドガン卿、今し方、グリフィンドール塔に男を一人通しましたか?」



「通しましたぞ、ご婦人!」



「と―――
通した?」





言葉に詰まりながら、マクゴナガルは素っ頓狂な声を出した。





「あ―――合言葉は?」



「持っておりましたぞ!」





事の重大さを理解していないカドガン卿は、自分の任務を全うし誇らしげである。





「ご婦人、一週間分全部持っておりました。
小さな紙切れを読み上げておりました!」





マクゴナガルが談話室に戻ってきた。
血の気の引いた白い顔である。
今にも倒れそうだ。





「誰ですか。」





怒りか呆れか。
マクゴナガルの声は震えていた。





「今週の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた、底抜けの愚か者は誰です?」





ヒッ―――



小さな悲鳴が聞こえた。
群衆の中から、そろりと手が挙がる。

ネビル・ロングボトムだった。

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