▼ 貴方は私を少しも知らない 私は大丈夫だよ? って伝えたい 貴方は私を少しも知らない あの事件から1週間が過ぎようとしていた。ディーノは、仕事のためにイタリアに帰り、いつもの日常が戻ってくる。唯一違うのは、ディーノから毎日電話がかかってくるようになったこと。今までは、2日に1回しかかかって来なかったから嬉しかったはずなんだけど……。 『はぁ』 「幸せが逃げるって」 『あっツナ!!』 「紗智。久しぶり」 近所に住むのに今週は一度も会ってなかったんだと思いながら、何気なくツナを眺める。 「ぼーっとしてるけど、どうかしたの?」 『どうかしたように見える?』 「えっ!えっーと」 「上の空ってやつだろ?」 「てめぇが静かなんて珍しすぎて10代目が心配してるじゃねぇか!馬鹿女」 『あれ?二人ともいたんだ』 本当に気付かなかった。そういえばツナも声かけられるまで気付かなかったっけ?重症かもしれない。 「紗智!てめぇ馬鹿にしてんのか?そもそも紗智に庇われなくても俺ならあの不良どもくらい……『分かってるよ』」 「はぁ?」 『隼人は強いからね』 私は弱い。弱いから隼人にも何も言えない。自分の情けなさに落ち込んでいると後ろからいつもの温もりを感じる。 『ディーノ!!』 おもいっきり振り向けば、満円の笑みで私を受け止めてくれる。 「気付いてなかったのな」 『3人とも知ってたの?』 「あぁ……」 やっぱりぼーっとしていたのに、間違いないみたいだ。 『いつ来たの?』 「今日だぜ。さっきこっちに着いてな」 『そうだったんだぁ』 ディーノの声を聞きながらツナ達を振り返るとツナは、真っ赤な顔をして立っていた。 「えっと……ディーノさん。俺達はここで」 「あぁ」 「紗智もまたなー」 『うん。またね』 ツナはいつになっても、可愛い反応してくれるなぁと一人思いながら、ディーノの腕から抜け出る。 『毎日電話してるのになんで教えてくれなかったの?』 「いや……実は来る予定はなかったんだ。ただ毎日電話してると紗智に会えないことが辛いって分かってよ」 『うん』 「会いにきた」 『ありがと』 私も寂しかった。 口には出さなかったけど、寂しかったんだよ? 「紗智に会えてよかったぜ。またすぐ帰るからな」 『来たばっかりなのに?』 「耐え切れず会いにきちまったんだぜ?仕事たまってるに決まってるだろ?」 『そっか……』 「寂しいけど、紗智が好きだから堪えられるんだ」 『ディーノ』 深呼吸をして言葉を探しながら話す。 『ディーノは知らないんだよ?私毎日電話してると、ディーノのことを身近に感じすぎて禁断症状でるんだから』 「身近に感じ過ぎる?」 『おかげでディーノが頭から離れないんだよ?』 下から覗き込むように顔を眺めれば、頭を撫でられる。 「俺でいっぱいにしちまえよ!」 『これ以上ディーノをいれたら、パンクしちゃうって』 それくらい、貴方を思ってるんだよ?今も昔も。 『だからディーノ。次は私が会いに行くから待ってて』 ディーノの目が驚きで、見開かれる。 「ホントか?」 『うん。だから待っててくれる?』 「あぁ!待つぜ」 (まだまだ、知らないことがある。知らないことがあり過ぎてすれ違うときも……。それでも一つずつ知ろうとすることが何よりも大切って気づいたから) . prev|main|next |