▼ 1 考えれば 考えるほど 辛い 1番になりたい 目の前の赤也も気付いたらしくゲッと声を漏らしていた。 『えっといろいろあるんだよね?』 自分に言い聞かせるように言った一言なのに、涙が流れてくる。 「紗智…」 『大丈夫!今止めるから』 「……くそっ」 俺はこんな顔させたいんじゃねぇ。いつでも笑顔でいて欲しいだけなのに……。携帯を取り出すと急いで電話をかける。紗智の制止の声なんて聞かずに……。 「何だよぃ?」 「目の前のレストラン」 一言言って電話を切った。丸井先輩は驚いた様子でこっちを見ると走ってレストランに入ってくる。 「紗智!!」 紗智がいるのは知ってたんだ。でも紗智が泣くなんて、そんなこと考えもしなかった。彼氏失格だろぃ? 「ごめん紗智」 『……そのごめんは何に対してのごめん?』 「あの!とりあえず座りませんか?」 ブンちゃんと一緒にいた女の子が冷静に言った一言に自分が今いる場所を思い出す。今は座って話す必要があると考え、立ち上がり赤也の隣に座る。 『そっち二人で座って?』 「「……」」 顔を見合わせ座る二人に心がズキズキッと痛む。 「紗智?」 何を言うわけでもなくただ座っていると、隣の赤也が心配そうに私をみる。 「赤也!もう少し離れろぃ」 『丸井は黙ってて』 いつもはブンちゃんと呼ぶ紗智が丸井と呼ぶということは、相当怒ってるということだ。 『赤也ありがと。大丈夫だよ!』 泣き笑いにも似た表情に、もう真実を打ち明けるしかないと口を開こうとするが、丸井先輩の顔が目に入り「言うな」と目が語っていたため、開いた口を再び閉じた。 「赤也は何も言わなくていいんだぜぃ」 突然の言葉は意味の分からないものだったが、それでもこの沈黙を破るには効果があったようだ。 「紗智。俺が全部悪い。ホントごめんな」 『私ね。ブンちゃんにとって私はなんだろうって今考えてた』 「あぁ」 『考えても分からない。でも嫌いにはなれない』 「うん」 『私はブンちゃんの1番じゃなかったんだね?』 「紗智」 紗智の言葉は、効果絶大だった。紗智は本気で丸井先輩が好きで、丸井先輩も本気で紗智が好きだから。だからこそ互いを思いやって身を引こうとしているのが目に見えて分かった。 「分かりました。やっぱ勝ち目ないです」 『えっ?』 ブン太の隣に座っていた少女が急に話す。しかし意味が分からなかった。今私は分からないことだらけだ。そう私一人だけ。 「切原も十分楽しんだでしょ?帰るよ」 「まぁな。紗智今日はありがとな!それと、丸井先輩!!これ」 赤也はブンちゃんに何かを渡すと意味の分からない私を置いて帰っていった。少女と一緒に……。 「紗智は、俺にとって1番だぜぃ!紗智以外は俺の1番にはなれねぇんだ。だから……」 『ブンちゃん』 それからブンちゃんは、あの少女は赤也のクラスの子で熱烈なブンちゃんのファンだと言った。ホントなのかは分からないけど、今は信じたいと思った。 私にとっても 貴方にとっても 1番はお互いでしかない……。 (『もう嘘は嫌だからね』「おぅ!紗智が喜ぶ嘘しかつかねぇ」『……調子いいんだから』) . prev|main|next |