▼ 1 たった一度の 過ち…… 私の心に隙が出来る 一回きりの付き合い 遊園地が楽しみでいつもより早めに目が覚める。そのまま寝るのも目覚めが悪いと考え、ベッドから出るとゆっくり準備を始める。 『うーん。まだ早い』 約束の時間までまだ1時間以上ある。 『ブンちゃん』 昨日の夜から連絡のない携帯を眺めると涙があふれそうになる。それでも自分を抑えようパンっと頬を叩く。 『そう忙しいんだ!』 何度も自分に言い聞かせ頷く。すると携帯が光り着信を伝える。慌てて耳にあてるが、待ち望んだ声とは違い一瞬固まってしまう。それを、気付かれないようにと少し沈黙で通す。 「朝まだ時間あって暇なんだけどよ」 『……赤也。こんなに早く起きるなんて雨降るかも。傘用意しなきゃ』 「はぁ!?何言ってんだよ紗智」 『せっかくの遊園地楽しみにしてたのに』 「今日は降水確率0%だっての!」 『知ってる』 笑いながら答える紗智に、ムッとする。 「もう今から行かねぇ?」 『そうだね!二人とも準備出来てるし……』 「迎え行く」 答える間もなくプープーという音が聞こえ、素早い行動に笑いが込み上げてくる。荷物を持ち玄関に立った瞬間にドアが開き驚く。 『はやっ』 「だろ?足だけは自信あるからな!」 『テニスに関すること全てでしょ』 「自信だけじゃ勝てねぇって!」 『まぁそう言われればそっか!』 「それよりも、早く行かねぇ?」 嬉々として話す赤也に遊園地行きたかったのだと思い、靴を履き赤也の手を引いて外に出る。 やっぱり俺のこと何とも思ってねぇんだな。丸井先輩と繋ぐときは、顔を真っ赤にして俯いてるのに……悔しい。 ギュッと手を握ると紗智の手がピクリと反応する。 「?」 紗智の顔を見ようと隣に並ぶとほんのりと紅く染まった頬が目に入る。 全然無駄じゃねぇ。 もしかしたら……。 そんな淡い考えが頭から離れなかった。何も話すことなく、駅までつくと切符を買いちょうどきた電車に乗り込む。 『順調!』 「まぁな!こんなにスムーズなことなんて珍しいぜ」 『そりゃね!お眠りな赤也じゃなくて私が計画たてたんだもん』 「そんなお眠りじゃねぇよ!たまたま眠いだけだって」 『じゃあ寝ないでね?』 「当たり前だろーが!」 そんな話をしているうちに、電車が目的地に着く。 「言っただろ?」 赤也の勝ち誇ったような顔にドキドキしていたことは内緒。 「よしっ!定番のジェットコースターだ!」 『いいよ!怖くて泣いたりしないでね』 「誰が!」 それから一つずつ乗っていくと赤也のお腹がなる。 『そろそろ休憩しない?腹ごしらえ!』 「おぅ!」 レストランに入ると席に案内され、メニューを眺める。 『ハンバーグ!』 「じゃあやっぱりここはステーキって言いたいとこだけど金ねぇからカレーライス」 『いいよ!紗智様が驕ってあげよう!誘ってくれたお礼ね』 「やったぜぇ」 店員にメニューを言うと、次は何に乗ろうかと外を眺めた瞬間だった。 『ブンちゃん?』 間違いなく私の彼の丸井ブン太だ。 家の用事って? しかしそんな考えは、パッと一瞬で変わった。見たことを後悔した。可愛い女の子の隣を歩く姿は、私には残酷な光景でしかなかったから。 頭の中がぐるぐるとする。私の想いは、無駄だったの? . prev|main|next |