バカだといっても | ナノ



01




貴方は運命を信じる?


……私は信じたい


もう一度だけ




01




えっ?

そんなはずはないよ!

そんなことあるはすがない。


でも



「お兄ちゃん?」

「……」




振り返った瞬間本人だと確信した。恐る恐る近づいてみる。すると、あの優しい声が耳に浸透する。




「比奈?お前どうして?」




意味が分からなかった。

お兄ちゃんが何を言っているかなんて……。

どうして?

それは、私が聞きたい。

心配したんだって。

怒るつもりだったのに、口からは息が漏れるだけだった。




「卓?誰かいるのかい?」




後ろからお兄ちゃんに声をかける人を見て唖然とした。




「幸村精市……さん」




『さん』をつけ忘れることなく、言えたことにホッとしたのは内緒だ。
しかし、どうしてこの世界に幸村精市がいるかが分からなかった。


あの人は漫画の世界にいる人だから……。



「……比奈かい?」



幸村さんが私の名前を呼んだことが、信じられなかった。

だって彼が私の名前を知ってるはずない。
それに、何故あんなに冷え冷えとした視線を浴びているのかさえも、理解できるはずがない。




「……お前もしかしてあっちの比奈か?」




あっち?


どういう意味?


私には、意味が分からないことだらけだった。




(やっと会えたのに、この世界は私の知っている世界じゃないみたい……。)



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