バカだといっても | ナノ



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嘘でも、いいよ?


私の願いは


変わらないから……




プロローグ




「比奈」




私をそう呼んでくれる、優しく強く頭の良い私の1つ上のお兄ちゃんは、私が小学生のときに、忽然と姿を消した。

朝普通に登校して、別れた。

学校にも連絡したけど、来てない言われた。

お兄ちゃん大好きのお母さんは、パニックになった。

お父さんは、警察に相談して捜索願いを出した。

でも未だに見つかっていない。

お兄ちゃんがいない日々は、もう1年になる。




「お兄ちゃん……」

「まだ帰ってこないの?」

「うん」

「比奈?あんた大丈夫?」

「……親が荒れてるからね。なんで私が残っちゃったのか分かんないよね」

「比奈!」




私は限界だった。

親はいつも私に八つ当たり、気持ちも不安定で心に余裕が全くない……。


それでも私はここで精一杯生きていた。


あの事件が起こるまでは……。



「比奈!元気だしてよ。卓さん絶対帰ってくるから!」

「うん。そうだよね」

「じゃあまた明日ね」

「また」




私は友達とそう言って別れた。



しばらく歩いているとボォーっとしていたようで、見たことないもない道に出ていた。

しかしそこは、じっくり見てみると見たことがあるような道だった。




「あれ……うんそうだ!アハハっどうしよう。頭おかしくなったみたい」




後ろを振り返るといつもの道に見えるが、何故か左右が逆になっている。




「あぁ私疲れてるんだ」




自分に言い聞かせながら、何もなかったように足早に自宅に向かおうとする。

聞こえてきた懐かしい声にふと足を止めた。




「この声は……」




そうこの声は、私が聞きたくて、聞きたくて、仕方がなかった人の声に似ていた……。




(私が求めても手に届かない人の声。懐かしい。そして……)



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