君が足りなくて何だか、今日のマスターは機嫌が良いみたいです。
珍しく鼻歌を唄いながら足をぶらぶらさせていて、目があったと思えばにっこりと微笑まれる。
よくよく見てみればその頬はうっすらと染まっていて、瞬間、嫌な予感がした。
まさか、と思いマスターの居るテーブルへ近付けば、そこにはチョコの空き箱。
甘いモノが好きなマスターは良くこういったお菓子を食べるが、今日は何時もと違う事が一つ。
「まっ、マスター?!!」
「んふふ、なぁに?」
あぁとろんとした表情が可愛いな、じゃなくてっ!
一粒も残っていない空き箱を手に、マスターへ突き付けて見せる。
「コレ一人で食べたんですか!?」
「んー、…美味しかったぁ、よー…」
「…バーボン入りのチョコを一人で?」
「……ばぁ、ぼん?」
小首を傾げ舌っ足らずな口調で尋ねてくる彼女に、つい溜息が漏れてしまう。
まさか12粒のウィスキー入りチョコで此処まで酔ってしまうとは思わなかった(というか、何時の間に買ったんだ)。
体を揺らしながら気分良さそうに此方を見つめる彼女に、水の入ったコップを手渡す。
「マスター、これ飲んで下さい」
「えー?ん、飲ませてくらさいっあはっ」
あはっ、じゃなくてですね…!
こういうタイプならいっそ、泣いたりすぐ寝てしまうタイプの方がまだマシだ。
コップ片手に固まる俺の考え等無視し、マスターはその腕を首に回してくる。
ふわりと香る彼女の匂いとバーボンが混じって鼻を擽り、自分まで酔ってしまいそうだ。
「マスター、自分で飲んで下さい」
「ねぇ…早く、…ね?」
「マスターっ…!」
「もぅ…へたれ、なんだからッ、ん…ぅ」
へらへらと力無く笑うマスター。
そんなマスターに水も含まずに口付けて。
次第に苦しげに眉を顰め胸を叩いてくるが、その手に力は籠もっていない。
一瞬唇を放せば、勢い良く空気を肺に入れた為か激しく噎せる彼女も、暫くすれば自ら唇を押し付けてくる。
いくら酔っているとはいえ、普段のマスターからは想像も付かない行動に此方が驚いてしまう。
「っ、はッ…マスター?」
「もっと…カイ、ト」
「マスター、本当に酔ってますか?」
「…………ん、ぅ……。」
「……マスター…」
「だっ、て…」
「だって?」
躊躇った様子の彼女を見る限り、どうやら今は酔いも冷めてきている様だ。
少し口籠もった後俺の首に回した腕を解くと、そのまま背へ回し顔を隠す様に抱き付いてくる。
その耳は真っ赤になっていて、何だか酔っているんだか嘘なんだか風邪なんだか判らなくなってきた。
すると、漸くマスターが口を開く。
「…だって…恥ずかしい、じゃない」
「何が、ですか?」
「抱き締めて欲しいとか、キス、…して欲しい…と…か……」
「……………」
「酔ったついでなら…言えるかな、って…」
弱々しくなる声とは反対に、抱き締めた彼女の身体が熱く熱く火照ってくる。
鼓動まで早くなり、気の所為で無ければ背中にある手も震えていて。
茫然としたのも束の間、気恥ずかしいやら愛しいやらで自然にマスターを抱き締める腕に力が入る。
「マス、……儚、さん」
「………な…に。」
「抱き締めて良いですか」
「…もう抱き締めてるじゃない」
「じゃあ…キスして、良いですか?」
「………ん…。」
想像通り真っ赤なマスターの額に瞼に鼻に頬に唇に、キス。
彼女に触れた唇が異常に熱いのは、きっと気の所為だ。
(?、マスター?)
(……う、わーっ…頭痛い…)
(…本当にお酒弱いんですね)
(そっ、それよりもカイト、)
(はい?お水飲みますか?)
(その…、名前……)
(…儚さん、お水です)
(っ、やっぱりマスターで良い!)
090821//Tuguno.
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虚繰人形狂想曲/月乃様
(KAITO 甘)
キリリクで書いていただきました!
か…かかカイトが可愛すぎて
萌えしぬかと思いました。はあは(ry
ヒロインちゃんも可愛くて
もうこの二人付き合っちゃえよ!
とか思いました 笑
デフォルトはおそれ多くも
「儚」になっていますが、
もうこの子がキャラとして
好きなんですが^p^*
月乃様、素敵な小説を
本当にありがとうございました!
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