※標的318以降のネタバレを含みます ※骸+髑+スペ 少女に命じられたのは、目の前の少年の体を奪うための準備をすることだけであった。 少女──クローム髑髏は休むことなく銀色に輝く武器を振るった。同じく少年──六道骸も少女と同じ武器を使って応戦していた。それを嬉しそうに傍観している青年は、少女にもう一度命令をした。「六道骸に勝ちなさい」と。青年の目論みはこうだ。少女との闘いによって疲弊した少年の体を術によって奪う。そして、己の器にする。少年が少女に手を出せないことは知っていた。だからこそ、少女を利用した。少女を入り口にして精神的に少年の体を奪うことも出来たが、敢えてこの方法をとった。少女をマインドコントロールし、少年の肉体を解放し精神を肉体に戻るのを待ち。これは、青年の余裕の現れでもあった。余裕の無い闘いではあるが自分には体を器に出来るという確かな自信、余裕があった。 青年──D・スペードは、少年を嘲笑った。 「六道骸、観念してその肉体を私に寄越しなさい」 「ご冗談を」 武器を振るう手をやめることなく、少年は笑った。何食わぬ顔で。青年は少年を睨み付ける。それすらも少年は流して、視線を少女へと向けた。青年のマインドコントロールによって操られた少女の瞳に光はない。確かに自分は少女を傷つけることは出来ないが、このままやられるわけにもいかない。この状況を打開する最善の方法は、少女自身が変わること。強くなることであると、少年は判断した。 「クローム。これは、お前の本望ですか?」 少女は答えない。少年は少女の瞳を真っ直ぐに見つめて、続きの言葉を紡いだ。 「違うでしょう? お前の力はこんなものではないはずだ」 これが望みではないのならば、もっと強い意志を。この悪夢から解放されたいのなら、もっと強い力を。本当に倒すべき相手を見つけるために、お前の信じる心を見せなさい。少年の言葉に、少女の「本物の心」が揺れ動いた。 「僕と共に戦いますか? クローム……いいえ、凪」 「……むく、ろ……さま」 少女の瞳から、涙が零れた。 よく頑張りましたと少年が少女の髪を優しく撫でる。少女は青年のマインドコントロールを、自らの意志で破った。少年の言葉によって、そのきっかけを見つけたのだ。青年の顔から、「余裕」が消えた。 「骸様、私っ……」 「いきますよ、クローム」 「……はい!」 「よくも、私のクロームを……」 もう一度、しかも少女と少年の両方にかけようとしたマインドコントロールは、何事もなかったかのように弾かれていた。青年は舌打ちをして武器を取り出す。 「覚悟なさい」 少年の言葉と共に、少女の武器を握る手に、力が込められた。 20110206 やるなら今しかないと思いました。雑ですみません。 純粋に妄想してみた。きっとこのことは、クロームの更なる成長のきっかけになるのではないかなあと。で、骸がそれを促すのかなあと。 |