バカだといっても | ナノ



02


否定したいのに


何も言葉にすることが


出来ない




02




「そっか。やっぱりそうなんだな比奈」

「えっと?お兄ちゃんなんだよね?」




もう一度恐る恐る手を伸ばす。
その手は、幸村さんに弾かれた。




「イタッ……」




バチンと音がしたせいか手がほのかに赤くなっている。

幸村さんは、お兄ちゃんを庇うように、私の前に立つ。




「止めろ。精市」

「だけど……卓!」

「違うんだ!だから止めてやってくれ」




ポカンとお兄ちゃんを見つめていたが、次第に叩かれたよりも、拒絶されたことに涙がポロポロと零れはじめた。




「ゴメッ……ごめんなさい。私なんかがいて……。私が……」




パニックになり意味が分からない言葉を口走る比奈をぎゅっと抱き寄せる。




「大丈夫だ。何ともないだろ?俺がいる」

「ヒック……お兄ちゃん?私……」

「分かってる。落ち着け?なっ?」

「……ごめんね。俺の知ってる比奈じゃないみたいだ」




精市も頭を優しく撫でて、落ち着かせようとする。

しばらくすると落ち着いたようで、顔を真っ赤にして深々とお礼をいう比奈を見て俺達は、顔を見合わせて笑った。




「比奈。いきなりで悪いんだか……お前に言っておかなけきゃいけないことがある」

「うん」




私何故か分からないけど、次の言葉は聞いちゃいけない気がした。
しかし聞かなければ、前に進めないことも自然と分かっていた。




「この世界の……比奈……つまりお前は、1週間前に死んだんだ

「………」




世界が真っ暗になった。


あぁこんなことなら


辛くても知らずに生きておけばよかった……。




(私が生きていける場所はどこ……?)



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